金銭消費貸借兼抵当権設定契約書とは?
金銭消費貸借兼抵当権設定契約書とは、金銭を貸し付ける契約(金銭消費貸借契約)と、その返済を担保するために不動産へ抵当権を設定する契約を、一つの書面にまとめた契約書です。金銭の貸付けは、単なる信頼関係だけで行うと、返済不能や連絡不能といった深刻なトラブルに発展するおそれがあります。特に高額な貸付や長期間にわたる返済を想定する場合、債権者の立場を守るためには、法的に強力な担保を確保しておくことが不可欠です。その代表的な手段が「抵当権」です。本契約書は、貸付条件と担保関係を一体で定めることにより、融資の安全性を高める役割を果たします。
金銭消費貸借と抵当権の関係
金銭消費貸借契約とは
金銭消費貸借契約とは、貸主が借主に金銭を交付し、借主が将来同額の金銭を返還することを約束する契約です。単なる「お金の貸し借り」ではありますが、返済期限、返済方法、利息、遅延損害金などを明確に定めておかなければ、後々紛争が生じやすくなります。
抵当権とは
抵当権とは、借主が債務を履行しない場合に、貸主が特定の不動産から優先的に弁済を受けられる権利です。抵当権を設定しても、借主は引き続きその不動産を使用・収益することができる点が特徴です。このため、住宅や事業用不動産を保有している場合には、現実的かつ実務的な担保手段として広く利用されています。
金銭消費貸借兼抵当権設定契約書が必要となる利用ケース
個人間で不動産を担保にお金を貸す場合
親族や知人間であっても、高額な資金を貸し付ける場合には契約書の作成が必須です。口約束だけでは、返済条件や担保の有無を巡ってトラブルになることが少なくありません。
中小企業が役員や関係会社へ融資する場合
中小企業では、銀行融資とは別に、役員やグループ会社へ資金を貸し付けるケースがあります。この場合、社内取引であっても契約関係を明確にし、担保を確保しておくことで、経営リスクを抑えることができます。
不動産を活用した事業資金調達
事業用不動産を担保として資金を調達する場合にも、本契約書は有効です。返済条件と担保内容を一体で定めることで、貸主・借主双方の認識のズレを防止できます。
金銭消費貸借兼抵当権設定契約書に盛り込むべき必須条項
貸付金額と受領の確認
貸付金額と、実際に金銭が交付された事実は、必ず明記する必要があります。これにより、後日「受け取っていない」「金額が違う」といった争いを防ぐことができます。
返済期限・返済方法
一括返済か分割返済か、返済期限はいつか、振込先はどこかなど、具体的に定めます。曖昧な表現は紛争の原因になります。
利息・遅延損害金
利息を設定する場合は、年率を明記します。また、返済が遅れた場合の遅延損害金も定めておくことで、債務不履行時の対応が明確になります。
抵当権設定条項
どの債務を担保するのか、抵当権の範囲を明確にします。元本だけでなく、利息や遅延損害金まで含めるかどうかも重要なポイントです。
抵当不動産の特定
所在、地番、地目、地積、建物の構造などを正確に記載し、どの不動産が担保となっているのかを明確にします。
期限の利益喪失条項
一定の事由が生じた場合に、貸主が残額を一括請求できる旨を定めます。これにより、信用不安が生じた際の迅速な対応が可能になります。
条項ごとの実務上のポイント
抵当不動産の管理義務
借主が不動産の価値を著しく低下させる行為を行わないよう、善管注意義務を課すことが一般的です。無断での売却や担保設定を制限する条項も重要です。
抵当権実行条項
債務不履行時には、法令に基づいて抵当権を実行できる旨を明記します。これにより、裁判や競売手続への移行がスムーズになります。
費用負担条項
登記費用や契約書作成費用など、誰が負担するのかを明確にしておくことで、後のトラブルを防止できます。
作成・利用時の注意点
登記をしなければ抵当権は第三者に対抗できない
抵当権は、契約書を作成しただけでは不十分で、法務局での登記が必要です。登記を怠ると、第三者に対して抵当権を主張できません。
利息制限法への配慮
利息や遅延損害金の設定は、利息制限法などの関連法令を遵守する必要があります。上限を超える利率は無効となるおそれがあります。
他契約書の流用は避ける
他社の契約書をそのまま流用すると、著作権や契約内容の不整合といったリスクがあります。必ず取引内容に即した契約書を作成しましょう。
専門家による確認の重要性
不動産が関係する契約は、金額も大きく、法的影響も重大です。実際に利用する際には、弁護士や司法書士への相談を強く推奨します。
まとめ
金銭消費貸借兼抵当権設定契約書は、金銭の貸付と不動産担保を一体で整理できる、非常に実務的かつ重要な契約書です。適切に作成・運用することで、貸主は債権回収の安全性を高め、借主も契約条件を明確に把握することができます。特に個人間取引や中小企業の資金貸付においては、「信頼」だけに頼らず、契約書という形でリスクを管理することが、長期的なトラブル防止につながります。