インターンシップ契約書とは?
インターンシップ契約書とは、企業が学生や社会人をインターンとして受け入れる際に、参加条件や権利義務関係を明確にするために締結する契約書です。インターンシップは採用活動や人材育成の一環として広く行われていますが、契約書を作成せずに受け入れた場合、雇用関係の誤認や責任範囲の不明確化といった法的リスクが生じるおそれがあります。特に近年では、有給・無給インターン、長期・短期インターン、オンラインインターンなど形態が多様化しており、「アルバイトとの違いが曖昧」「労働者に該当するのではないか」といった問題が指摘されるケースも増えています。インターンシップ契約書は、こうした誤解やトラブルを防止し、企業と参加者の双方が安心してインターンシップに取り組むための重要な書面です。
インターンシップ契約書が必要となる理由
インターンシップ契約書が必要とされる主な理由は、以下のとおりです。
- 雇用契約ではないことを明確にするため
- 秘密情報や個人情報の漏えいを防ぐため
- 成果物の知的財産権の帰属を定めるため
- 事故や損害が発生した場合の責任範囲を整理するため
とくに重要なのが、「雇用関係の不存在」を明示する点です。インターンであっても、実態として労働者性が認められれば、労働基準法や最低賃金法が適用される可能性があります。契約書でインターンの位置付けを明確にしておくことは、企業防衛の観点からも欠かせません。
インターンシップ契約書が想定する主な利用ケース
インターンシップ契約書は、以下のようなケースで特に有効です。
- 大学生・専門学生を対象とした短期インターン
- 新卒採用を見据えた長期インターン
- 社会人向けキャリア体験型インターン
- オンラインで実施するリモートインターン
- 無報酬で実施する職業体験型プログラム
これらのケースでは、参加者の立場や期待値が異なるため、事前に契約書でルールを明示しておかないと、後から「聞いていなかった」「そんな説明はなかった」というトラブルに発展する可能性があります。
インターンシップ契約書に盛り込むべき主な条項
インターンシップ契約書には、最低限、以下の条項を盛り込むことが望ましいとされています。
- 契約の目的
- インターンシップの内容・期間
- 雇用関係の不存在
- 報酬・費用の取扱い
- 遵守事項
- 秘密情報の取扱い
- 知的財産権の帰属
- 事故・損害時の責任
- 契約解除
- 準拠法・管轄
以下では、実務上特に重要となる条項について詳しく解説します。
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 雇用関係の不存在条項
インターンシップ契約書で最も重要な条項の一つが、雇用関係の不存在を明記する条項です。この条項では、「本契約は雇用契約ではないこと」「インターン参加者は労働者に該当しないこと」を明確にします。ただし、契約書に記載していても、実態として労働者性が認められれば法令が優先されます。そのため、業務内容や指揮命令の程度、拘束時間などについても、インターンの趣旨に沿った運用が必要です。
2. 報酬・費用に関する条項
インターンシップが無報酬の場合は、その旨を明確に記載しておくことが重要です。一方、有給インターンの場合には、別途雇用契約を締結すべきケースもあります。交通費の支給有無についても、事前に明示しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。
3. 秘密情報の取扱い条項
インターン参加者は、企業の内部情報や取引先情報に触れる機会があります。そのため、秘密情報の範囲、利用目的、契約終了後も守秘義務が継続することを明確に定める必要があります。特に学生インターンの場合、SNS等での不用意な情報発信が問題になるケースもあるため、契約書での明文化が重要です。
4. 知的財産権条項
インターン期間中に作成された資料、プログラム、デザインなどの成果物について、知的財産権の帰属を定める条項です。この条項がない場合、「誰に権利があるのか」を巡って後日トラブルになる可能性があります。実務上は、「成果物の権利は企業に帰属する」「著作者人格権を行使しない」と定めるケースが一般的です。
5. 事故・損害に関する条項
インターンシップ中に事故や怪我が発生した場合の責任分担を定める条項です。企業側の故意や重過失がない限り責任を負わない旨を記載することで、過度なリスクを回避できます。ただし、安全配慮義務を軽視することは許されないため、実際の運用においても十分な注意が必要です。
インターンシップ契約書を作成する際の注意点
インターンシップ契約書を作成・運用する際には、以下の点に注意しましょう。
- 他社の契約書をそのまま流用しない
- インターンの実態に合った内容にする
- 雇用契約との違いを正しく理解する
- 運用ルールと契約内容を一致させる
- 必要に応じて専門家に確認する
特に、形式だけ整えても実態が伴っていなければ意味がありません。契約書と実務運用の整合性を常に意識することが重要です。
インターンシップ契約書と誓約書・覚書との違い
インターン受け入れ時に、契約書ではなく誓約書や覚書のみで対応するケースも見られます。しかし、誓約書は一方的な意思表示であり、契約書に比べると法的整理が不十分になりがちです。インターンシップ全体の枠組みを明確にするには、誓約書ではなく、双方の合意を前提とした契約書を作成する方が望ましいといえます。
まとめ
インターンシップ契約書は、単なる形式的な書面ではなく、企業とインターン参加者双方を守るための重要な契約です。雇用関係の不存在、秘密保持、知的財産権、責任範囲などを明確にすることで、安心してインターンシップを実施できます。インターン制度が多様化する今だからこそ、自社のインターン内容に適した契約書を整備し、健全で信頼性の高い受入体制を構築することが求められています。