借地権付建物売買契約書とは?
借地権付建物売買契約書とは、他人の土地を借りて建てられた建物と、その土地を使用する権利である借地権を一体として売買する際に締結される契約書です。通常の建物売買契約と異なり、土地の所有権は移転せず、建物と借地権のみが買主へ引き継がれる点に大きな特徴があります。日本では、古くから借地上に住宅や事業用建物を建てる慣行があり、現在も都市部を中心に借地権付き建物の売買は一定数存在します。しかし、借地権は土地所有権とは異なり、地主との契約関係を前提とするため、売買にあたっては慎重な法的整理が不可欠です。そのため、借地権付建物売買契約書は、建物の売買条件だけでなく、借地契約の承継、地主の承諾、地代や更新条件などを明確に定める重要な役割を果たします。
借地権付建物の売買が行われる主なケース
借地権付建物売買契約書は、以下のような場面で利用されます。
- 借地上の戸建住宅を第三者に売却する場合
- 親族から借地権付き建物を譲り受ける場合
- 事業用借地上の建物を事業承継やM&Aにより引き継ぐ場合
- 借地権の存続期間中に建物のみを売却する場合
これらのケースでは、建物そのものの価値だけでなく、借地条件や地主との関係性が取引の成否を左右します。そのため、契約書によって権利関係を整理しておくことが不可欠です。
通常の建物売買契約との違い
借地権付建物売買契約は、通常の建物売買契約とは次の点で異なります。
- 土地の所有権は移転しない
- 借地契約の内容を前提に売買が行われる
- 地主の承諾が必要となる場合が多い
- 承諾料や名義書換料が発生することがある
特に地主の承諾は実務上の大きなポイントです。地主の承諾が得られなければ、売買契約自体が成立しない、または履行不能となるリスクがあります。
借地権付建物売買契約書に盛り込むべき主な条項
借地権付建物売買契約書には、次のような条項を盛り込むことが重要です。
- 売買の目的(建物および借地権)
- 借地権の内容と種類
- 売買代金および支払方法
- 地主の承諾に関する規定
- 引渡し時期および方法
- 地代・公租公課の精算
- 契約不適合責任の範囲
- 解除および損害賠償
- 管轄裁判所
これらを体系的に定めることで、売主・買主双方のリスクを最小限に抑えることができます。
条項ごとの解説と実務上のポイント
1. 売買の目的条項
売買の目的条項では、建物と借地権を一体として売買することを明確に記載します。建物のみなのか、借地権も含まれるのかが曖昧な場合、後に大きな紛争へ発展する可能性があります。
2. 借地権の内容に関する条項
借地権の種類(普通借地権、定期借地権など)、存続期間、更新条件、地代の額と支払方法は必ず明示します。買主は借地契約の条件をそのまま承継するため、事前の理解が不可欠です。
3. 売買代金条項
売買代金は、建物価格と借地権価格を合算した金額として定めるのが一般的です。手付金の有無や支払時期も具体的に定めておくことで、トラブルを防止できます。
4. 地主の承諾条項
借地権譲渡に地主の承諾が必要であること、その取得手続きに甲乙が協力すること、承諾料の負担者を明確にしておくことが重要です。この条項は、契約の実効性を左右する極めて重要なポイントです。
5. 引渡しおよび危険負担
引渡しの時期と方法を明確にし、引渡し前の滅失・毀損の責任所在を定めます。一般的には引渡し前の危険は売主負担とします。
6. 契約不適合責任
中古の借地権付建物では、現状有姿での引渡しとし、契約不適合責任を制限または免除するケースが多く見られます。ただし、売主の故意または重過失は除外するのが一般的です。
7. 地代・公租公課の精算
固定資産税や地代について、引渡日を基準に日割り精算する旨を定めておくことで、金銭トラブルを防げます。
借地権付建物売買における注意点
借地権付建物の売買では、次の点に特に注意が必要です。
- 地主との関係性や過去の経緯を事前に確認する
- 借地契約書の内容を必ず精査する
- 承諾料や更新料の有無を把握する
- 将来の建替えや更新が可能か確認する
これらを怠ると、購入後に想定外の制約を受ける可能性があります。
契約書作成時に専門家チェックが必要な理由
借地権は法律関係が複雑であり、個別事情によって適切な条文内容が大きく異なります。特に高額取引の場合や事業用物件では、弁護士・司法書士・不動産専門家による確認を行うことで、将来的な紛争リスクを大幅に低減できます。
まとめ
借地権付建物売買契約書は、建物売買と借地契約という二重の法律関係を整理するための重要な契約書です。地主の承諾、借地条件の承継、地代や責任範囲を明確にすることで、売主・買主双方が安心して取引を進めることができます。ひな形を活用する場合でも、そのまま使用するのではなく、取引内容に応じた調整と専門家確認を行うことが、トラブルを防ぐ最善策といえるでしょう。