公認心理師業務委託契約書とは?
公認心理師業務委託契約書とは、医療機関、企業、教育機関、福祉施設などが、公認心理師に対して心理支援や相談業務を外部委託する際に締結する契約書です。 雇用契約ではなく業務委託契約として整理することで、専門職としての独立性を尊重しつつ、業務内容や責任範囲、報酬条件などを明確にする役割を果たします。公認心理師は国家資格であり、心理支援において高い専門性と倫理性が求められます。そのため、一般的な業務委託契約書よりも、秘密保持や個人情報保護、専門的判断の尊重といった点を丁寧に定めることが重要です。
公認心理師業務委託契約書が必要となるケース
公認心理師業務委託契約書は、次のような場面で特に必要とされます。
- 医療機関が非常勤やスポット対応で心理師を起用する場合
- 企業が従業員向けのメンタルヘルス相談窓口を外部委託する場合
- 学校や教育機関がスクールカウンセリング業務を委託する場合
- 福祉施設や自治体が心理支援業務を専門家に依頼する場合
これらのケースでは、雇用関係と誤認されないようにすること、また相談内容や個人情報を適切に管理することが不可欠です。
雇用契約ではなく業務委託契約とする理由
公認心理師との契約を業務委託とする最大の理由は、専門性の独立性にあります。 心理支援は高度な専門判断を要する業務であり、業務の進め方や判断内容について、過度な指揮命令が行われると、専門職としての中立性が損なわれるおそれがあります。
業務委託契約とすることで、
- 心理師が自己の専門的裁量で業務を遂行できる
- 労働時間管理や人事評価の対象外とできる
- 雇用に伴う社会保険や労務管理の負担を軽減できる
といった実務上のメリットも得られます。
公認心理師業務委託契約書に盛り込むべき必須条項
公認心理師業務委託契約書には、最低限次の条項を盛り込む必要があります。
- 業務内容の範囲
- 資格及び専門性に関する確認
- 業務遂行の独立性
- 報酬及び支払条件
- 秘密保持義務
- 個人情報の取扱い
- 損害賠償及び責任範囲
- 契約期間及び解約条件
- 管轄裁判所
これらを明確に定めておくことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。
条項ごとの実務的な解説
1. 業務内容条項
業務内容は抽象的にしすぎず、かといって細かく縛りすぎないことが重要です。 心理面接、心理検査、心理相談、記録作成など、想定される業務を列挙しつつ、「これらに付随する業務」といった包括的な表現を入れておくと柔軟に対応できます。
2. 資格及び倫理条項
公認心理師資格を有していること、資格を有効に維持していることを明記します。 また、関連法令や倫理規程を遵守する旨を定めることで、心理支援業務の信頼性を担保できます。
3. 業務遂行の独立性条項
本契約が雇用契約ではないこと、乙が自己の裁量と責任で業務を行うことを明確にします。 これは、偽装請負や労働者性の指摘を避けるうえで極めて重要な条項です。
4. 報酬条項
報酬額や算定方法、支払時期を明確にします。 時間単価制、件数制、月額固定制など、実態に合った方式を選び、別紙や覚書で詳細を定める方法も有効です。
5. 秘密保持・個人情報条項
心理支援業務では、相談内容や個人情報の取扱いが最大のリスクポイントです。 契約期間中だけでなく、契約終了後も秘密保持義務が存続することを必ず明記しましょう。
6. 損害賠償条項
契約違反によって損害が生じた場合の責任関係を整理します。 ただし、過度に一方に不利な内容とならないよう、実務上は合理的な範囲で定めることが望まれます。
7. 契約期間・解約条項
契約期間を1年更新とするケースが一般的です。 中途解約についても、事前通知期間を定めることで、突然の業務停止による混乱を防げます。
公認心理師業務委託契約書を作成する際の注意点
契約書作成時には、次の点に注意が必要です。
- 雇用契約と誤認される表現を避ける
- 指揮命令関係を示す文言を入れすぎない
- 個人情報保護法との整合性を確保する
- 実際の業務運用と契約内容を一致させる
- 他社契約書の無断流用をしない
特に心理支援分野では、契約内容と実務の乖離がトラブルの原因になりやすいため注意が必要です。
電子契約との相性
公認心理師業務委託契約書は、電子契約との相性が非常に良い契約類型です。 定期的な更新や複数名との契約が発生しやすいため、電子契約を活用することで、契約管理の効率化とコンプライアンス強化につながります。
まとめ
公認心理師業務委託契約書は、心理支援業務を安心して外部委託するための重要な法的基盤です。 専門性の独立性を尊重しつつ、業務内容や責任範囲を明確にすることで、委託者と受託者の双方を守る役割を果たします。ひな形を活用する場合でも、自社や施設の実態に合わせた調整は不可欠です。必要に応じて専門家の確認を行い、適切な契約書を整備することが、安定した心理支援体制の構築につながります。