業務委託契約書(飲食店向け)とは?
業務委託契約書(飲食店向け)とは、飲食店が調理、接客、清掃などの業務を、従業員として雇用するのではなく、個人事業主やフリーランスなどの外部人材に委託する際に締結する契約書です。飲食業界では、人手不足や繁忙期対応、副業人材の活用などを背景に、アルバイトや正社員以外の働き方が増えています。しかし、契約書を作成せずに業務を依頼すると、後に雇用関係の有無や報酬、責任範囲を巡るトラブルが発生しやすくなります。
業務委託契約書は、
・業務内容
・報酬条件
・雇用関係がないこと
・責任やリスクの所在
を明確にすることで、飲食店と受託者双方を守る重要な書面です。
飲食店で業務委託契約が使われる主なケース
飲食店において、業務委託契約が利用される代表的なケースには、次のようなものがあります。
- 繁忙時間帯のみ調理スタッフを委託する場合
- イベント出店や期間限定店舗で人材を確保する場合
- 個人事業主の料理人にメニュー開発を依頼する場合
- 清掃や衛生管理業務を外部に委託する場合
- 副業・フリーランスの接客スタッフを活用する場合
これらのケースでは、雇用契約ではなく業務委託契約を選択することで、柔軟な人材活用が可能になります。ただし、実態が雇用に近い場合は、契約名に関わらず労働契約と判断されるリスクがあるため注意が必要です。
業務委託契約と雇用契約の違い
飲食店が理解しておくべき最重要ポイントが、業務委託契約と雇用契約の違いです。
雇用契約の特徴
- 指揮命令関係がある
- 勤務時間や場所が細かく指定される
- 労働基準法や最低賃金法が適用される
- 社会保険や労災の対象となる
業務委託契約の特徴
- 受託者は自己の裁量で業務を遂行する
- 成果や業務内容に対して報酬が支払われる
- 原則として労働法令は適用されない
- 事業者同士の対等な契約関係となる
業務委託契約書では、この違いを明確にするため、雇用関係が存在しないことを明示する条項を必ず盛り込む必要があります。
飲食店向け業務委託契約書に必ず入れるべき条項
1. 業務内容条項
調理、接客、清掃など、委託する業務内容をできるだけ具体的に記載します。業務範囲を曖昧にすると、想定外の業務を求められた、報酬に含まれていないといった紛争の原因になります。
2. 業務遂行方法・裁量条項
乙が自己の裁量と責任で業務を行うことを明示し、甲による指揮命令がないことを記載します。これは、偽装請負や労働契約と判断されるリスクを下げるために重要です。
3. 報酬条項
報酬額、計算方法、支払期日、振込手数料の負担などを明確に定めます。飲食店では時間単価型や日当型が多いため、その場合でも業務委託であることが分かる表現を用いる必要があります。
4. 費用負担条項
業務に必要な交通費、消耗品、ユニフォーム等の負担者を明確にします。原則として乙負担としつつ、例外がある場合は個別に合意します。
5. 秘密保持条項
レシピ、仕入先、顧客情報、売上情報など、飲食店には重要な営業情報が多数存在します。業務委託契約であっても、秘密保持義務は必須です。
6. 知的財産権条項
メニュー開発や写真撮影、SNS用コンテンツ制作などを委託する場合、成果物の著作権の帰属を明確にしておかないと、後に使用できなくなるリスクがあります。
7. 損害賠償条項
食中毒事故、器物破損、顧客対応トラブルなどが発生した場合の責任の所在を定めます。過度に一方的な内容にならないよう注意が必要です。
8. 契約期間・解約条項
契約期間、更新の有無、中途解約の条件を定めることで、突然の契約終了によるトラブルを防止します。
飲食店が業務委託契約書を作成する際の注意点
- 実態が雇用にならないよう運用面も整える
- 勤務時間やシフトの細かすぎる指定は避ける
- 制服貸与や備品提供の扱いを整理する
- 他の業務委託先との兼業を制限しすぎない
- 労働法改正や判例動向を定期的に確認する
契約書だけ整えても、実際の運用が雇用と同じであれば、労働契約と判断される可能性があります。契約内容と現場運用の整合性が重要です。
業務委託契約書を整備するメリット
飲食店が業務委託契約書を整備することで、次のようなメリットがあります。
- 雇用トラブルや未払い請求を防止できる
- 責任範囲が明確になりリスク管理がしやすい
- 副業・フリーランス人材を活用しやすくなる
- 店舗運営の柔軟性が向上する
特に近年は、副業解禁の流れにより、飲食業界でも業務委託人材の活用が一般化しています。契約書の整備は、もはや必須といえるでしょう。
まとめ
業務委託契約書(飲食店向け)は、飲食店が外部人材を安全かつ継続的に活用するための重要な法的基盤です。調理や接客といった現場業務であっても、契約内容を明確にしておくことで、不要なトラブルを未然に防ぐことができます。業務内容、報酬、雇用関係の否定、秘密保持などの条項を適切に盛り込み、自店舗の運営形態に合った契約書を整備することが、安定した店舗経営につながります。