海外委託対応型業務委託契約書とは?
海外委託対応型業務委託契約書とは、国内企業が海外に所在する事業者や個人に業務を依頼する際に締結する契約書です。通常の業務委託契約に加えて、国境を越える取引特有の問題に対応する条項を含む点が大きな特徴です。具体的には以下のようなリスクや条件を契約書に反映させる必要があります。
- 外貨建てでの支払いや送金に伴う手数料や為替差損益の負担方法
- 秘密情報が国境を越えて伝達されることを前提とした情報管理体制
- 成果物の知的財産権をどちらに帰属させるかの明確化
- 日本法と現地法のどちらを優先するかという準拠法の選定
- 紛争発生時にどの裁判所や仲裁機関を利用するかの合意
- 契約書を日本語と英語で作成する場合の言語優先順位
このように、国内契約では想定されにくいリスクを具体的にカバーできる契約書が、海外委託対応型業務委託契約書です。
海外委託契約が必要となるケース
- 海外委託対応型契約書は、以下のような取引場面で活用されます。
- オフショア開発を海外のITエンジニアに依頼する場合
- 海外の製造会社に製品の一部を委託生産する場合
- 翻訳やデザインなどのクリエイティブ業務を海外フリーランスに外注する場合
- BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)として海外のコールセンターや会計事務所に業務を依頼する場合
- 海外のコンサルタントや研究者に調査業務を委託する場合
これらのケースでは、納期の遅延や品質トラブル、法的手続きの違いによる混乱が起きやすいため、契約であらかじめルールを決めておく必要があります。
海外委託対応型業務委託契約書に盛り込むべき主な条項
- 契約の目的と業務範囲を明確にする条項
- 成果物の定義と検収手続きを定める条項
- 報酬額と支払方法(外貨送金、手数料負担、為替差損益の扱い)
- 秘密保持義務と情報管理に関する条項
- 成果物の知的財産権の帰属に関する条項
- 現地法令や輸出規制を遵守する義務を課す条項
- 契約解除の条件とその手続き
- 契約違反があった場合の損害賠償条項
- 天災や戦争、感染症拡大など不可抗力への対応条項
- 準拠法と裁判管轄を明示する条項
- 契約書の言語の優先順位を定める条項
これらを組み込むことで、海外委託の不確実性を低減できます。
条項ごとの解説と注意点
秘密保持条項
海外委託では、顧客情報や技術情報が国外に流出する可能性があります。現地のセキュリティ水準が日本より低い場合もあるため、秘密保持条項は特に重要です。契約終了後も一定期間は秘密保持義務を継続させる規定を入れておくと安全です。
契約期間・解除条項
契約期間は明確に定め、更新方法をあらかじめ合意しておきましょう。品質不良や納期遅延が続く場合に契約を解除できるよう、解除条件を明記することが実務上の必須ポイントです。
損害賠償条項
受託者の過失で損害が発生した場合には、委託者が損害賠償を請求できるように定めます。海外では回収が難しいため、弁護士費用を含めて請求できる旨を明記しておくことが望ましいです。
準拠法・裁判管轄
紛争が発生した場合、どの法律を適用し、どの裁判所で解決するかを定めることは必須です。日本企業は一般的に「日本法を準拠法とし、東京地方裁判所を専属的合意管轄とする」と設定するケースが多いです。これにより海外裁判制度の不慣れさによるリスクを避けられます。
言語条項
契約書を日本語と英語で作成する場合は、どちらを正文とするかを必ず定めます。通常は「日本語を正文とし、齟齬がある場合は日本語を優先する」とすることが多いです。
契約書を作成・利用する際の注意点
- 外貨送金に関する手数料や為替差損益の扱いを契約で明確化する
- 成果物の知的財産権が誰に帰属するかを曖昧にしない
- 現地の労働法や個人情報保護法などを遵守する義務を受託者に課す
- 紛争解決方法は裁判か仲裁かを事前に合意しておく
- 秘密保持義務は契約終了後も存続させる規定を置く
これらを徹底することで、海外委託のリスクを大きく低減できます。