パーソナルトレーナー業務委託契約書とは?
パーソナルトレーナー業務委託契約書とは、ジムやフィットネス施設の運営者(委託者)と、独立したトレーナー(受託者)が業務を行う際に、その内容や条件を明確にするための契約書です。この契約は「雇用契約」ではなく、「業務委託契約」に該当するため、受託者であるトレーナーは従業員ではなく独立した事業主として扱われます。
ジム業界では、フリーランスとして複数の施設を掛け持ちするトレーナーが増えており、報酬体系・営業時間・顧客データの扱いなどをめぐるトラブルも多発しています。こうした背景から、双方の責任範囲や守秘義務を明確にする「業務委託契約書」は不可欠です。
この契約書を締結することで、
- 仕事内容の範囲を明確にし、追加業務の押し付けを防止できる
- 報酬条件や支払日を明記し、未払いリスクを回避できる
- 顧客情報や施設データを適切に保護できる
といった効果が期待されます。
パーソナルトレーナー業務委託契約書が必要となるケース
この契約書が必要になる典型的なケースは次の通りです。
- ジムが外部トレーナーをスポット的に雇う場合
- フリーランストレーナーが自社顧客を持ち込み、施設利用のみを行う場合
- オンラインパーソナルトレーニングを委託する場合
- 法人トレーニング・企業福利厚生プログラムを受託する場合
これらの場合、契約形態を明確にしておかないと、「実質的に雇用関係である」と判断されるリスク(いわゆる偽装請負)があります。労働基準監督署や税務署の指摘を受けると、社会保険料や労務コストが遡及して発生する恐れもあるため、「独立した業務委託関係」であることを文書で証明できる契約書 が極めて重要になります。
パーソナルトレーナー業務委託契約書に盛り込むべき主な条項
パーソナルトレーナー向けの契約書には、次のような条項を必ず盛り込みましょう。
- 業務の範囲
- 報酬および支払方法
- 契約期間と更新条件
- 守秘義務
- 損害賠償責任
- 顧客情報の取扱い
- 契約解除の条件
- 独立性および労働契約との区別
- 知的財産権・トレーニングプログラムの権利帰属
- 準拠法・裁判管轄
以下では、主要な条項ごとに内容と注意点を解説します。
条項ごとの解説と注意点
1. 業務内容条項
トレーニング指導・カウンセリング・メニュー作成・体力測定など、受託者が行う具体的な業務範囲を明示します。 あいまいな表現のままだと、施設側から清掃・営業・受付対応などを強要される恐れがあります。 「顧客へのトレーニング提供を中心業務とする」と限定することで、労務的な誤解を避けられます。
2. 報酬・支払方法条項
セッション単価制・売上分配制・固定報酬制など、報酬体系を明記します。 報酬金額の算出方法、支払日、振込手数料の負担、源泉徴収の有無を記載することで、未払い・遅延トラブルを防げます。 また、消費税の取扱いを記載しておくと、確定申告時にも混乱が生じません。
3. 守秘義務条項
顧客情報・健康データ・食事内容・トレーニング記録など、センシティブな情報を扱うため、守秘義務は必須です。 退会後や契約終了後も一定期間(例:3年)秘密保持を継続させることで、顧客流出を防げます。
4. 知的財産権条項
トレーニングメニュー・動画・資料の権利帰属を明記します。 ジムが提供したノウハウを使って独自商品を販売するなどのトラブルを防止するため、「契約上作成した資料等の著作権は委託者に帰属する」と定めるのが一般的です。 一方で、乙が独自に蓄積してきたノウハウや指導理論は乙に帰属する旨を併記すると、公平性が保たれます。
5. 契約期間・更新条項
契約の有効期間を1年単位などで定め、期間満了時に自動更新するか否かを明確にします。 自動更新の有無を明記しておかないと、更新をめぐるトラブルが起こりやすくなります。 また、解約通知の期限(例:1か月前まで)も忘れずに記載します。
6. 契約解除条項
契約違反や不誠実な業務遂行、反社会的勢力との関係など、解除事由を列挙します。 特に顧客とのトラブル発生時に即時解除が可能かどうかを明示しておくと、ジム側のリスクを軽減できます。
7. 損害賠償条項
トレーニング中の事故や器具損傷などに関して、どちらが責任を負うかを定めます。 乙が自身の過失により事故を起こした場合は損害を賠償し、甲の施設設備に起因する場合は甲が責任を負うなど、分担を明記しておくと安心です。
8. 独立性の明示
業務委託契約は雇用契約と異なり、乙は独立した事業者です。 契約書に「乙は甲の指揮命令を受けない」「社会保険・労働保険の加入義務は乙にある」と明記しておくと、偽装請負の誤解を避けられます。
9. 反社会的勢力排除条項
トレーナー業界では、顧客との金銭トラブルやSNS炎上などが信用問題につながる場合があります。 反社会的勢力との関係を一切排除する条項を入れることで、施設運営者としての信用を守れます。
10. 準拠法・管轄条項
トラブル時の裁判管轄を「甲の本店所在地の地方裁判所」と定めることで、不要な管轄争いを避けられます。 実務では東京地裁・大阪地裁を指定するケースが多く見られます。
契約書を作成・利用する際の注意点
- 雇用契約と混同しないよう注意
指揮命令関係が強く、勤務時間や場所が拘束される場合は「雇用」と見なされるおそれがあります。
独立した事業者関係であることを明確にする文言を入れることが重要です。 - 報酬の支払条件を明確に
売上歩合制や成果報酬制を採用する場合は、計算基準や対象期間を詳細に定義しておきましょう。 - 顧客情報の持ち出し禁止を明記
トレーナーが退職後に顧客へ直接営業をかける行為はトラブルの原因です。契約書で禁止事項として規定します。 - 保険・免責条項の検討
万一の事故に備えて、施設側は賠償責任保険、トレーナー側は損害保険に加入するなど、実務的な対応も重要です。 - 契約更新・解除のルールを明示
更新手続や通知期間を定め、双方が納得の上で継続・終了できるよう設計します。 - 専門家への確認を推奨
税務や社会保険の取扱いは個々の契約形態で異なります。契約前に弁護士や社労士の確認を受けることが望ましいです。