電子カルテ情報共有覚書とは?
電子カルテ情報共有覚書とは、医療機関と外部事業者が、電子カルテに記録された患者情報を共同利用・連携する際に、その取扱条件や責任範囲を明確にするための合意文書です。電子カルテ情報には、診療内容、検査結果、画像データ、既往歴、投薬情報など、極めて機微性の高い個人情報が含まれます。そのため、口頭の合意や簡易な業務委託契約だけでは、情報漏えいや法令違反のリスクを十分に抑えることができません。
本覚書を締結することで、
・どの情報を
・どの目的で
・誰が
・どのように管理し
・事故が起きた場合にどう対応するか
を事前に整理し、医療現場と事業者双方のリスクを最小化することが可能になります。
電子カルテ情報共有覚書が必要となる背景
医療DXと外部連携の拡大
近年、医療分野では診療支援システム、オンライン診療、AI画像診断、クラウド型電子カルテなど、外部事業者との連携が急速に進んでいます。その結果、医療機関の外部に電子カルテ情報が共有されるケースが増加し、情報管理の重要性がこれまで以上に高まっています。
個人情報保護法と要配慮個人情報
電子カルテ情報は、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当します。要配慮個人情報は、漏えいした場合の本人への影響が大きいため、通常の個人情報よりも厳格な管理が求められます。覚書を作成せずに情報共有を行うと、法令違反や行政指導、損害賠償請求につながるおそれがあります。
電子カルテ情報共有覚書の主な利用ケース
医療機関とITベンダーの連携
電子カルテシステムの保守、クラウド移行、診療支援ツール導入などの場面では、ITベンダーが電子カルテ情報にアクセスすることがあります。この場合、業務委託契約に加えて、情報共有に特化した覚書を締結することで、目的外利用や再委託リスクを防止できます。
医療法人と外部業務委託先
医療事務代行、データ分析、研究協力など、医療法人が外部委託先と患者情報を共有する場面でも、本覚書は有効です。特に複数の委託先が関与する場合、責任の所在を明確にしておくことが重要です。
電子カルテ情報共有覚書に盛り込むべき必須条項
電子カルテ情報共有覚書には、以下の条項を必ず盛り込む必要があります。
- 目的条項(何のために情報を共有するのか)
- 定義条項(電子カルテ情報・共有情報の範囲)
- 情報共有の範囲と利用制限
- 個人情報・要配慮個人情報の取扱い
- 安全管理措置
- 再委託の可否
- 事故発生時の対応
- 返還・消去義務
- 損害賠償責任
- 有効期間・管轄
条項ごとの実務解説と注意点
1. 目的条項の重要性
目的条項は、情報の目的外利用を防ぐための最重要条項です。目的を具体的に限定することで、想定外の二次利用や横展開を防止できます。曖昧な表現は避け、業務内容と紐づけて記載することがポイントです。
2. 情報共有の範囲と制限
電子カルテ情報すべてを無制限に共有するのではなく、必要最小限の情報に限定することが重要です。範囲を明確にすることで、万一の事故発生時にも責任の切り分けが容易になります。
3. 安全管理措置条項
技術的対策(アクセス制御、ログ管理、暗号化など)と、組織的対策(教育、管理責任者の設置)の両面を意識した記載が望まれます。抽象的な表現だけでなく、実務に即した管理体制を前提とすることで、契約の実効性が高まります。
4. 再委託禁止条項
外部事業者がさらに第三者へ再委託するケースは、情報漏えいリスクを急激に高めます。原則禁止とし、例外的に書面承諾を要する構成が安全です。
5. 事故発生時の対応
漏えい等が発生した場合の報告義務や対応フローを定めておくことで、初動対応の遅れを防ぐことができます。これは実務上、非常に重要な条項です。
6. 返還・消去条項
契約終了後もデータが残存していると、想定外のリスクが生じます。返還又は完全消去を義務づけ、報告義務まで定めておくことが望ましいです。
電子カルテ情報共有覚書を作成する際の注意点
- 他社ひな形の流用やコピペは避ける
- 業務委託契約との整合性を確認する
- 個人情報保護法改正への対応を意識する
- 実際の運用体制と乖離しない内容にする
- 専門家の確認を受ける
特に医療分野では、形式的な契約書ではなく、運用と連動した内容であることが重要です。
電子契約サービスとの相性
電子カルテ情報共有覚書は、医療機関と外部事業者の間で迅速に締結されるケースが多く、電子契約との相性が非常に良い契約書です。
電子契約を利用することで、
・締結スピードの向上
・契約管理の一元化
・改定履歴の明確化
といったメリットを享受できます。
まとめ
電子カルテ情報共有覚書は、医療DX時代において不可欠な契約文書です。電子カルテという高度な個人情報を扱う以上、事前にルールを明確化しておくことが、医療機関・事業者双方の信頼性を高め、トラブルを未然に防ぐことにつながります。単なる形式的な覚書ではなく、実務に即した内容で整備し、安全で持続可能な医療連携を実現しましょう。