顧問契約書とは?
顧問契約書とは、企業が外部の専門家や経験者から、継続的に助言や指導を受けることを目的として締結する契約書です。顧問という立場は、従業員や業務委託とは異なり、意思決定を行う権限は持たず、あくまで助言者・相談役として関与する点に特徴があります。中小企業やスタートアップでは、経営資源が限られていることから、経営、法務、労務、IT、マーケティングなど特定分野の専門家を顧問として迎えるケースが増えています。その際、口約束や曖昧な合意のまま関係を始めてしまうと、報酬、責任範囲、業務内容をめぐるトラブルに発展するおそれがあります。顧問契約書は、こうしたリスクを防ぐために、顧問業務の内容、契約期間、報酬、秘密保持義務などを文書で明確に定めるための重要な契約書です。
顧問契約書が必要となる主なケース
顧問契約書は、次のような場面で特に必要とされます。
- 経営経験者や元役員を経営顧問として迎える場合
- 弁護士、税理士、社労士など士業以外の立場で継続的な助言を受ける場合
- IT、DX、マーケティングなど専門分野のアドバイザーと継続契約を結ぶ場合
- 業務委託ではなく、成果保証を伴わない助言契約としたい場合
これらのケースでは、業務委託契約書や雇用契約書を流用すると、責任の重さや業務範囲が不適切になる可能性があります。顧問契約書を用いることで、あくまで助言契約であることを明確にできます。
顧問契約書に必ず盛り込むべき条項
顧問契約書を作成する際には、最低限次の条項を盛り込む必要があります。
- 契約の目的
- 顧問業務の内容
- 業務形態と権限の範囲
- 報酬および費用負担
- 契約期間と更新
- 秘密保持義務
- 知的財産権の取扱い
- 契約解除・解約
- 損害賠償・責任範囲
- 準拠法・管轄
これらを体系的に整理することで、顧問関係における誤解や紛争を未然に防止できます。
条項ごとの実務解説と注意点
1. 契約目的条項
契約目的では、顧問契約が「継続的な助言」を目的とすることを明確にします。業務の成果を保証するものではないことを示すことで、結果責任を問われるリスクを低減できます。
2. 顧問業務の内容
顧問業務の内容は、抽象的すぎても具体的すぎても問題があります。実務上は、「経営に関する助言」「相談事項への意見提供」など包括的な表現を用いつつ、必要に応じて協議で追加できる構成が望ましいです。
3. 業務形態と権限の制限
顧問は、会社の意思決定や業務執行を行う立場ではありません。そのため、「業務執行権限を有しない」「最終判断は会社が行う」といった文言を明記することが重要です。
4. 報酬条項
報酬については、月額顧問料、時間単価、成功報酬の有無などを明確にします。また、交通費や出張費などの実費負担についても、事前承認制とすることで無用な請求トラブルを防げます。
5. 契約期間・更新条項
契約期間は1年程度とし、自動更新条項を設けるケースが一般的です。更新を望まない場合の解約期限を定めておくことで、契約終了時の混乱を防止できます。
6. 秘密保持条項
顧問は、経営情報や未公開情報に触れる機会が多いため、秘密保持条項は必須です。契約終了後も義務が存続する旨を明記することが重要です。
7. 知的財産権条項
顧問の助言をもとに資料やアイデアが生まれることがあります。その帰属を曖昧にしておくと、後に権利関係で揉める原因になります。別途協議とする場合でも、その旨を明文化しておく必要があります。
8. 契約解除条項
契約違反があった場合の解除条件や、やむを得ない事由による中途解約の扱いを定めます。顧問契約は人的信頼関係に基づくため、柔軟な解約条項を設けることが実務上有効です。
9. 損害賠償・責任制限
顧問の責任範囲を限定し、故意または重過失の場合に限るとすることで、過度な責任追及を防げます。
顧問契約書と業務委託契約書の違い
顧問契約書と業務委託契約書は混同されがちですが、性質は大きく異なります。
- 顧問契約:助言・相談が中心、成果保証なし
- 業務委託契約:特定業務の遂行、成果物が前提
顧問契約であるにもかかわらず、業務委託契約書を使用すると、業務責任や成果責任を問われるおそれがあるため注意が必要です。
顧問契約書作成時のよくある失敗
顧問契約書に関して、実務上よくある失敗例には次のようなものがあります。
- 業務内容を曖昧にしすぎて認識のズレが生じる
- 報酬条件を口約束のままにしてしまう
- 秘密保持条項を設けていない
- 契約解除条件が不明確
これらはすべて、書面化によって防ぐことが可能です。
顧問契約書をひな形で作成する際の注意点
インターネット上のひな形を利用する場合は、以下の点に注意が必要です。
- 自社の実態に合わせて必ずカスタマイズする
- 他社契約書のコピーは著作権リスクがある
- 最新の法令や実務に適合しているか確認する
- 重要案件では専門家の確認を受ける
mysignで提供する顧問契約書ひな形は、一般的な実務を踏まえた構成となっていますが、最終的な利用にあたっては専門家の確認を推奨します。
まとめ
顧問契約書は、企業と顧問との信頼関係を支える重要な法的基盤です。業務内容、報酬、責任範囲を明確にすることで、安心して長期的な顧問関係を築くことができます。特に中小企業やスタートアップにとって、顧問は経営を支える重要な存在です。その関係を曖昧にせず、適切な顧問契約書を整備することが、将来的なリスク回避と事業成長につながります。