SNS運用に関する業務基本契約書とは?
SNS運用に関する業務基本契約書とは、企業や個人がSNS運用を外部の業者やフリーランスに委託する際、その業務内容・報酬・著作権・秘密保持・トラブル対応などを包括的に定める契約書です。
X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、YouTube、FacebookなどのSNSは、企業ブランディングや集客の中心的ツールとなっていますが、外部委託による運用では「投稿内容の責任」や「炎上リスク」「成果物の権利帰属」などのトラブルが発生しやすい領域でもあります。
特に、SNS運用業務は日々の投稿やコメント対応、クリエイティブ制作、広告配信など、複数の工程を伴うため、明確な契約条件を設定しておくことが極めて重要です。
本契約書は、甲(依頼者=企業)と乙(受託者=運用代行会社または個人事業主)の間で、双方の義務と権利、契約期間、支払条件などを明文化することで、トラブルを防止し、信頼関係を基盤とした継続的なSNS運用を実現することを目的としています。
SNS運用契約書が必要となるケース
SNS運用契約書は、次のような場面で締結されるケースが一般的です。
- 企業がSNS運用代行会社に、Instagram・Xなどの公式アカウント運用を委託する場合
- 広報担当者が不在の企業が、フリーランスのSNSプランナーやクリエイターに投稿制作を依頼する場合
- 広告代理店がSNS運用を外注先クリエイターへ再委託する場合
- タレント・インフルエンサーが所属事務所を通じて運用を委託される場合
- SNSを活用したキャンペーン企画やブランディング戦略を外部専門家に任せる場合
これらの取引では、SNS上の発信が企業のイメージや売上に直結するため、契約内容の不備や口頭依頼だけで進めると、炎上・情報漏えい・投稿削除などの問題に発展することがあります。
したがって、業務開始前に書面で基本契約を結び、業務範囲・責任範囲・著作権・守秘義務などを明示しておくことが、双方の安心と信頼を守る第一歩となります。
SNS運用契約書に盛り込むべき主な条項
SNS運用に関する契約では、以下のような条項が不可欠です。
- 契約の目的
- 業務内容の範囲
- 再委託の可否
- 報酬と支払条件
- 秘密保持義務
- 著作権・知的財産権の帰属
- 禁止行為
- 炎上時の対応責任
- 契約期間と更新条件
- 契約解除・損害賠償
- 管轄裁判所の指定
これらを明記することで、「どの範囲まで任せるのか」「誰が責任を負うのか」「万一トラブルが発生した場合どう対応するのか」を明確にできます。
条項ごとの解説と注意点
契約の目的条項
目的条項では、SNS運用業務の範囲と契約の背景を明記します。例として「Instagram・X等のSNSアカウントにおける投稿企画・制作・分析業務を委託することを目的とする」と具体的に書くことで、後に「想定外の業務要求」が生じるリスクを防げます。
業務内容の範囲
SNS運用では、投稿文案の作成、画像編集、コメント対応、分析レポートなど多岐にわたります。契約書には「どこまでが委託対象で、どこからが追加費用となるのか」を具体的に定義することが重要です。また、広告運用(Meta広告やX広告など)を含む場合は、追加条項として「広告出稿に関する業務の有無」も記載するのが望ましいです。
再委託の制限
SNS運用代行業者が、さらに外部の個人や制作会社へ業務を再委託するケースもあります。しかし、投稿内容や画像素材の取扱いに第三者が関わると、情報漏えいや品質低下のリスクが高まります。そのため、再委託は「甲の書面承諾を得た場合に限る」と明記し、適切な管理を求めましょう。
秘密保持条項
SNS運用業務では、クライアントの社内情報、販売計画、顧客情報、広告戦略などに触れる機会があります。これらはすべて「秘密情報」として保護対象に含め、契約終了後も一定期間(通常3〜5年)の守秘義務を負わせることが実務上不可欠です。特にSNSアカウントのログイン情報は、最も漏えいリスクが高い情報のため、アクセス管理方法まで取り決めておくと安全です。
著作権・知的財産権
SNS投稿用に作成した画像・動画・コピー文の著作権は、報酬支払後に依頼者へ譲渡する形が一般的です。ただし、乙(運用者)が既存テンプレートやライブラリ素材を使用する場合、第三者の著作権侵害リスクがないか確認が必要です。契約書には「成果物の著作権は、報酬支払完了時に甲へ移転する」と明記しましょう。
禁止行為
SNS運用で特に問題となるのが、担当者による「無断投稿」「情報改ざん」「不適切表現」です。契約書には「甲の名義での投稿・削除・広告出稿は甲の承諾を要する」「公序良俗に反する表現は禁止する」などの条項を設けておくことが必須です。炎上防止のためにも、緊急時の連絡体制や発信前承認フローを明確化しておきましょう。
炎上・事故時の対応
SNSでは誤投稿や批判拡散が瞬時に起こります。そのため「炎上・権利侵害・虚偽情報が発覚した場合の報告義務」と「初期対応の責任分担」を取り決めておくべきです。多くの企業では「乙は発覚時に直ちに甲へ報告し、甲の指示に従って対応する」との条文を入れます。
損害賠償条項
乙の過失により企業のブランド価値を損ねたり、誤情報発信によって売上が減少した場合、損害賠償責任を負うことになります。契約書では「乙は故意または過失により甲に損害を与えたときは、その損害(弁護士費用を含む)を賠償する」と定め、リスクの所在を明確にします。
契約期間・解除条件
SNS運用は継続型契約が多いため、「1年契約・自動更新」形式が一般的です。ただし、投稿の品質低下や不誠実な対応が続く場合の解除権を確保しておくことも必要です。「違反が是正されない場合は、催告なく解除できる」といった解除条項を入れておきましょう。
契約書を作成・利用する際の注意点
SNS運用に関する契約書を作成する際は、以下の点に注意してください。
- SNSプラットフォームの利用規約改定(特に広告出稿・データ分析機能)は頻繁に行われるため、契約条文も定期的に見直す
- 社内広報や法務部門との連携を取り、炎上リスクへの対応体制を整備する
- 成果物納品後の修正対応や実績掲載の可否(乙がポートフォリオで使用できるか)も明確にする
- 投稿スケジュール・KPI・レポート提出頻度など、運用ルールを別紙で定めるとより実務的
- 業務範囲・責任範囲・著作権の帰属を曖昧にしない
SNS運用契約は、企業のイメージと信用に直結する「ブランド保全型契約」といえます。一度炎上や情報漏えいが起これば、契約文言の曖昧さが大きな法的リスクとなるため、初回契約時にきちんと書面化しておくことが不可欠です。