会計参与契約書とは?
会計参与契約書とは、株式会社が公認会計士または税理士を会計参与として選任する際に、その職務内容、報酬、責任範囲、契約期間などを定めるために締結される契約書です。会計参与制度は、会社法に基づく制度であり、取締役と会計参与が共同して計算関係書類を作成することで、企業の財務情報の正確性と信頼性を高めることを目的としています。中小企業においては、監査役や会計監査人を設置するほどの体制は難しい一方で、決算書の信頼性確保や金融機関・取引先への説明責任が求められる場面が増えています。そのため、専門家である会計参与を設置し、契約書によって役割を明確にすることは、経営上の重要な選択肢となっています。
会計参与制度が導入された背景
会計参与制度は、会社法改正により新たに導入された制度で、特に中小企業のガバナンス強化を目的としています。従来、中小企業では、経理や決算が経営者や社内担当者の判断に大きく依存しており、第三者の専門的関与が不足しがちでした。
このような状況では、
- 決算書の正確性に疑義が生じる
- 金融機関からの信用評価が下がる
- 税務調査や訴訟時にリスクが顕在化する
といった問題が起こり得ます。会計参与制度は、こうした課題を解消し、外部専門家が計算書類の作成に関与することで、企業の透明性と信頼性を高める役割を果たします。
会計参与契約書が必要となるケース
会計参与は法律上の機関であり、選任自体は株主総会決議によって行われますが、実務上は契約書を締結することが不可欠です。特に、次のようなケースでは会計参与契約書が重要となります。
- 税理士や公認会計士を新たに会計参与として迎える場合
- 既存の顧問税理士に会計参与を兼任してもらう場合
- 金融機関から決算体制の強化を求められた場合
- M&Aや事業承継を見据えて財務の透明性を高めたい場合
契約書を作成せずに口頭や慣行で業務を依頼してしまうと、責任範囲や報酬、解任時の取り扱いを巡ってトラブルが発生するおそれがあります。
会計参与契約書に必ず盛り込むべき主な条項
会計参与契約書には、最低限次の条項を盛り込むことが実務上重要です。
- 職務内容に関する条項
- 善管注意義務に関する条項
- 報酬および費用負担に関する条項
- 秘密保持義務に関する条項
- 責任範囲・損害賠償に関する条項
- 契約期間・解任・辞任に関する条項
- 準拠法・管轄条項
これらを体系的に定めることで、法的安定性の高い契約書となります。
条項ごとの実務解説
1. 職務内容条項
会計参与の職務は、単なる記帳代行や決算書作成とは異なります。取締役と共同して計算関係書類を作成する点が最大の特徴です。契約書では、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書など、具体的な書類を明示しておくことで、業務範囲を明確にします。
2. 善管注意義務条項
会計参与は、専門家として高い注意義務を負います。
契約書に善管注意義務を明記することで、形式的な関与ではなく、実質的なチェック機能を果たすことが期待されます。
3. 報酬条項
会計参与の報酬は、顧問料とは別に設定されることが一般的です。月額固定とするのか、年額一括とするのか、また決算期のみ加算報酬を設けるのかなど、実務に即した定めが重要です。
4. 秘密保持条項
会計参与は、会社の財務情報や経営情報に深く関与します。そのため、契約終了後も存続する秘密保持義務を定めることが不可欠です。
5. 責任範囲条項
会計参与は万能な保証人ではありません。通常は、故意または重過失がある場合に限定して責任を負う旨を定め、過度な責任追及を防ぐ設計が実務上一般的です。
6. 契約期間・解任条項
会計参与は株主総会決議により解任されるため、契約書上でも解任時の取り扱いを整理しておく必要があります。契約期間や自動更新の有無を明確にすることで、紛争を未然に防ぐことができます。
会計参与契約書を作成する際の注意点
会計参与契約書を作成する際には、次の点に注意が必要です。
- 顧問税理士契約との内容が矛盾しないよう整理する
- 会社法上の職務を過度に制限しない
- 責任範囲を曖昧にしない
- ひな形の流用ではなく自社事情に合わせて調整する
特に、他社の契約書をそのまま流用することは、著作権や実務適合性の観点から推奨されません。
会計参与契約書と顧問契約の違い
顧問税理士契約は、税務申告や相談業務が中心ですが、会計参与契約は会社法上の機関としての関与を前提とします。両者を明確に区別し、契約書を分けて締結することで、役割と責任の混同を防ぐことができます。
まとめ
会計参与契約書は、単なる形式的な契約書ではなく、企業の財務ガバナンスを支える重要な法的文書です。適切に作成された契約書は、経営の透明性向上、金融機関からの信頼確保、将来的なトラブル防止に大きく寄与します。中小企業こそ、会計参与制度と契約書を正しく活用し、持続的な経営基盤を構築することが求められます。