写真撮影・二次利用許諾契約書とは?
写真撮影・二次利用許諾契約書とは、人物を撮影する際に発生する肖像権や著作権の扱い、撮影データの利用範囲、利用期間、編集加工、インターネット上での公開、第三者提供の可否などを明確にするための契約書です。近年、企業の採用ページ、SNS運用、広告物制作、Webメディア運営、イベント記録、商品プロモーションなど、写真を用いたコンテンツ活用はますます増加しています。それに伴い、肖像権侵害・無断利用・トラブルのリスクも拡大しており、その対策として本契約書の必要性が高まっています。肖像は個人の人格的な権利であり、本人の承諾なく利用すれば、民法上の不法行為責任を問われる可能性があります。また、写真撮影に伴う著作権は撮影者に発生しますが、被写体となる人物が「その写真をどう使ってよいか」を許諾しない限り、企業やクリエイターは自由に利用できません。これらの権利関係を整理し、双方が安心して利用・公開できる状態にするのが「写真撮影・二次利用許諾契約書」の役割です。
写真撮影・二次利用許諾契約書が必要となるケース
本契約書は、単に人物を撮影する場面だけでなく、次のような幅広いケースで必要になります。
- 企業が従業員・顧客を撮影し、WebサイトやSNSに掲載する場合
- モデル・インフルエンサーの撮影を行い、広告素材として利用する場合
- イベント・セミナー・展示会記録をSNSへ公開する場合
- 学生・未成年を含む写真を学校・塾・スポーツ団体が利用する場合
- クリエイター・フォトグラファーが作品を展示・販売する場合
- 採用広報や会社案内パンフレットに人物写真を使用する場合
- セミナー動画に参加者の顔が映り込み、アーカイブとして公開する場合
特にSNS利用が一般化した現在では、写真が第三者によって拡散されたり、削除が困難になるケースも多いため、利用範囲や公開継続の可否を明確にしておく必要があります。
写真撮影・二次利用許諾契約書に盛り込むべき主な条項
写真撮影に関する契約書では、以下の要素を網羅的に定めることが重要です。
- 利用目的・範囲(広告・SNS・Web・印刷物など)
- 権利帰属(著作権・肖像権・パブリシティ権の扱い)
- 編集加工の可否(トリミング・色調整・合成など)
- 個人情報の取扱い(氏名表示の有無など)
- 利用期間(無期限/限定期間)
- 公開停止請求ができるかどうか
- 第三者への提供・再利用の可否
- 禁止事項(名誉毀損・不適切利用の防止)
- 対価(無償または出演料)
- 損害賠償・責任制限
- 合意管轄などの紛争解決手続き
これらを契約書に定めておくことで、後から「そんな使われ方をするとは思わなかった」「SNS投稿を削除してほしい」「想定以上に商業利用されている」といったトラブルを防ぐことができます。
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 利用目的・範囲の定義
最も重要なのが「どこまで使ってよいか」を明確にする条項です。 企業の場合、Webサイト、SNS、広告、パンフレット、展示会など使用範囲は広く、クリエイターの場合は作品展示や販売も含まれます。実務上のポイントは次のとおりです。
- 「広告・SNS・Web・印刷物・展示等」と包括的に記載する
- 将来追加される可能性のある媒体にも対応できる表現にする
- 商用・非商用の区別を明確にする
特にSNSは拡散力が強いため、利用者の心理的抵抗が大きい媒体でもあります。そのため、契約に「SNSでの利用を含む」旨を明確に書くことが望ましいです。
2. 権利帰属の明確化(著作権・肖像権)
撮影された写真の著作権は撮影者である甲に帰属します。しかし、被写体の肖像は乙の人格的利益であり、乙の承諾なく利用することはできません。本契約では次の2点が重要です。
- 著作権は甲に帰属することを明示する
- 乙は肖像権その他の権利を甲に対して行使しない旨を記載する
この条項を明確にしておかないと、後から「著作権侵害」「無断利用」と主張されるリスクが残ります。
3. 編集加工・二次利用の扱い
写真は撮影後、トリミング・色調整・合成などの加工を行うことが一般的です。しかし、加工が原因で「イメージと違う」「誤解を招く」といったトラブルになる場合があります。以下を盛り込むのが実務的です。
- 一般的な編集加工(色調整・トリミング等)は許可する
- 名誉毀損や社会的信用を損なう加工は禁止する
- 甲が第三者(デザイン会社等)に加工を委託することを認める
特に広告やキャンペーン素材では加工が前提となるため、事前に合意しておく必要があります。
4. 個人情報の取扱い
写真には個人情報が含まれる場合が多く、法令(個人情報保護法)との整合性も求められます。 とくに次の点は慎重に扱う必要があります。
- 氏名を公開するか否かの扱い
- 企業が個人情報を第三者に提供する場合の規定
- 委託先に対する管理義務
本人の同意がないまま氏名入りで公開するとトラブルにつながるため、契約書で公開の有無を必ず確認しておきましょう。
5. 利用期間・公開停止請求の可否
利用期間は **無期限** とする契約が一般的ですが、乙が公開停止を求める可能性もあります。
実務上のポイントは以下のとおりです。
- 利用期間を「無期限」とするか「○年間」とするか選択できるようにする
- 合理的理由があれば乙が利用停止を求められる旨を記載する
- ただし、すでに印刷済み・配布済み・投稿済みの媒体については削除義務を負わないことを明示する
SNS投稿の削除は容易ですが、印刷物や雑誌、過去の動画については削除が不可能な場合があるため、実務に即した規定を置く必要があります。
6. 使用対価の有無
モデル撮影などの場合、出演料を支払うケースがあります。一方で社員撮影やイベント記録の場合は無償で許諾されるケースが大多数です。本契約では原則「無償」とし、別途合意がある場合に上書きできる形にしておくと柔軟です。
7. 不適切利用の禁止
企業が写真を利用する場合、名誉毀損や誤解を招く利用を行うと、乙からクレームが発生します。また、政治・宗教・差別等のセンシティブな利用は想定外のトラブルにつながります。
そのため契約では、
- 公序良俗に反する利用
- 名誉毀損・信用毀損となる利用
- 政治・宗教・差別的文脈での利用
- 法令違反の利用
を明確に禁止する必要があります。
8. 損害賠償・責任制限条項
トラブルが発生した際には、損害賠償の範囲が問題になります。実務上は、
- 通常かつ直接の損害を賠償範囲とする
- 特別損害を明確に除外する
とすることで、企業側のリスクを一定程度コントロールできます。
9. 合意管轄条項
万一紛争が発生した場合に備え、どの裁判所を専属管轄とするかを定めておくことが重要です。 一般的には「甲の本店所在地の地方裁判所」とし、遠方の被写体から提訴されるリスクを避けます。
写真撮影・二次利用許諾契約書を作成するうえでの注意点
1. 口頭での同意はトラブルのもと
「撮影していいですか?」 「はい、大丈夫です」 この程度の会話はよくありますが、後から「そんな使われ方をするとは思わなかった」とトラブルになる典型例です。特にSNS掲載は心理的負担が大きく、許可したつもりでも後からクレームが来るケースが多いため、必ず書面または電子契約で同意を得ることが重要です。
2. 未成年者は必ず保護者の同意が必要
未成年者の肖像権の同意は、本人だけでは無効となる可能性があります。学校・塾・スポーツ団体・習い事の現場では、保護者同意の取得が義務的といえるほど重要です。
3. SNSの削除義務範囲を明確にする
一度SNSに投稿された画像は拡散し、削除が困難になる場合があります。そのため、
- 甲が管理できる範囲の投稿のみ削除義務を負う
- 第三者による拡散投稿までは責任を負わない
といった現実的な条項を置くことが実務に即しています。
4. 肖像権は非常にデリケートな権利
肖像権は人格権の一部であり、被写体の心理的安全を守るため特に慎重な取り扱いが求められます。契約内容は丁寧に説明し、同意取得のプロセスも透明性を持たせることが望ましいです。
まとめ
写真撮影・二次利用許諾契約書は、企業・クリエイターが人物を撮影し、その写真を広告やSNS、Webサイトなどに利用する際のトラブルを未然に防ぐために不可欠な契約書です。肖像権や著作権の扱い、利用範囲、編集加工、個人情報、利用期間、削除義務の可否など、多岐にわたる実務ポイントを網羅しておくことで、撮影側・被写体側の双方が安心してコンテンツ活用を進められます。特にSNS時代では、一度公開した画像の管理が難しくなることから、契約書による明確な合意は企業のコンプライアンスに直結します。mysignのような電子契約サービスを活用することで、署名の手間を減らし、写真利用許諾の証跡を確実に残すことも可能です。本記事とひな形を参考に、自社の広報活動・広告制作・クリエイティブ制作に安全性と透明性を持たせる契約運用を行うことを推奨します。