ガバナンスコード対応支援契約書とは?
ガバナンスコード対応支援契約書とは、企業がコーポレートガバナンス・コードへの対応、内部統制体制の整備、取締役会運営の改善、開示資料の作成支援などを外部専門家やコンサルタントに依頼する際に締結する契約書です。特に上場企業やIPO準備企業では、株主・投資家・金融機関・取引先に対して、企業統治体制の透明性や実効性を説明する必要があります。そのため、ガバナンスコード対応は単なる社内整備ではなく、企業価値や資本市場からの信頼にも関わる重要なテーマです。この契約書では、支援業務の範囲、成果物の取扱い、報酬、秘密保持、責任範囲、非保証事項などを明確にし、依頼者と受託者の認識違いを防ぐ役割を果たします。
ガバナンスコード対応支援契約書が必要となるケース
ガバナンスコード対応支援契約書は、以下のような場面で利用されます。
- 上場企業がコーポレートガバナンス報告書の作成支援を外部専門家に依頼する場合
- IPO準備企業が上場審査に向けてガバナンス体制を整備する場合
- 取締役会、監査役会、指名委員会、報酬委員会などの運営改善を支援してもらう場合
- 内部統制、リスク管理、コンプライアンス体制の見直しを依頼する場合
- ESG、サステナビリティ、人的資本開示などの開示対応を支援してもらう場合
- 役員向けガバナンス研修や社内研修を外部講師に委託する場合
このような業務は、法務、財務、経営、IR、人事、コンプライアンスなど複数領域にまたがるため、契約書で業務範囲を明確にしておくことが重要です。
ガバナンスコード対応支援契約書に盛り込むべき主な条項
ガバナンスコード対応支援契約書では、次のような条項を定めるのが一般的です。
- 目的条項
- 業務内容
- 資料提供義務
- 善管注意義務
- 再委託
- 秘密保持
- 個人情報の取扱い
- 成果物及び知的財産権
- 報酬及び費用
- 非保証
- 契約期間
- 中途解約
- 解除
- 反社会的勢力の排除
- 損害賠償
- 合意管轄
特に重要なのは、業務内容、成果物、非保証、秘密保持の4点です。ガバナンス支援業務は成果が見えにくい部分もあるため、契約段階で範囲と責任を整理しておく必要があります。
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 業務内容条項
業務内容条項では、受託者がどのような支援を行うのかを具体的に記載します。たとえば、コーポレートガバナンス・コード対応状況の調査、開示資料作成支援、取締役会運営の助言、内部統制体制の整備、ESG開示支援などが考えられます。ここで業務内容を曖昧にしてしまうと、依頼者側は広範な対応を期待し、受託者側は限定的な助言のみを想定していたというトラブルが生じる可能性があります。そのため、契約書では対象業務を列挙しつつ、詳細は個別合意書や仕様書で定める形にしておくと実務上使いやすくなります。
2. 資料提供条項
ガバナンスコード対応支援では、会社の内部資料、取締役会議事録、社内規程、組織図、開示書類、内部統制資料などを確認することがあります。受託者が適切な助言を行うためには、依頼者から正確な資料提供を受ける必要があります。そのため、依頼者が必要資料を適時提供する義務を定めておくことが重要です。また、受託者は提供された資料に基づいて業務を行うため、その資料自体の正確性や完全性についてまで保証しない旨も明記しておくとよいでしょう。
3. 秘密保持条項
ガバナンス支援業務では、未公表の経営情報、役員人事、株主対応、財務情報、内部統制上の課題など、極めて機密性の高い情報を取り扱うことがあります。そのため、秘密保持条項は必須です。秘密情報の範囲、第三者開示の禁止、目的外利用の禁止、契約終了後の存続期間などを明確に定める必要があります。特に上場企業の場合、未公表の重要事実に該当する情報が含まれる可能性もあるため、インサイダー情報の取扱いにも注意が必要です。
4. 成果物及び知的財産権条項
ガバナンスコード対応支援では、報告書、分析資料、提案書、研修資料、チェックリスト、開示文案などの成果物が作成されることがあります。契約書では、これらの成果物の著作権が誰に帰属するのか、依頼者がどの範囲で利用できるのかを明確にする必要があります。実務上は、著作権は受託者に残しつつ、依頼者が自社内利用や開示対応のために利用できるとするケースが多くあります。一方、完全に依頼者へ権利移転させたい場合は、その旨を明確に記載する必要があります。
5. 報酬及び費用条項
報酬条項では、月額報酬、スポット報酬、時間単価、成果物単位の報酬など、支払条件を明確にします。
また、交通費、宿泊費、外部専門家費用、資料取得費用などが発生する場合には、依頼者負担とするのか、報酬に含めるのかを定めておく必要があります。
報酬条件が曖昧なままだと、追加対応や修正対応をめぐってトラブルになることがあります。特に、会議出席、資料修正、追加調査、役員説明などが発生する場合は、追加費用の扱いを明記しておくと安心です。
6. 非保証条項
ガバナンスコード対応支援は、助言や資料作成を行う業務であり、特定の結果を保証するものではありません。たとえば、上場審査の通過、投資家評価の向上、株価上昇、監査法人や証券会社からの承認、行政機関からの評価などは、受託者が保証できるものではありません。そのため、契約書では、受託者が特定成果を保証しないこと、最終判断と実施責任は依頼者にあることを明確にしておく必要があります。
7. 契約期間・中途解約条項
ガバナンス支援業務は、一定期間継続して行うことが多いため、契約期間と更新条件を定めます。たとえば、契約期間を1年間とし、期間満了前に終了通知がなければ自動更新とする方法があります。また、プロジェクトの進行状況や会社側の事情により途中で契約を終了する可能性もあるため、中途解約条項も設けておくと実務上便利です。
ガバナンスコード対応支援契約書を作成する際の注意点
ガバナンスコード対応支援契約書を作成する際は、以下の点に注意が必要です。
- 業務範囲を広げすぎないこと ガバナンス支援は範囲が広いため、何を行い、何を行わないのかを明確にする必要があります。
- 法務助言との線引きを明確にすること コンサルタントが弁護士資格を有しない場合、法律事務に該当する業務を行わないよう注意が必要です。
- 成果物の利用範囲を明確にすること 報告書や開示文案を社外公表に使えるのか、社内利用に限るのかを定めておく必要があります。
- 秘密情報の管理を徹底すること 役員情報、株主対応、未公表情報などを扱うため、秘密保持条項は厳格に定めるべきです。
- 特定成果を保証しないことを明記すること ガバナンス評価、上場審査、投資家評価などは外部要因にも左右されるため、非保証条項が重要です。
ガバナンスコード対応支援契約書とコンサルティング契約書の違い
ガバナンスコード対応支援契約書は、広い意味ではコンサルティング契約書の一種です。ただし、一般的な経営コンサルティング契約書と比べると、企業統治、開示、内部統制、取締役会運営などに特化している点が特徴です。一般的なコンサルティング契約書では、経営戦略、営業改善、業務効率化、マーケティング支援など幅広いテーマを扱います。一方、ガバナンスコード対応支援契約書では、上場企業やIPO準備企業が求められる統治体制や開示対応に焦点を当てます。そのため、秘密保持、非保証、成果物の利用範囲、法令・上場規則との関係などを、より慎重に設計する必要があります。
ガバナンスコード対応支援契約書における実務上のポイント
実務では、契約書本体にすべての業務内容を細かく書き込むよりも、基本契約書と個別業務仕様書を分ける形が使いやすい場合があります。たとえば、基本契約書では秘密保持、報酬、責任範囲、成果物、解除などの共通ルールを定め、個別業務仕様書で以下の内容を定めます。
- 対象となる業務
- 実施スケジュール
- 提出する成果物
- 会議出席の有無
- 修正対応の回数
- 報酬額
- 追加費用の条件
このように分けておくことで、継続的な支援業務にもスポット業務にも対応しやすくなります。
まとめ
ガバナンスコード対応支援契約書は、企業がコーポレートガバナンス・コード対応、内部統制整備、取締役会運営改善、開示資料作成支援などを外部専門家に依頼する際に重要となる契約書です。ガバナンス支援業務は、経営の中枢情報や未公表情報を扱うことが多く、業務範囲や責任範囲が曖昧なまま進めると、後に大きなトラブルにつながる可能性があります。そのため、契約書では、業務内容、資料提供、秘密保持、成果物の権利帰属、報酬、非保証、契約期間、解除条件などを明確に定めることが大切です。特に、受託者が提供するのは助言や支援であり、最終的な経営判断や開示判断は依頼者自身が行うという点を明確にしておく必要があります。ガバナンスコード対応支援契約書を適切に整備することで、依頼者と受託者の認識齟齬を防ぎ、企業統治体制の改善に向けた支援業務を円滑に進めることができます。