制作実績掲載同意書とは?
制作実績掲載同意書とは、制作会社、デザイナー、フリーランス、広告代理店、動画制作者などが、クライアントに納品した成果物を自社サイト、ポートフォリオ、SNS、営業資料などに制作実績として掲載する際に、発注者から事前に同意を得るための書面です。Webサイト制作、ロゴ制作、バナー制作、動画制作、写真撮影、LP制作、ECサイト構築などでは、制作物そのものが受注者の実績として重要な営業資産になります。一方で、発注者側から見ると、制作物の公開によって企業名、ブランド情報、事業内容、未公開情報、個人情報、取引関係などが外部に知られる可能性があります。そのため、制作実績を公開する前に、どの成果物を、どの媒体で、どの範囲まで掲載できるのかを明確にしておくことが重要です。制作実績掲載同意書を作成しておくことで、受注者は安心して実績紹介ができ、発注者も公開範囲を管理しやすくなります。
制作実績掲載同意書が必要となるケース
制作実績掲載同意書は、特に以下のようなケースで必要になります。
- Web制作会社が制作したホームページを自社サイトの実績ページに掲載する場合
- デザイナーが制作したロゴ、バナー、チラシ、LPデザインをポートフォリオに掲載する場合
- フリーランスが納品した制作物をSNSや営業資料で紹介する場合
- 動画制作会社が制作した動画を実績紹介ページやYouTube等で紹介する場合
- 写真撮影、広告制作、コピーライティングなどの成果物を事例として公開する場合
- クライアント名や制作背景を含めた導入事例記事を作成する場合
制作実績の掲載は、受注者にとって新規受注につながる重要な材料です。しかし、発注者の同意なく公開すると、秘密保持義務違反、著作権・商標権・肖像権の問題、取引先との信頼関係悪化などにつながる可能性があります。特に、公開前のWebサイト、未発表の商品、社内向け資料、キャンペーン情報、個人が写っている写真、第三者素材を含むデザインなどは注意が必要です。
制作実績掲載同意書に盛り込むべき主な条項
制作実績掲載同意書には、以下のような条項を入れておくと実務上使いやすくなります。
- 目的
- 対象成果物
- 掲載を許可する媒体
- 掲載できる情報の範囲
- 掲載してはならない情報
- 公開時期
- 掲載内容の修正・削除
- 掲載停止請求
- 知的財産権の帰属
- 第三者の権利侵害防止
- 損害賠償
- 協議事項
単に「制作実績として掲載してよい」とだけ書くのではなく、掲載媒体、掲載範囲、公開時期、削除対応まで整理しておくことがポイントです。
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 目的条項
目的条項では、この同意書が何のために作成されるのかを明確にします。制作実績掲載同意書の場合は、受注者が制作した成果物を、営業活動、広報活動、採用活動、ポートフォリオ掲載などに利用することを目的として定めます。ここで目的を明確にしておくことで、受注者が同意の範囲を超えて成果物を利用することを防ぎやすくなります。たとえば、制作実績としての掲載は認めるが、広告素材として大々的に利用することまでは認めない、という整理も可能です。
2. 対象成果物条項
対象成果物条項では、どの制作物を掲載対象とするのかを定めます。対象となるものには、Webサイト、LP、ECサイト、バナー、ロゴ、動画、写真、イラスト、記事、コピー、パンフレット、SNS投稿用クリエイティブなどがあります。実務上は、対象成果物を広く列挙したうえで、個別の案件名やURL、納品物名を記載できる欄を設けると便利です。特定の成果物だけ掲載を認める場合は、「〇〇サイトのトップページデザインのみ」など、具体的に記載しておくとトラブル防止になります。
3. 掲載媒体条項
掲載媒体条項では、どの場所に制作実績を掲載できるのかを定めます。代表的な掲載媒体は以下のとおりです。
- 自社Webサイト
- ポートフォリオサイト
- Instagram、X、Facebook、TikTokなどのSNS
- 営業資料
- 提案資料
- 採用資料
- セミナー資料
- プレスリリース
特にSNSは拡散性が高いため、発注者側が慎重になることがあります。その場合は、「SNS掲載は別途承認を得る」「営業資料への掲載のみ認める」など、媒体ごとに可否を分けるのが実務的です。
4. 掲載できる情報の範囲
掲載できる情報の範囲では、制作実績としてどこまで情報を出せるのかを定めます。たとえば、以下のような情報が対象になります。
- 成果物の画像やスクリーンショット
- 制作物の概要
- 制作担当範囲
- 使用技術や制作手法
- 制作期間
- 公開済みURL
- クライアント名
- 業種や課題解決の内容
クライアント名を出せるかどうかは、実績紹介の効果に大きく関わります。一方で、発注者側の事情により社名掲載が難しい場合もあります。その場合は、「大手美容系企業」「関西エリアの不動産会社」など匿名表記にする方法もあります。
5. 非公開情報の取扱い条項
非公開情報の取扱いは、制作実績掲載同意書の中でも重要な条項です。制作過程では、発注者の事業戦略、売上情報、広告予算、ターゲット情報、未公開サービス、社内資料、顧客情報などに触れることがあります。これらを制作実績として掲載してしまうと、秘密保持義務違反や信用低下につながる可能性があります。そのため、秘密情報、個人情報、未公開情報、第三者との契約で公開制限がある情報、法令に反する情報などは掲載禁止と明記しておく必要があります。
6. 公開時期条項
公開時期条項では、いつから制作実績として掲載できるのかを定めます。一般的には、納品後すぐではなく、発注者側での公開後に制作実績として掲載する形が安全です。WebサイトやLPの場合、正式公開前に制作会社が先に実績紹介してしまうと、発表前情報が外部に漏れる可能性があります。そのため、「成果物の一般公開後に掲載できる」と定めるのが実務上おすすめです。公開予定日が決まっている場合は、具体的な日付を記載しておくとより明確です。
7. 修正・削除条項
修正・削除条項では、掲載内容に誤りがあった場合や、発注者側に合理的な理由がある場合に、修正や削除を求められることを定めます。たとえば、会社名の表記ミス、実績内容の誤記、公開してはいけない情報の掲載、ブランドガイドラインに反する表現などがある場合、発注者が修正を求められるようにしておく必要があります。ただし、受注者側にも運用上の都合があるため、「合理的な期間内に対応する」としておくとバランスが取れます。
8. 掲載停止条項
掲載停止条項では、発注者が後から掲載停止を求めることができる条件を定めます。たとえば、以下のようなケースがあります。
- ブランド方針が変更された場合
- サイトやサービスが終了した場合
- 取引関係を非公開にしたい事情が生じた場合
- 掲載内容が現在の事業内容と合わなくなった場合
- 第三者から権利侵害の指摘を受けた場合
掲載停止請求に対応する条項がないと、発注者と受注者の間で「削除してほしい」「すでに同意を得ている」という対立が起こりやすくなります。事前に対応ルールを定めておくことが重要です。
9. 知的財産権条項
制作実績掲載同意書は、あくまで制作実績として掲載することへの同意を定める書面です。著作権や商標権などの知的財産権を移転する契約ではありません。そのため、「本同意書は知的財産権の帰属を変更するものではない」と明記しておく必要があります。著作権の帰属、利用許諾、二次利用、改変の可否などは、別途締結している制作契約書や著作権譲渡契約書で定めるのが通常です。制作実績掲載同意書と制作契約書の内容が矛盾しないように注意しましょう。
10. 第三者の権利に関する条項
制作物には、第三者の写真素材、フォント、イラスト、音楽、動画素材、モデル画像、商標などが含まれることがあります。制作物自体の納品には問題がなくても、制作実績として再掲載することで、素材ライセンスや肖像権の範囲を超えてしまう場合があります。たとえば、有料写真素材のライセンスがクライアントサイトでの利用に限定されている場合、制作会社のポートフォリオへの掲載は別途許諾が必要になることがあります。そのため、第三者の権利を侵害しないよう配慮する条項を入れておくことが重要です。
制作実績掲載同意書を作成する際の注意点
クライアント名の掲載可否を明確にする
制作実績では、クライアント名を掲載できるかどうかが大きなポイントになります。社名を出せる場合は実績としての信頼性が高まりますが、発注者によっては取引先情報を公開したくない場合もあります。そのため、社名掲載可、匿名掲載のみ可、業種表記のみ可など、掲載レベルを選べる形にしておくと実務で使いやすくなります。
SNS掲載の可否を分けておく
SNSは拡散されやすく、後から完全に削除することが難しい場合があります。Webサイト掲載は認めるが、SNS掲載は認めないという発注者も少なくありません。そのため、掲載媒体を一括で許諾するのではなく、Webサイト、SNS、営業資料、採用資料などに分けて確認できるようにしておくと安心です。
公開前案件は掲載しない
納品済みであっても、発注者側でまだ公開していない成果物を制作実績として掲載するのは避けるべきです。
特に、新商品、キャンペーンサイト、採用サイト、ブランドリニューアル、サービス立ち上げなどは、公開タイミングが重要です。制作実績の掲載は、原則として発注者による正式公開後に行うのが安全です。
秘密保持契約との整合性を確認する
別途、秘密保持契約書や業務委託契約書を締結している場合、制作実績掲載同意書の内容がそれらと矛盾しないようにする必要があります。たとえば、業務委託契約書で「本契約に関する事実を第三者に開示してはならない」と定めている場合、制作実績として取引先名を掲載することが制限される可能性があります。このような場合は、制作実績掲載同意書で「制作実績として掲載する範囲に限り、発注者は掲載を許諾する」と明記しておくと整理しやすくなります。
掲載停止時の対応期限を決めておく
掲載停止請求があった場合、いつまでに削除するのかを決めておくことも大切です。たとえば、「請求を受けてから10営業日以内」などの目安を設けると、双方にとって対応が明確になります。ただし、印刷済みの営業資料や既に配布された資料など、すぐに回収できないものについては例外を設けておくと現実的です。
制作実績掲載同意書を使うメリット
制作実績掲載同意書を使うメリットは、受注者側と発注者側の双方にあります。受注者側にとっては、制作実績を安心して公開できる点が大きなメリットです。実績紹介は新規顧客からの信頼獲得につながり、営業活動や採用活動にも活用できます。一方、発注者側にとっては、公開される情報の範囲を事前に確認できるメリットがあります。秘密情報や未公開情報が勝手に掲載されるリスクを抑えられ、ブランドイメージの管理もしやすくなります。つまり、制作実績掲載同意書は、受注者の実績活用と発注者の情報管理を両立させるための書面です。
制作実績掲載同意書とポートフォリオ掲載許諾の違い
制作実績掲載同意書と似た書類に、ポートフォリオ掲載許諾書があります。ポートフォリオ掲載許諾書は、主にデザイナーやクリエイターが自身の作品集に成果物を掲載するための許諾書です。一方、制作実績掲載同意書は、Webサイト、SNS、営業資料、採用資料、セミナー資料など、より広い媒体での実績公開を想定することが多いです。どちらも目的は近いですが、制作実績掲載同意書の方が、法人や制作会社の営業活動全般に使いやすい形式といえます。
まとめ
制作実績掲載同意書は、制作会社やフリーランスが納品した成果物を実績として公開する際に、発注者から事前に同意を得るための重要な書面です。Webサイト、デザイン、動画、写真、広告クリエイティブなどの制作物は、受注者にとって大切な営業資産です。しかし、発注者の同意なく公開すると、秘密情報の漏えい、権利侵害、ブランド毀損、取引関係の悪化といったトラブルにつながる可能性があります。そのため、対象成果物、掲載媒体、掲載できる情報、非公開情報、公開時期、修正・削除、掲載停止、知的財産権の帰属などを明確に定めた制作実績掲載同意書を用意しておくことが大切です。制作実績の公開は、受注者にとって信頼獲得の大きな武器になります。だからこそ、発注者との合意を丁寧に残し、安心して活用できる状態を整えておくことが重要です。