紙で締結・受領した契約書は、スキャンしてPDFなどの電子データとして管理することができます。
ただし、社内で検索しやすくするために紙の契約書をPDF化することと、税務上保存が必要な紙の契約書を電子データの保存に置き換える「スキャナ保存」は分けて考える必要があります。
電子帳簿保存法上のスキャナ保存として紙の原本に代えて電子データを保存する場合は、読み取り方法、改ざん防止、検索、表示など一定の要件を満たす必要があります。
紙の契約書をスキャンして保存する基本的な流れ
- 電子保存する契約書を確認する
- 原本の全ページをスキャンする
- 紙とスキャンデータが同じ内容か確認する
- 必要な改ざん防止措置を行う
- 検索・表示できる状態で保存する
- 契約書と関連情報を整理する
- 原本を廃棄できるか確認する
法的に安心・送信コスト0円・契約相手はログイン不要
マイサイン(mysign)はフリープランでも機能が充実!
まず「PDF化」と「スキャナ保存」の違いを確認する
紙の契約書をスキャンする目的によって、必要な対応は変わります。
| 目的 | 考え方 |
|---|---|
| 社内で閲覧・検索しやすくする | 紙の原本を残しながら、PDFなどを管理用データとして利用する |
| 紙の保存に代えて電子保存する | 電子帳簿保存法上のスキャナ保存に該当する場合は、定められた要件を満たして保存する |
単に複合機でPDFを作成してパソコンへ保存しただけでは、税務上必要な紙の保存を当然に電子データへ置き換えられるわけではありません。
税務上保存義務のある契約書について紙の保存に代えて電子データを保存する場合は、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を確認してください。
一方、税務上必要な紙の原本を廃棄し、スキャンデータを正式な保存データとして扱う場合は、スキャナ保存の要件を満たしているか確認することが重要です。
紙の契約書はスキャナ保存の対象になる
電子帳簿保存法では、国税に関する法律によって保存が必要となる国税関係書類について、一定の要件のもとで紙の保存に代えてスキャンデータを保存できる制度が設けられています。
契約書は、国税庁が示すスキャナ保存の区分では「重要書類」に含まれます。
なお、棚卸表、貸借対照表、損益計算書などの決算関係書類はスキャナ保存の対象外とされています。
また、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、スキャナ保存を開始するために事前に税務署長の承認を受ける制度は廃止されています。
1.電子保存する契約書を確認する
最初に、どの契約書をスキャナ保存するのかを整理します。
契約書本体だけではなく、契約内容の一部となっている別紙や仕様書、料金表などがある場合は、それらも含めて確認します。
スキャン前に確認したいもの
- 契約書の全ページが揃っている
- 署名・押印部分が確認できる
- 契約書に添付された別紙が揃っている
- 仕様書・料金表など契約の一部となる資料を確認した
- 変更契約書・覚書がある場合は別途管理する
- 両面印刷の場合は裏面にも記載がないか確認した
ページの抜けや裏面の読み取り忘れがある状態で原本を廃棄すると、後から契約内容を完全に確認できなくなる可能性があります。
2.契約書を必要な品質でスキャンする
電子帳簿保存法上のスキャナ保存では、一定水準以上の品質で読み取る必要があります。
現在のスキャナ保存の要件では、契約書などの重要書類について、200dpi以上の解像度で読み取る必要があります。
また、重要書類は赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラー画像で読み取ることが求められます。
令和6年1月1日以後に保存する国税関係書類については、読み取り時の解像度・階調・書類の大きさに関する情報そのものを保存しておく要件は廃止されていますが、必要な品質で読み取る要件自体がなくなったわけではありません。
スキャン後に確認するポイント
- 文字が読み取れる
- 署名・押印が確認できる
- ページの端が切れていない
- 折れ・影などで内容が隠れていない
- 裏面を含め必要なページがすべて入っている
- ページ順が正しい
国税庁は、スキャンデータについて紙原本と同程度に明瞭な状態で表示・出力できることなどを求めています。
3.紙の原本とスキャンデータを比較する
スキャンが終わったら、元の紙の契約書と電子データを比較します。
契約書の内容がすべて読み取られているか、ページの欠落や折れ曲がりによる読み取りミスがないか確認してください。
国税庁では、令和4年1月1日以後に保存する国税関係書類について、一定の場合を除き、スキャン後に紙とデータの最低限の同等確認を行えば、紙を即時に廃棄することが可能としています。
ただし、入力期間を過ぎてしまった場合などには、スキャンデータと合わせて紙の原本を保存しなければならないことがあります。
全ページ、署名・押印、添付書類まで正しく読み取られていることを確認し、スキャナ保存の要件を満たしているかを確認してから原本の扱いを判断します。
4.入力期間を確認する
契約書などの重要書類をスキャナ保存する場合は、受領・作成後の一定期間内に入力を完了する必要があります。
単にスキャンしてPDFファイルを作成しただけで入力が完了するとは限りません。
国税庁では、入力期間内に、タイムスタンプを付した状態、または訂正・削除の履歴などを確認できる一定のシステムへ格納した状態にする必要があるとしています。
業務処理のサイクルに沿って入力する方法を採用する場合、その通常の業務処理期間は最長2か月とされ、そこからおおむね7営業日以内に入力する考え方となります。
実際にスキャナ保存を運用するときは、担当者によって処理時期が変わらないよう、契約書を受け取ってから保存までの社内手順を決めておくと管理しやすくなります。
5.改ざん防止のための要件を確認する
スキャナ保存では、保存した電子データが後から勝手に書き換えられないことや、訂正・削除を行った場合にその事実を確認できることが重要です。
代表的には、タイムスタンプを利用する方法があります。
また、入力期間内に保存したことを確認でき、訂正・削除の履歴を確認できるシステムや、そもそも訂正・削除できない一定のシステムを利用することで、タイムスタンプの付与に代えることができる場合があります。
確認したい内容
- タイムスタンプを利用するのか
- 保存システムで入力日時を確認できるか
- データを訂正・削除した履歴を確認できるか
- 訂正・削除できない仕組みになっているか
- 保存後に元データを自由に上書きできないか
単なる共有フォルダへPDFを保存するだけでは、必要な要件を満たせない場合があります。利用する保存方法やシステムがスキャナ保存の要件に対応しているか確認してください。
6.契約書を検索できるようにする
スキャナ保存した電子データは、後から必要な書類を検索できる状態にしておく必要があります。
スキャナ保存の検索要件では、基本となる検索項目として、次の情報が挙げられています。
- 取引年月日その他の日付
- 取引金額
- 取引先
契約管理の実務では、これらに加えて契約書名、契約開始日、契約終了日なども管理しておくと探しやすくなります。
ファイル名も統一しておく
契約書を電子化するときは、ファイル名の付け方も統一しておくと管理しやすくなります。
例えば、次のような形式が考えられます。
2026-08-01_株式会社○○_業務委託契約書.pdf
「契約書.pdf」「スキャン001.pdf」などの名前だけでは、契約数が増えたときに目的の契約書を見つけにくくなります。
7.契約書と帳簿との関連も確認する
契約書はスキャナ保存上の重要書類に該当するため、スキャン文書と関連する国税関係帳簿の記録事項との間で、相互に関連性を確認できるようにしておく必要があります。
具体的な管理方法は利用する会計・文書管理システムなどによって異なりますが、どの取引・帳簿記録に関係する契約書なのか追える状態にしておくことが重要です。
電子保存した契約書は必要な期間保管する
紙から電子データへ変更しても、契約書そのものの保存期間が短くなるわけではありません。
スキャナ保存したデータについても、法人税法や所得税法など、それぞれの法律で定められた保存期間に従って保存する必要があります。
法人の場合、取引に関して作成・受領した契約書などは原則として7年間保存する必要があります。一定の事業年度では10年間となる場合があります。
個人事業者の場合は、契約書などの書類について原則5年間となるものがあります。
保存期間については、契約書ごとに事業形態や対象となる法令を確認してください。
バックアップも用意しておく
スキャナ保存のバックアップデータは、電子帳簿保存法上の必須要件とはされていません。
ただし、契約書は長期間保管することが多いため、端末故障、誤削除、サービス障害などでデータを失わないようバックアップを用意しておくことが実務上重要です。
クラウドストレージなどを利用する場合も、サービスを解約したときにデータを取り出せるか、バックアップや復旧の仕組みがあるかを確認しておきましょう。
元が電子データの契約書はスキャン保存とは別
注意したいのが、もともとメール、クラウドサービス、電子契約などで電子データとして受け取った契約書です。
電子取引で受け取った契約データを一度紙へ印刷し、その紙をスキャンして「スキャナ保存」に置き換えることは、電子帳簿保存法上認められていません。
電子データとして授受した契約書などの取引情報については、電子取引データとして元の電子データを保存する必要があります。
紙で受け取ったものはスキャナ保存の対象になり得ますが、電子取引で受け取ったデータは、その電子データ自体を保存することが基本です。
紙の契約書を廃棄する前のチェックリスト
- 契約書の全ページをスキャンした
- 裏面に記載がないか確認した
- 署名・押印部分を明瞭に確認できる
- 別紙・仕様書など必要な書類も揃っている
- 200dpi以上など必要な読み取り要件を満たしている
- 紙とスキャンデータが同じ内容であることを確認した
- 入力期間内に必要な保存処理を行った
- タイムスタンプまたは一定のシステムによる改ざん防止要件を確認した
- 訂正・削除履歴を確認できる状態になっている
- 必要な項目から検索できる
- 契約書と関連帳簿との関係を確認できる
- 必要な保存期間を確認した
- 税務以外に原本を残す必要がないか確認した
よくある質問
契約書をPDFにすれば紙の原本は捨てられますか?
単にPDF化しただけで、税務上必要な紙の保存を電子データへ置き換えられるとは限りません。
国税関係書類に該当する契約書について紙の保存に代えて電子データを保存する場合は、電子帳簿保存法上のスキャナ保存の要件を満たす必要があります。
要件を満たしてスキャンし、紙との同等確認を行った場合には、一定の場合を除き紙の原本を廃棄できる取扱いがあります。ただし、税務以外の理由で原本保管が必要になる場合もあるため、廃棄前に個別に確認してください。
スキャンはスマートフォンでもできますか?
電子帳簿保存法上の「スキャナ」は、一般的なスキャナや複合機だけに限定されているわけではなく、要件を満たす場合にはスマートフォンやデジタルカメラなども利用できます。
ただし、契約書について必要な解像度やカラー画像、明瞭な表示などの要件を満たす必要があります。
白黒PDFでもよいですか?
契約書は重要書類に該当するため、電子帳簿保存法上のスキャナ保存として保存する場合は、原則として赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラー画像による読み取りが必要です。
一般書類についてはグレースケールで保存できる場合がありますが、契約書とは区分して確認してください。
タイムスタンプは必ず必要ですか?
必ずタイムスタンプを利用しなければならないとは限りません。
入力期間内に保存されたことを確認でき、訂正・削除履歴を確認できる一定のシステムなどを利用することで、タイムスタンプの付与に代えられる場合があります。
過去の契約書もまとめて電子化できますか?
現在スキャナ保存を適用している場合でも、その適用前に作成・受領した過去分の重要書類については、通常の新規書類とは異なる手続きがあります。
過去分重要書類をスキャナ保存する場合は、所轄税務署長等への適用届出書や、保存に関する事務手続を明らかにした書類などが必要となるため、国税庁の最新案内を確認してください。
紙の契約書を電子保存するときのポイント
紙の契約書を電子化するときは、単にスキャンしてPDFを作るだけではなく、何のために電子化するのかを最初に決めることが重要です。
- 紙の原本を残す管理用PDFなのか確認する
- スキャナ保存を利用する場合は対象書類を確認する
- 必要な品質で全ページを読み取る
- 紙と電子データを比較する
- 入力期間・改ざん防止要件を確認する
- 検索・表示できる状態で保存する
- 原本を廃棄できる条件を確認する
原本を廃棄する予定がある場合は、特に慎重に要件を確認し、必要に応じて税理士や所轄の税務署などへ確認してください。
今後の契約を最初から電子化する方法
すでに紙で締結した契約書はスキャンによる電子化が必要になりますが、今後締結する契約については、最初から電子契約を利用する方法もあります。
マイサイン(mysign)では、PDFの契約書をアップロードして契約相手へ署名を依頼できます。契約相手はマイサインへの会員登録やログインをする必要がなく、案内からスマートフォンやパソコンで契約内容を確認し、署名・同意できます。
紙の契約書を後からスキャンする方法と、新しい契約を最初から電子契約で締結する方法を分けて考えると、既存契約の整理と今後の契約手続きの電子化を進めやすくなります。
法的に安心・送信コスト0円・契約相手はログイン不要
マイサイン(mysign)はフリープランでも機能が充実!