契約書を管理・トラブル対応する 公開日:2026年8月13日 更新日:2026年8月13日

契約書を相手が返送してくれない場合の確認と対応方法

契約書を相手が返送してくれない場合の確認と対応方法

契約書を相手方へ送ったものの、いつまで待っても署名・押印済みの契約書が返送されないことがあります。

この場合は、すぐに「契約は成立していない」「相手に契約する意思がない」と判断するのではなく、契約書が相手方へ届いているか、署名・押印等が済んでいるか、そもそも契約がどの時点で成立する取り決めになっているかを順番に確認することが重要です。

契約書の返送が遅れているだけの場合もあれば、担当者が確認中、社内承認待ち、書類の紛失、契約条件について再確認したい事項があるなど、さまざまな理由が考えられます。

契約書が返送されない場合の基本的な流れ

  1. 契約書の発送・送付状況を確認する
  2. 契約成立の条件を確認する
  3. 相手方へ受領・手続き状況を確認する
  4. 必要に応じて返送期限を伝える
  5. 紛失等の場合は契約書を再送する
  6. 返送されない場合は今後の対応を判断する
  7. やり取りを記録として残す
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目次

契約書が返送されないだけでは契約成立の有無を判断できない

契約書を送ったのに返送されない場合、最初に注意したいのが「契約書が戻ってきていないから契約は成立していない」と一律に判断しないことです。

民法第522条では、契約内容を示した申込みに対して相手方が承諾したときに契約が成立することを基本としています。また、法令に特別の定めがある場合を除き、契約成立のために書面の作成その他の方式を必要としないことが原則です。

経済産業省の「押印に関するQ&A」でも、私法上の契約は当事者の意思の合致によって成立し、特段の定めがある場合を除いて、書面の作成や押印自体が必要な要件とはされていないことが示されています。

そのため、契約書の返送前にメールなどで明確に契約条件へ合意している場合など、返送状況だけでは契約成立の有無を判断できないケースがあります。

「契約書の返送」と「契約の成立」は分けて確認しましょう。
契約書に特別な成立条件が記載されている場合や、契約・取引の種類について法令上特別な方式が必要な場合もあります。まず契約書とこれまでの合意内容を確認してください。

1.まず契約書をいつ・どのように送ったか確認する

返送を依頼する前に、自社側の送付状況を確認します。

確認しておきたい項目

  • 契約書を発送した日
  • 郵送・宅配便などの送付方法
  • 送付先の会社名・部署・担当者
  • 追跡番号や配達記録
  • 契約書を何通送ったか
  • 相手方へ返送してもらう通数
  • 返信用封筒を同封したか
  • 返送期限を伝えていたか

追跡可能な方法で送っている場合は、まず相手方へ配達済みになっているか確認します。

送付先の部署や担当者を間違えていた場合や、担当者の異動・不在によって社内で止まっている場合もあります。

2.契約書上の「成立時点」を確認する

次に、契約書に契約成立や効力発生についてどのように記載されているか確認します。

例えば、契約書によっては、双方の署名・押印、契約締結日、別途定めた効力発生日などと契約開始の関係が記載されている場合があります。

確認したい記載

  • 契約締結に関する条項
  • 契約開始日・効力発生日
  • 双方の署名・押印に関する記載
  • 契約書を何通作成するかという記載
  • 双方が何通ずつ保管するかという記載
  • 契約締結前に必要な承認・手続き

特に、契約書や当事者間の取り決めで「双方が署名した時点」など契約成立に関する条件を明確に設けている場合は、その内容を確認する必要があります。

反対に、契約書を返送してもらうことが単に双方の保管用原本を確保するための手続きである場合は、返送されていないという事実だけから契約成立の有無を判断することはできません。

3.相手方が署名・押印しているか確認する

契約書が返送されない場合は、相手方がまだ手続きを行っていないのか、すでに署名・押印済みなのに返送だけが遅れているのかを確認します。

現在の状況 主な対応
契約書自体を受け取っていない 送付先・配送状況を確認し、必要に応じて再送する
受領済みだが社内確認中 確認状況と完了予定日を確認する
まだ署名・押印していない 手続き予定日と返送予定日を確認する
署名・押印済みだが未返送 返送予定日を確認し、必要に応じて先にスキャンデータ等を送ってもらう
契約書を紛失した 旧書類の扱いを確認したうえで新しい契約書を再送する
契約条件について確認事項がある 返送を催促する前に契約内容について協議する

返送されない理由によって必要な対応は異なるため、最初から単なる「返送忘れ」と決めつけないことが大切です。

4.まずは相手方へ受領・確認状況を問い合わせる

契約書が届いていることを確認できても返送されない場合は、相手方の担当者へ連絡します。

最初の連絡では強く催促するのではなく、契約書を受領しているか、現在どの段階まで手続きが進んでいるのかを確認するとよいでしょう。

確認したい内容

  • 契約書を受領しているか
  • 契約内容の確認が完了しているか
  • 社内承認が完了しているか
  • 署名・押印等が済んでいるか
  • 返送予定日はいつか
  • 契約内容について不明点がないか

相手方で契約書の内容について確認事項が残っている場合は、単純に返送を求めるのではなく、その問題を解消してから締結手続きを進めます。

返送期限を決めていた場合は期限を確認する

契約書を送付するときに「○月○日までにご返送ください」など返送期限を伝えていた場合は、その期限を過ぎているか確認します。

期限前であれば、相手方が社内手続きを進めている途中かもしれません。特に会社同士の契約では、法務確認、上長承認、押印申請などに時間がかかる場合があります。

一方、すでに期限を過ぎている場合は、期限を過ぎていることを伝えたうえで返送予定日を確認します。

返送期限を決めていなかった場合は、「○月○日頃までにご返送いただけますでしょうか」など、新しい目安を示して確認するとやり取りを進めやすくなります。

契約書の返送について法律上共通の「○日以内」という期限があるわけではありません。
契約書や当事者間で決めた期限、業務開始日、社内手続きに必要な期間などを考慮し、具体的な返送予定日を確認しましょう。

署名・押印済みなら先にPDFを送ってもらう方法もある

相手方ではすでに署名・押印を完了しているものの、郵送手続きだけが遅れている場合があります。

契約手続きの進捗を確認する目的で、署名・押印済み契約書をスキャンしたPDFなどを先に送ってもらい、原本は改めて郵送してもらう方法も考えられます。

ただし、スキャンデータを受け取ったからといって、契約書の原本を双方が保管する予定だった場合に原本の返送が不要になるとは限りません。

原本を1通ずつ保管する取り決めであれば、PDFによる確認と紙の原本の返送を分けて管理します。

5.契約書を紛失したと言われた場合は再送する

相手方が契約書を紛失してしまった場合は、同じ契約書をそのまま探し続けてもらうだけでなく、必要に応じて新しい契約書を再送します。

ただし、新しい契約書を送る前に、紛失した契約書が後から見つかった場合に誤って使用されないよう、旧契約書の扱いについて相手方と確認しておくことが重要です。

再送するときに確認すること

  • 送る契約書が正しい最終版か
  • 契約条件に変更がないか
  • 契約書の部数
  • 双方が改めて署名・押印する必要があるか
  • 契約締結日をどのように扱うか
  • 契約の効力発生日をどのように扱うか
  • 旧契約書が見つかった場合の扱い

過去に作成した原本をそのまま復元したかのように扱うのではなく、再作成・再締結する場合は実際の手続き日と契約の効力発生日との関係を確認してください。

自社が2通とも送って1通が戻ってこない場合

紙の契約書では、同じ契約書を2通作成し、双方が署名・押印等を行った後、1通ずつ保管する方法があります。

自社が2通とも相手方へ送り、「2通とも署名・押印後、1通をご返送ください」としていたにもかかわらず返送されない場合は、相手方が2通とも保管してしまっている可能性もあります。

この場合は、新しく契約書を作成する前に、相手方が2通とも保管していないか確認してください。

2通とも相手方に残っているのであれば、そのうち自社保管分の1通を返送してもらいます。

6.何度確認しても返送されない場合の対応

一度連絡しても返送されない場合は、改めて書面やメールなど記録が残る方法で連絡します。

その際は、単に「早く返してください」と伝えるのではなく、対象となる契約書と返送を希望する期限を明確にします。

再度確認するときに整理する内容

  • 契約書の名称
  • 契約書を送付した日
  • これまで確認した日
  • 現在把握している手続き状況
  • 返送してほしい契約書の通数
  • 返送を希望する期限
  • 契約内容について問題があれば連絡してほしいこと

このやり取りも契約に関する記録として保存しておきます。

返送されないまま業務を開始してよいかは慎重に判断する

契約書の返送前に業務開始日が近づいている場合、「契約書はまだ戻っていないが仕事を始めてもよいのか」という問題が生じます。

この場合も、返送の有無だけで判断することは避けます。

すでに契約条件について双方が明確に合意しているのか、契約書上の成立条件はどうなっているのか、相手方の社内承認は済んでいるのかなどを確認します。

特に契約金額、業務範囲、納期など重要な条件について確認が残っている場合は、契約内容が曖昧なまま業務を始めると後からトラブルになる可能性があります。

業務を開始する前に、少なくとも現在の契約状況と双方が合意している条件を確認しておくことが重要です。

返送がないことを理由に一方的に「契約なし」と判断しない

相手方から契約書が返送されない状態が長く続いても、それだけを理由に「この契約はなかったことにする」と判断できるとは限りません。

すでにメールなどで申込みと承諾が行われている場合や、取引が開始されている場合など、契約が成立している可能性も考慮する必要があります。

一方、双方の署名などを契約成立の条件として明確に定めている場合や、契約条件についてまだ合意していない場合は事情が異なります。

今後取引を行わない判断をする場合も、まず契約が成立しているかを確認し、成立済みの契約であれば契約書の解除・解約条件などに従って対応する必要があります。

契約成立の有無について当事者間で認識が違う場合や、取引金額が大きい場合には、弁護士などの専門家へ確認することも検討してください。

相手方とのやり取りは保存しておく

契約書が返送されない場合は、送付から返送までの記録を残しておきます。

保存しておきたい記録

  • 送付した契約書のデータ
  • 発送日
  • 配送記録・追跡番号
  • 送付状
  • 契約書を送付したメール
  • 受領確認のメール
  • 返送を依頼したメール
  • 相手方からの回答
  • 電話で確認した日時・内容
  • 再送した場合の記録

後から「契約書を送った・受け取っていない」といった認識違いが生じた場合にも、これまでの経緯を確認しやすくなります。

郵送による返送を減らすなら電子契約も選択肢になる

紙の契約書では、印刷、署名・押印、郵送、返送という手続きが必要になるため、どこで手続きが止まっているのか分かりにくくなることがあります。

今後の契約については、電子契約を利用し、契約書の確認から署名・同意までをオンラインで進める方法もあります。

ただし、契約や取引の種類によって書面の作成・交付方法などについて特別なルールがある場合は、対象となる契約を電子化できるか確認してください。

契約書が返送されない場合のチェックリスト

  • 契約書を送付した日を確認した
  • 正しい相手・担当者へ送っている
  • 配送状況を確認した
  • 契約書が相手方へ届いている
  • 契約成立に関する契約書の記載を確認した
  • 相手方の署名・押印等が済んでいるか確認した
  • 社内承認中ではないか確認した
  • 契約条件について未解決の問題がないか確認した
  • 具体的な返送予定日を確認した
  • 紛失の場合は正しい最終版を再送した
  • 再度連絡するときは期限を明確にした
  • 送付・確認・返送依頼の記録を保存した

よくある質問

契約書を返送してくれない場合、契約は成立していませんか?

契約書が返送されていないという事実だけでは判断できません。

一般的な契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、申込みと承諾によって成立することが原則です。

契約書に特別な成立条件があるか、すでにメールなどで契約条件について合意しているかなどを確認してください。

相手が署名・押印したと言っていますが原本が届きません。どうすればよいですか?

まず返送予定日と発送状況を確認します。

必要に応じて、手続きが完了していることを確認するために署名・押印済み契約書のスキャンデータなどを先に送ってもらい、原本は別途返送してもらう方法も考えられます。

契約書を相手がなくした場合はどうしますか?

必要に応じて正しい最終版を再送します。

ただし、紛失した契約書が後から見つかった場合に誤って使用されないよう、旧書類の取扱いも双方で確認しておきましょう。

返送期限は何日くらいにすればよいですか?

一般的な契約書について、法律上一律の返送期限が設けられているわけではありません。

相手方の社内確認に必要な期間や契約開始日などを考慮し、双方が対応できる期限を設定します。

何度連絡しても返送してくれない場合は契約をキャンセルできますか?

返送されないことだけを理由に一律に契約をキャンセルできるとは限りません。

すでに契約が成立している場合は、契約書に定められた解除・解約条件などを確認する必要があります。

契約成立の有無そのものが不明確な場合は、これまでの申込み・承諾の経緯などを整理し、必要に応じて専門家へ確認してください。

相手から契約書が返ってくる前に仕事を始めてもよいですか?

契約書の返送の有無だけでは判断できません。

契約条件について双方が合意しているか、契約成立の条件を満たしているか、金額・業務範囲・納期などに未確認事項がないかを確認してから判断してください。

契約書が返送されない場合の対応をまとめると

契約書を送ったのに相手方から返送されない場合は、すぐに契約不成立と判断するのではなく、契約書の送付状況・相手方の手続き状況・契約成立の条件を順番に確認することが重要です。

  1. 契約書の発送・到着状況を確認する
  2. 契約書上の成立条件を確認する
  3. 相手方の署名・押印状況を確認する
  4. 返送予定日を確認する
  5. 必要に応じて返送期限を伝える
  6. 紛失している場合は正しい契約書を再送する
  7. 返送されない状態が続く場合は契約成立の有無を確認して今後の対応を判断する

特に契約書が返送されないまま業務開始日を迎える場合は、契約条件が曖昧な状態で取引を開始しないよう、双方の合意状況を確認しておきましょう。

契約書の郵送・返送をオンライン化する方法

紙の契約書では、契約書を2通用意し、相手方へ郵送して署名・押印等をしてもらい、そのうち1通を返送してもらうといった手続きが発生します。

マイサイン(mysign)では、PDFの契約書をアップロードし、契約相手へオンラインで署名を依頼できます。契約相手はマイサインへの会員登録やログインをする必要がなく、受け取った案内からスマートフォンやパソコンで契約内容を確認し、署名・同意できます。

郵送による契約書の往復が多く、返送待ちや書類の紛失が課題になっている場合は、対象となる契約について電子化できるか確認したうえで、電子契約を利用する方法も検討できます。

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