契約を締結した後に、相手方が代金を支払わない、納期を守らない、契約どおりの業務を行わないなど、契約内容が守られないことがあります。
このような場合は、すぐに契約解除や損害賠償を主張するのではなく、まず契約書と実際の状況を照らし合わせ、何が履行されていないのか、期限は到来しているのか、相手方にどのような対応を求めるのかを整理することが重要です。
契約違反への対応は、違反の内容や程度、契約書の定め、相手方の対応などによって変わります。このページでは、契約相手が契約内容を守らないときの確認から連絡、履行の請求、解除などを検討するまでの基本的な進め方を解説します。
契約内容が守られない場合の基本的な流れ
- 契約書と合意内容を確認する
- 何が履行されていないのか整理する
- メール・請求書などの記録を保存する
- 相手方へ状況を確認する
- 必要に応じて期限を示して履行を求める
- 改善されない場合の対応を検討する
- 重要な問題は専門家への相談も検討する
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契約を守っていないかは契約書と事実関係から確認する
契約相手の対応に問題があると感じた場合でも、最初から「契約違反」と決めつけず、まず契約書に何が定められているのかを確認します。
例えば、納品が予定より遅れているように見えても、契約書上の納期がまだ到来していなかったり、一定の条件で期限を延長できる条項が設けられていたりする場合があります。
反対に、口頭やメールで追加した条件がある場合は、契約書だけでは現在の合意内容を確認できないこともあります。
感覚的に「約束を守っていない」と判断するのではなく、契約書、覚書、発注書、メールなどを確認し、合意内容と現在の状況を整理します。
1.契約書の該当する条項を確認する
まず、問題となっている内容について契約書にどのような定めがあるかを確認します。
確認しておきたい項目
- 契約相手が行うべき業務・納品内容
- 代金・報酬の支払金額
- 支払期限
- 納期・履行期限
- 契約期間
- 検収・修正に関する条件
- 契約内容を変更する場合の手続き
- 契約違反があった場合の対応
- 契約解除に関する条件
- 損害賠償・違約金に関する条項
- 不可抗力などに関する条項
契約書に解除前の通知方法や是正期間などが定められている場合は、その手続きも確認してください。
また、契約締結後に覚書や変更契約書を取り交わしている場合は、当初の契約書だけではなく、それらを含めて現在の契約内容を確認します。
2.何が守られていないのか具体的に整理する
次に、契約内容と実際の状況を比較して、問題となっている事実を整理します。
| 問題の例 | 確認する内容 |
|---|---|
| 代金を支払わない | 支払金額・支払期限・請求条件を満たしているか |
| 納品されない | 納期が到来しているか、納期変更の合意がないか |
| 契約どおりの業務を行わない | 契約上求められている業務範囲と実際の対応 |
| 成果物の内容が違う | 仕様書・発注内容・検収条件との違い |
| 秘密情報を適切に扱わない | 秘密保持条項の対象・義務・例外 |
| 無断で契約条件を変更した | 変更に関する合意や契約書上の根拠があるか |
「納期が遅い」「仕事が不十分」といった抽象的な整理ではなく、「契約書第○条では8月10日納品となっているが、8月15日時点で未納品」といった形で具体的に整理すると、その後の連絡もしやすくなります。
3.契約書以外の記録も保存する
契約相手への確認や、その後の対応を検討するときは、これまでのやり取りも整理しておきます。
残しておきたい主な記録
- 締結済みの契約書
- 変更契約書・覚書
- 見積書・発注書
- 請求書
- 納品書・検収記録
- メール
- チャットのやり取り
- 相手方からの説明・回答
- 納品された成果物
- 問題が発生した日時や経緯の記録
電話で話した場合も、いつ、誰と、どのような内容を話したのかを記録しておくと、後から経緯を確認しやすくなります。
契約相手との認識が食い違った場合に備え、問題が発生してから慌てて資料を集めるのではなく、契約に関係する記録をまとめて保管しておくことが大切です。
4.まず相手方へ状況を確認する
契約内容と事実関係を整理したら、相手方へ連絡します。
すぐに強い表現で契約解除や損害賠償を伝えるのではなく、まず「現在どのような状況なのか」「いつ対応できるのか」を確認することで解決できる場合もあります。
最初の連絡で伝えたい内容
- 対象となる契約
- 契約書上の該当箇所
- 現在確認している状況
- 対応してほしい内容
- 回答してほしい期限
例えば支払期限を過ぎている場合は、対象となる請求書、支払期限、未入金であることを伝え、入金予定日を確認します。
納品が遅れている場合は、契約上の納期と現在の進行状況を示し、具体的な納品予定日を確認します。
単なる確認と正式な「催告」は分けて考える
相手方へ状況確認のメールを送ることと、契約解除などを見据えて一定期間内の履行を求める「催告」は、目的を分けて考えた方がよい場合があります。
民法第541条では、当事者の一方が債務を履行しない場合、相手方が相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ、原則として契約を解除できると定めています。ただし、その時点の不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微である場合は、この限りではありません。
そのため、解除まで検討している場合は、単なる「早めにお願いします」という連絡だけで済ませず、契約内容や状況に応じて、何をいつまでに履行してほしいのかを明確にすることが重要です。
5.必要に応じて期限を定めて履行を求める
相手方へ確認しても問題が解消されない場合は、契約内容に従った対応を一定の期限までに行うよう求めることを検討します。
例えば、次のような内容を整理して通知します。
- 対象となる契約書
- 履行されていない契約上の義務
- 現在の状況
- 求める対応
- 対応期限
- 期限までに対応がない場合に検討する措置
重要な通知については、後から「いつ、どのような内容を相手へ伝えたのか」を確認できる方法で行うことも検討します。
民法第541条では「相当の期間」を定めた催告が前提となるため、形式的に極端に短い期限を設定すればよいとは限りません。契約内容や履行に必要な作業などを考慮してください。
6.相手が対応しない場合に検討すること
連絡や履行の請求をしても契約相手が対応しない場合は、契約内容や問題の程度に応じて次の対応を検討します。
契約どおりの履行を求める
まだ契約の目的を達成できるのであれば、引き続き契約どおりの支払いや納品、業務の実施などを求めることが考えられます。
必要に応じて、新しい履行期限や対応方法について相手方と協議します。
契約条件を見直す
相手方に履行する意思はあるものの、当初の条件での履行が難しくなっている場合には、双方で合意して契約条件を変更する方法もあります。
例えば、納期を延長する、業務範囲を変更する、支払方法を変更するといった対応です。
条件を変更する場合は、口頭だけで済ませず、変更契約書や覚書などによって、変更した内容を後から確認できるようにしておきましょう。
契約解除を検討する
相手方が契約上の義務を履行せず、催告しても相当期間内に履行されない場合には、民法第541条に基づく解除が問題となることがあります。
また、民法第542条では、債務の全部の履行が不能である場合や、債務者が全部の履行を拒絶する意思を明確に示した場合など、一定の場合には催告をせずに解除できる旨が定められています。
ただし、実際に解除できるかは契約内容、不履行の程度、原因、経緯などによって判断が必要です。
契約書に解除条項がある場合は、その条件や通知方法も合わせて確認してください。
損害賠償を検討する
民法第415条では、債務者が債務の本旨に従った履行をしない場合や履行が不能となった場合、一定の要件のもとで、債権者がそれによって生じた損害の賠償を請求できる旨が定められています。
ただし、契約が守られなかったというだけで、希望する金額をそのまま請求できるわけではありません。
実際にどのような損害が発生したのか、不履行との関係、契約書の損害賠償条項や責任制限などを確認する必要があります。
催告せずにすぐ契約解除できるとは限らない
契約相手が約束を一度守らなかったからといって、どのような場合でも直ちに契約を解除できるわけではありません。
民法第541条による解除では、原則として相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないことが前提となります。
一方、民法第542条では、全部の履行が不能となった場合など、一定の場合について無催告解除が認められています。
また、第541条では、催告期間を経過した時点の不履行が契約や取引上の社会通念に照らして軽微である場合には解除できない旨も定められています。
解除は契約関係に大きな影響を与えるため、判断が難しい場合は一方的に通知する前に専門家へ確認することを検討してください。
自社側に原因がないかも確認する
相手方が履行していないように見える場合でも、自社側の対応が原因となっている可能性も確認します。
例えば、必要な資料を自社が渡していない、仕様を確定していない、確認作業が遅れているなどの事情によって、相手方が業務を進められないことがあります。
自社側で確認したいこと
- 必要な資料を渡しているか
- 契約上必要な協力を行っているか
- 検収・確認を期限内に行っているか
- 途中で条件変更を求めていないか
- 自社の支払いやその他の義務を履行しているか
事実関係を整理するときは、相手方の問題だけでなく、自社側の契約上の義務についても確認しておくことが重要です。
相手が契約違反をしていても独断で対応しない
相手方が契約を守っていない場合でも、自社の判断だけで相手方の財産を処分したり、契約書に根拠のない違約金を請求したりすることは避けます。
また、相手方の契約違反を理由に自社側の支払いや業務を停止できるかどうかについても、契約内容や法律上の要件によって判断が異なります。
契約上予定されていない対応を取る前に、契約書の条項と法的な根拠を確認してください。
やり取りはできるだけ記録に残す
契約相手との問題が長期化した場合には、「いつ、何を伝えたのか」が重要になることがあります。
電話だけで対応していると、後から双方の認識が違ってしまう可能性があります。
電話や対面で協議した場合も、話した内容をメールなどで確認し、相手方から回答を受ける方法も考えられます。
特に記録しておきたい事項
- 問題を初めて確認した日
- 相手方へ連絡した日
- 相手方からの回答
- 履行を求めた内容
- 設定した対応期限
- 期限後の履行状況
- 契約変更について協議した内容
- 解除等について行った通知
契約書とこれらの記録を関連付けて保管しておくと、後から経緯を確認しやすくなります。
対応を進める前のチェックリスト
- 締結済みの契約書を確認した
- 変更契約書・覚書も確認した
- 守られていない契約内容を具体的に特定した
- 履行期限が到来しているか確認した
- 自社側の義務を履行しているか確認した
- メール・請求書・納品記録などを保存した
- 相手方へ現在の状況を確認した
- 求める対応内容を明確にした
- 必要に応じて履行期限を示した
- 契約書の解除条項を確認した
- 損害が発生している場合は内容を整理した
- 重大な問題について専門家への相談を検討した
よくある質問
支払期限を過ぎたらすぐ契約解除できますか?
支払期限を過ぎたという事実だけで、どのような契約でも直ちに解除できるとは限りません。
契約書の解除条項を確認するとともに、民法第541条による解除を検討する場合は、原則として相当の期間を定めた履行の催告などが問題になります。
一定の場合には民法第542条による無催告解除が認められることもありますが、具体的な契約や状況に応じて判断してください。
納期を1日過ぎただけでも契約違反ですか?
まず、契約書で定められた納期や納期変更に関する条件を確認します。
期限を過ぎている場合でも、それを理由としてどのような対応ができるかは、不履行の程度、契約目的への影響、契約条項などによって異なります。
特に解除については、民法第541条に軽微な不履行の場合の制限があるため、遅延の事実だけで判断しないことが重要です。
契約違反があれば必ず損害賠償を請求できますか?
必ず請求できるとは限りません。
民法第415条では債務不履行による損害賠償について定められていますが、実際に請求できるかは不履行の原因や発生した損害などによって判断されます。
契約書に損害賠償の範囲や責任制限が定められている場合は、その内容も確認してください。
相手が対応してくれない場合は内容証明郵便を送るべきですか?
すべての契約トラブルで内容証明郵便が必要というわけではありません。
重要な通知について、いつ、どのような内容の文書を送ったのかを記録する必要がある場合には、内容証明郵便などを利用することが検討されます。
解除など法的な効果に関わる重要な通知を行う場合は、通知内容や方法について専門家へ確認することも検討してください。
相手が契約を守らないのでこちらも支払いを止めてよいですか?
相手方が契約を履行していないからといって、自社側の義務を必ず停止できるとは限りません。
双方の債務の関係や履行時期、契約書の内容などによって判断が必要になるため、独断で支払いや業務を停止する前に確認してください。
話し合いで納期などを変更した場合はどうしますか?
相手方との協議によって契約条件を変更する場合は、変更後の納期や金額などを明確にします。
後から元の契約書との関係が分からなくならないよう、変更契約書や覚書などを作成し、双方が合意した内容を記録しておくことが大切です。
契約相手が契約を守らない場合の対応をまとめると
契約相手が契約内容を守らない場合は、いきなり解除や損害賠償から考えるのではなく、契約内容と事実関係を整理し、相手方へ履行を求め、それでも解決しない場合に次の対応を検討するという順番で進めることが重要です。
- 契約書・変更契約書を確認する
- 履行されていない内容を特定する
- 関連する記録を保存する
- 相手方へ状況を確認する
- 必要に応じて期限を定めて履行を求める
- 改善されなければ契約変更・解除・損害賠償などを検討する
- 判断が難しい場合は専門家へ相談する
特に契約解除や損害賠償を検討する段階では、契約書の一部だけを見るのではなく、不履行の内容、これまでの経緯、自社側の履行状況なども含めて確認しましょう。
契約内容と締結後の記録をまとめて管理する
契約相手との間で問題が起きたときは、締結した契約書をすぐに確認できることが重要です。
マイサイン(mysign)では、PDFの契約書をアップロードし、契約相手へオンラインで署名を依頼できます。契約相手はマイサインへの会員登録やログインをする必要がなく、受け取った案内からスマートフォンやパソコンで契約内容を確認し、署名・同意できます。
契約締結後も、契約書や契約に関する情報を確認できる状態にしておくことで、契約内容に認識の違いが生じた場合にも、合意した内容を確認しやすくなります。
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