相談内容変更に関する合意書(FP)とは?
相談内容変更に関する合意書(FP)とは、ファイナンシャルプランナーと相談者との間ですでに締結している相談契約について、相談テーマ、業務範囲、相談報酬、相談期間、成果物などを途中で変更する場合に、その変更内容を明確にするための書面です。FPへの相談は、契約時に予定していた内容から途中で変化することがあります。例えば、当初は家計改善のみを相談していたものの、相談を進める中で住宅購入や教育資金、老後資金についても相談したくなるケースがあります。反対に、複数の相談テーマを予定していたものの、事情の変化によって一部の相談を取りやめることもあります。
このような場合、口頭やメールだけで相談内容を変更すると、
- どこまでが追加された相談業務なのか
- 追加料金が発生するのか
- 相談期間は延長されるのか
- 新たな資料作成が必要なのか
- どの時点から変更後の条件が適用されるのか
といった点について、FPと相談者の認識が食い違う可能性があります。そこで、変更前後の条件を相談内容変更に関する合意書として残しておくことで、双方の認識を整理し、追加業務や料金などをめぐるトラブルを予防しやすくなります。なお、この合意書は元の相談契約をすべて締結し直すものではありません。既存の契約関係を維持したまま、変更が必要な部分について追加的に合意するために利用することができます。
相談内容変更に関する合意書が必要となるケース
FP相談では、相談開始後にライフプランや経済状況が変化することも珍しくありません。そのため、契約締結時には想定していなかった相談が必要になる場合があります。特に、次のようなケースでは変更内容を書面化しておくことが考えられます。
- 家計改善相談に住宅購入相談を追加する場合
- 資産形成相談に老後資金相談を追加する場合
- 教育資金を含めたライフプラン全体の見直しへ変更する場合
- 予定していた相談テーマの一部を取りやめる場合
- 相談回数や面談時間を増やす場合
- 追加のキャッシュフロー表や試算資料を作成する場合
- 相談範囲の拡大に伴って報酬を変更する場合
- 必要資料の追加によって相談期間や納期を変更する場合
相談内容が少し変わっただけであれば、新しい契約書を一から作成するより、原契約を特定した上で変更部分のみを合意書として整理する方法が実務上利用しやすい場合があります。
FP相談の内容変更を書面化する理由
相談内容を変更するときに重要なのは、単に新しい相談テーマを記載することだけではありません。相談内容が変われば、業務量、必要資料、面談回数、成果物、報酬、納期なども連動して変わる可能性があります。例えば、家計改善の相談から住宅購入資金の相談へ範囲を広げる場合、住宅ローンや将来の返済計画などを踏まえた追加の試算が必要になることがあります。その結果、FP側の作業量が増えれば追加報酬が発生する可能性もあります。このとき、相談テーマだけを変更し、追加報酬について何も決めていなければ、相談者は当初料金に含まれていると考える一方、FP側は追加料金の対象と考えるといった認識の相違が生じかねません。
そのため、相談内容を変更するときには、
- 何を変更するのか
- 変更によって業務範囲がどう変わるのか
- 報酬は変更されるのか
- 相談期間や納期は変更されるのか
- 成果物は追加・変更されるのか
まで確認しておくことが重要です。
相談内容変更に関する合意書に盛り込むべき主な条項
相談内容変更に関する合意書では、一般的に次のような事項を整理します。
- 合意書の目的
- 変更対象となる原契約
- 変更前の相談内容
- 変更後の相談内容
- 変更後の相談業務の範囲
- 専門業務等の取扱い
- 相談者による情報提供
- 相談報酬及び追加費用
- 相談期間及び実施時期
- 成果物等の変更
- 試算及び情報提供の取扱い
- 第三者の商品・サービスに関する取扱い
- 相談内容の再変更
- 秘密保持及び個人情報の取扱い
- 非保証及び損害賠償
- 原契約との関係
- 準拠法及び合意管轄
特に重要なのは、変更事項だけではなく、原契約との関係を明確にすることです。
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 原契約を特定する条項
相談内容変更に関する合意書は、それ単独でFP相談を開始するための契約書ではなく、すでに存在する相談契約の一部を変更するために作成することを想定しています。そのため、どの契約を変更する合意書なのかを特定することが重要です。契約名称、契約締結日、当初の相談内容などを記載しておけば、複数の契約が存在する場合でも変更対象を確認しやすくなります。
2. 相談内容の変更条項
合意書の中心となる条項です。変更後の相談内容だけを書くのではなく、変更前と変更後を対比できるようにしておくと、何が変更されたのかが明確になります。
例えば、
変更前:家計収支の見直しに関する相談
変更後:家計収支の見直し及び住宅購入資金計画に関する相談
という形で記載することが考えられます。変更理由や変更適用日も定めておけば、いつから新しい相談条件が適用されるのか確認しやすくなります。
3. 変更後の相談業務の範囲
相談テーマを追加したからといって、そのテーマに関連するあらゆる業務をFPが担当するとは限りません。家計改善、ライフプラン、住宅資金、教育資金、老後資金、資産形成、保険、相続など、FPが対応する具体的な相談範囲を整理しておくことが重要です。特に相談内容を追加した場合には、業務範囲まで合わせて確認しておくことで、相談者側が想定していたサービスと実際に提供されるサービスとの違いを減らすことができます。
4. 専門業務等の取扱い
FP相談では、税務、法律、登記、社会保険、不動産、金融商品など、他の資格・登録制度と関係するテーマを扱うことがあります。しかし、相談内容を変更したことによって、FPが当然にこれらの専門業務まで担当することになるわけではありません。そのため、法令上特定の資格や登録等を必要とする業務については、FPが適法に対応でき、かつ別途合意した場合を除いて相談業務に含まれないことを明確にしておくことが重要です。必要に応じて、弁護士、税理士、司法書士、社会保険労務士などの専門家への相談を案内することも考えられます。
5. 相談者による情報提供
FPによる分析や試算は、相談者から提供された情報を前提として行われることが一般的です。相談内容が変更されれば、新たな情報が必要になることがあります。例えば、住宅購入相談を追加するのであれば、収入や現在の資産だけでなく、購入予定価格、自己資金、住宅ローンの条件などについて確認が必要になる場合があります。そのため、必要な情報や資料を正確かつ適時に提供すること、提供した情報に変更が生じた場合にはFPへ伝えることを定めておくとよいでしょう。
6. 相談報酬及び追加費用
相談内容の変更によって特にトラブルになりやすいのが料金です。業務範囲が広がれば、追加面談や追加資料の作成などが必要となり、FP側の作業量が増えることがあります。
合意書では、
- 変更前の相談報酬
- 変更後の相談報酬
- 追加費用
- 支払期限
- 支払方法
などを明確にしておくことが考えられます。また、変更後にさらに追加作業が必要になった場合についても、事前に内容と追加費用を提示し、相談者の同意を得てから実施する仕組みにしておくと、料金をめぐる認識の相違を防ぎやすくなります。
7. 相談期間・スケジュールの変更
相談範囲の追加は、相談期間や成果物の提出時期にも影響します。当初1か月で終了する予定だった相談について追加分析が必要となれば、完了予定日を延長することも考えられます。そのため、必要に応じて変更前後のスケジュールと変更後の完了予定日を記載します。相談者による資料提出が遅れた場合など、合理的な事情によってスケジュールを再調整できるようにしておくことも実務上有用です。
8. 成果物の変更
FP相談では、ライフプラン表、キャッシュフロー表、資金計画表、試算資料、相談報告書などを作成する場合があります。相談テーマが変われば、必要となる成果物も変わる可能性があります。既存資料を修正するのか、新しい資料を追加するのか、再作成費用が必要なのかなどを整理しておくことが重要です。
9. 試算及び将来予測に関する条項
FPが作成するキャッシュフローや資産残高などの試算は、相談時点の情報と一定の前提条件をもとに作成されるものです。将来の金利、物価、税制、社会保障制度、金融市場などが変化すれば、実際の結果は試算と異なる可能性があります。そのため、試算結果が将来の結果を保証するものではないことを明確にしておくことが重要です。
10. 非保証条項
FPによる相談は、相談者の意思決定を支援することを目的とするものであり、特定の経済的成果を保証するものではありません。資産形成、投資収益、節税効果、住宅購入後の家計状況などは、さまざまな要因によって変化します。相談内容を変更した場合にも、この基本的な責任範囲が変わるわけではないことを確認しておく必要があります。
11. 原契約との関係
変更合意書では非常に重要な部分です。相談内容を変更するたびに原契約そのものを失効させてしまうと、秘密保持や個人情報、損害賠償など、変更する必要のない条項まで影響を受ける可能性があります。そこで、変更合意書に記載された変更事項については合意書を優先し、それ以外の原契約の条項については引き続き有効とする構成が考えられます。これによって、変更部分と継続部分を切り分けることができます。
相談内容変更に関する合意書を作成する際の注意点
変更後の内容だけを記載しない
変更後の相談内容だけでは、以前の契約から何が変わったのか分かりにくくなります。できる限り変更前と変更後を対比し、変更箇所が明確になるようにしましょう。
相談内容と料金をセットで確認する
相談範囲を追加する場合は、料金についても必ず確認することが重要です。追加料金の有無、金額、支払期限などを書面化しておけば、後から追加料金について争いになるリスクを抑えられます。
成果物や納期への影響も確認する
相談テーマだけを変更して終わりにせず、成果物、相談回数、相談期間、納期などへの影響も確認します。変更に伴って既存資料を再作成する場合には、その作業が追加報酬に含まれるかについても整理しておくとよいでしょう。
FPの業務範囲を超えないようにする
相談テーマの変更によって、税務、法律、登記その他の専門領域へ相談内容が広がる場合があります。相談内容変更合意書を締結したことだけを理由として、資格や登録等が必要となる業務まで当然にFPが提供できるようになるわけではありません。実際のサービス内容に応じて、対応可能な業務と対象外業務を区別する必要があります。
再変更する場合の手続も決めておく
ライフプランに関する相談では、途中でさらに相談内容が変わることもあります。そのため、再変更を希望する場合にはFPへ申し出ることや、報酬・期間などに影響する場合には改めて合意することを定めておくと、変更手続を統一できます。
原契約との整合性を確認する
変更合意書だけではなく、元となるFP相談契約書の内容も確認する必要があります。特に、報酬、契約期間、解除、秘密保持、個人情報、損害賠償、合意管轄などについて、原契約と変更合意書の内容が矛盾していないか確認することが重要です。
相談内容変更に関する合意書と新規契約書の使い分け
相談内容を変更する場合でも、必ず変更合意書を使用すればよいとは限りません。既存契約の基本的な枠組みを維持したまま、一部の相談テーマ、報酬、期間などを変更する場合には、変更合意書が利用しやすいでしょう。一方、相談業務の目的や契約形態そのものが大幅に変わる場合には、新たな相談契約を締結した方が契約関係を整理しやすい場合があります。例えば、単発の家計相談から長期間の継続的な顧問サービスへ移行する場合などは、単なる相談内容の変更にとどまらず、契約期間、報酬体系、業務内容、解約条件など多数の条件が変わる可能性があります。変更箇所が非常に多い場合には、変更合意書を何度も追加するより、新しい契約書に一本化する方法も検討する必要があります。
電子契約で相談内容変更合意書を締結する場合
FP相談がオンラインで行われている場合には、相談内容の変更についても電子的に合意する運用が考えられます。電子契約を利用すれば、相談内容が変更されたタイミングで合意書を作成し、FPと相談者がそれぞれ内容を確認した上で締結・保管しやすくなります。特に変更契約では、原契約と変更合意書を関連付けて管理することが重要です。
契約管理の際には、
- どの原契約に対する変更なのか
- いつ変更されたのか
- どの条件が変更されたのか
- 現在有効な相談条件は何か
を後から確認できる状態にしておくとよいでしょう。
まとめ
相談内容変更に関する合意書(FP)は、すでに締結しているFP相談契約について、相談テーマ、業務範囲、報酬、相談期間、成果物などを途中で変更する場合に、その内容を明確にするための書面です。FP相談では、家計改善から住宅購入、教育資金、老後資金、資産形成などへ相談範囲が広がることがあります。相談内容が変われば、必要な作業や資料、面談回数、料金、納期も変わる可能性があります。そのため、単に相談テーマだけを変更するのではなく、変更前後の相談内容、追加業務、報酬、相談期間、成果物、専門業務の範囲などをまとめて確認することが重要です。また、変更合意書は原契約を全面的に置き換えるものではなく、変更する部分のみを修正し、それ以外の条項を引き続き有効とする形で利用できます。変更内容を書面として残しておくことで、FPと相談者双方が現在の契約条件を確認しやすくなり、追加料金や業務範囲などをめぐる認識の相違を予防することにつながります。