リース契約者変更合意書とは?
リース契約者変更合意書とは、すでに締結されているリース契約について、現在の契約者から新しい契約者へ契約上の地位を引き継ぐ際に、その変更内容や権利義務の承継について関係当事者が合意するための書面です。たとえば、会社が事業を別会社へ譲渡し、その事業で使用しているコピー機、褊合機、パソコン、厨房設備、店舗設備、機械設備などのリース契約も新会社へ引き継ぎたい場合があります。このような場合、リース物件を単に新会社へ渡せばよいとは限りません。リース契約では、リース会社と契約者との間に契約関係が存在しており、契約者の変更や契約上の地位の移転について一定の条件が定められている場合があります。そのため、変更前の契約者だけで契約を新しい会社へ移転するのではなく、リース会社を含めた関係者間で契約者変更について合意しておくことが重要です。リース契約者変更合意書では、主に以下の事項を整理します。
- 変更対象となるリース契約
- 変更前契約者と変更後契約者
- 契約者を変更する日
- 契約上の地位や権利義務の承継
- リース物件の引継ぎ
- 変更日前後のリース料の負担
- 未払債務の取扱い
- 保証金や預託金の取扱い
- 原契約との関係
これらを明確にすることで、契約者変更後に、誰がリース料を支払うのか、過去の未払金を誰が負担するのか、リース物件を誰が管理するのかといったトラブルを防ぎやすくなります。
リース契約者変更合意書が必要となるケース
リース契約者の変更は、会社名が変わった場合だけに発生するものではありません。事業譲渡、会社分割、事業承継、店舗運営者の変更など、さまざまな場面で必要になります。
1. 事業譲渡に伴ってリース契約を引き継ぐ場合
典型的なのが事業譲渡です。たとえば、甲社が運営している店舗事業を乙社へ譲渡するとします。その店舗で使用している厨房機器、POSレジ、複合機、空調設備などがリース物件である場合、事業を譲渡しただけではリース契約の処理が完了しないことがあります。そこで、リース会社、変更前契約者、変更後契約者の間でリース契約者変更合意書を締結し、契約関係を整理します。
2. 会社分割や組織再編を行う場合
会社分割やグループ内再編によって、特定事業を別会社へ移す場合にも、事業で使用しているリース物件の取扱いを確認する必要があります。リース物件そのものだけでなく、その物件に関する契約上の権利義務をどの会社が引き継ぐのかを明確にしておくことが重要です。
3. 個人事業から法人へ移行する場合
個人事業主が法人成りし、事業で利用しているリース物件を新設法人でも引き続き使用するケースも考えられます。個人と法人は別の契約主体であるため、単に会社を設立しただけでリース契約の契約者が自動的に法人へ変わるとは限りません。リース会社の承諾や所定の手続が必要かを確認し、必要に応じて契約者変更の合意を行います。
4. 店舗や施設の運営主体が変更される場合
飲食店、美容室、クリニック、介護施設、ホテルなどでは、店舗や施設の運営主体が変更されても、既存設備をそのまま使用するケースがあります。設備がリース物件であれば、店舗の譲渡や運営会社の変更とは別に、リース契約についても承継手続を検討する必要があります。
リース契約者変更合意書と名義変更の違い
実務上注意したいのが、単純な名称変更と契約者そのものの変更を区別することです。たとえば、株式会社Aが商号変更によって株式会社Bになっただけで、法人格そのものが同一である場合には、契約主体が別人になったわけではありません。この場合、契約者変更ではなく、商号変更等の届出で対応できる可能性があります。
一方、
- 株式会社Aから株式会社Bへ契約を移す
- 個人事業主から設立した法人へ契約を移す
- 事業譲渡先の会社へ契約を引き継ぐ
といった場合には、契約主体そのものが変わります。この場合には、単純な登録情報の変更ではなく、原契約における契約上の地位や権利義務をどのように承継するのかを整理する必要があります。
リース契約者変更合意書に盛り込むべき主な条項
リース契約者変更合意書では、単に契約者を変更する旨だけを記載するのではなく、変更前後の責任関係まで明確にすることが重要です。主な条項としては、以下が挙げられます。
- 変更対象となる原契約の特定
- 契約上の地位の承継
- リース物件の承継
- 変更日前に発生した債務の取扱い
- 変更日以後に発生する債務の取扱い
- 未払金等の精算
- 保証金等の取扱い
- リース物件の使用・管理
- 滅失・毀損等への対応
- 原契約の効力
- 損害賠償
- 準拠法・合意管轄
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 対象となるリース契約
最初に重要なのが、どのリース契約を変更するのかを明確にすることです。契約締結日だけでは複数の契約が存在する場合に特定できない可能性があるため、
- 契約締結日
- 契約番号
- リース物件
- リース期間
- リース料
- 設置・使用場所
などを記載すると分かりやすくなります。特に同一のリース会社と複数の契約を締結している企業では、契約番号や対象物件を正確に記載しておくことが重要です。
2. 契約上の地位の承継
リース契約者変更合意書の中心となる条項です。変更前契約者が有していた契約上の地位や原契約に基づく権利義務を、いつから変更後契約者へ承継させるのかを明確にします。ここでは、変更日を具体的に定めておくことが重要です。たとえば、月の途中で契約者を変更する場合、当月分のリース料を誰が負担するのかが不明確になる可能性があります。そのため、契約者変更日と金銭債務の負担時期を合わせて確認しておく必要があります。
3. 変更後契約者による原契約の確認
新しい契約者が契約を引き継ぐ以上、原契約の内容を理解していることも重要です。
リース料だけでなく、
- リース期間
- 支払条件
- 物件の管理義務
- 転貸・譲渡等の禁止
- 物件返還義務
- 中途解約に関する条件
- 損害賠償に関する条件
などを確認しておきます。合意書でも、変更後契約者が原契約を確認し、その内容に従うことを明確にしておくと、契約承継後の認識違いを防止しやすくなります。
4. リース物件の引継ぎ
契約者の変更と同時に、実際のリース物件についても変更前契約者から変更後契約者へ引き継ぐケースが一般的です。その際には、物件の状態、数量、付属品、設置場所などを確認しておくことが重要です。高額な機械設備などの場合には、合意書だけでなく、別途引渡確認書や物件一覧を作成する方法も考えられます。
5. 変更日前の債務
特にトラブルになりやすいのが、変更日前に発生している債務です。たとえば、変更前契約者に未払リース料がある状態で契約者を変更した場合、その未払金まで新しい契約者が負担するのかが問題になります。そのため、変更日前に発生した債務は変更前契約者が負担するといった基準を定めておくことが有効です。また、変更日前に発生した原因に基づく損害が変更後に判明するケースも考えられるため、その場合の責任関係も整理しておくと安心です。
6. 変更日以後のリース料
変更日以後のリース料やその他の金銭債務については、原則として変更後契約者が負担する形が分かりやすいでしょう。
同時に、
- 支払口座
- 口座振替手続
- 請求書送付先
- 請求締日
- 支払期日
などの実務的な情報も変更する必要がある場合があります。契約書上の変更だけでなく、リース会社側の請求システム等の変更手続も忘れずに行うことが重要です。
7. 保証金・預託金の取扱い
原契約に保証金や預託金が設定されている場合には、その取扱いについても確認が必要です。変更前契約者へ返還するのか、新しい契約者へ承継するのか、新たに差し入れ直すのかによって処理が変わります。金銭に関する部分は後から争いになりやすいため、具体的な金額や承継方法が決まっている場合には明記しておくことが望ましいでしょう。
8. リース物件の所有権
契約者が変更されたからといって、当然にリース物件の所有権が変更後契約者へ移転するわけではありません。リース契約では、物件の所有権と利用権を区別して考える必要があります。したがって、契約者変更によって物件の所有権まで取得したという誤解が生じないよう、原契約の所有権に関する条項も確認しておく必要があります。
9. 原契約との関係
リース契約者変更合意書は、通常、既存のリース契約そのものを全面的に作り直すものではありません。そこで、本合意書で変更する事項以外については原契約が引き続き有効であることを定めておくことが重要です。また、本合意書と原契約の内容が抵触した場合にどちらを優先するのかについても定めておけば、解釈上の混乱を防止できます。
リース契約者変更合意書を作成する際の注意点
原契約の契約者変更・地位移転に関する条項を確認する
まず確認すべきなのが原契約です。原契約に、契約上の地位や権利義務を第三者へ譲渡・移転する場合の条件が定められている可能性があります。そのため、変更前契約者と変更後契約者だけで話を進めるのではなく、原契約の内容を確認したうえで必要な手続を行うことが重要です。
リース会社の承諾を明確にする
今回のひな形では、リース会社である甲、変更前契約者である乙、変更後契約者である丙の三者で合意する形式を採用しています。三者間で合意することにより、誰がいつから契約者となるのかを明確にできます。特に、契約者変更についてリース会社の承諾が必要とされている場合には、リース会社を含めた書面を作成することが重要です。
未払リース料を確認する
契約者変更前には、未払リース料の有無を確認しておきましょう。変更前の未払金を変更後契約者が負担すると認識している一方で、新しい契約者はその事実を知らなかったという状況になると、トラブルにつながります。契約者変更日現在の債務状況を確認し、必要であれば未払金額を合意書や別紙に記載する方法も考えられます。
連帯保証人や保証契約も確認する
原契約に連帯保証人や保証会社が関係している場合には、契約者変更によって保証関係をどのように取り扱うのかについても確認が必要です。主契約の契約者を変更したからといって、既存の保証関係について何も確認しなくてよいとは限りません。リース契約だけを見るのではなく、それに付随する保証関係についても個別に確認することが重要です。
物件の状態を確認する
変更前契約者と変更後契約者との間では、リース物件の現状確認を行うことも大切です。傷、故障、部品の欠損などが存在する場合、その状態が契約者変更前から存在したものなのか、変更後に発生したものなのかが後から問題になる可能性があります。
必要に応じて、
- 物件確認書
- 引渡確認書
- 物件一覧表
- 写真
などを残しておくと、責任範囲を確認しやすくなります。
保険やメンテナンス契約も確認する
リース物件によっては、保険、保守契約、メンテナンス契約などが付随している場合があります。リース契約者だけを変更しても、関連契約の名義が旧契約者のまま残っていると、事故や故障が発生した際に問題となる可能性があります。リース契約と関連する契約を一覧化し、契約者変更の必要性を確認するとよいでしょう。
リース契約者変更合意書を三者間で締結するメリット
リース契約者変更では、リース会社、変更前契約者、変更後契約者の三者で合意する形式にすると、それぞれの認識を一つの文書にまとめやすくなります。
具体的には、
- リース会社が契約者変更を承諾したことを確認できる
- 変更前契約者がどこまで責任を負うのか明確になる
- 変更後契約者が原契約を承継することを確認できる
- リース料の負担時期を明確にできる
- リース物件の引継ぎについて記録を残せる
といったメリットがあります。特に重要なのは、変更日を境として変更前契約者と変更後契約者の責任を整理できる点です。契約者変更そのものだけでなく、変更前後の責任分担まで定めることが、実務上のトラブル防止につながります。
電子契約でリース契約者変更合意書を締結する場合
リース契約者変更合意書についても、契約当事者の運用や原契約の条件等に応じて、電磁的方法による締結を検討できます。三者間の合意では、紙で契約書を回覧すると、印刷、押印、郵送、返送などに時間がかかることがあります。電子契約を利用する場合には、契約締結の手続きをオンライン上で進めやすくなり、締結済み文書についても電子データとして管理できます。一方で、原契約に契約変更の方式について特別な定めがある場合などは、その内容を事前に確認することが重要です。
リース契約者変更合意書とあわせて確認したい書類
契約者変更の内容によっては、合意書だけでなく関連書類についても確認・整備しておくとよいでしょう。
- 原リース契約書
- リース物件一覧表
- 物件引渡確認書
- 未払債務の確認書
- 保証金・預託金に関する確認書
- 連帯保証等に関する書類
- 請求先・口座振替変更書類
- リース物件に関する保険・保守契約書類
特に複数のリース物件を一括して承継する場合には、対象物件を別紙一覧にして契約番号や物件情報を整理すると、どの契約が変更対象なのかを管理しやすくなります。
まとめ
リース契約者変更合意書は、既存のリース契約について契約者を変更し、変更前契約者から変更後契約者へ契約上の地位や権利義務を承継するための重要な書面です。特に、事業譲渡、会社分割、事業承継、法人成り、店舗運営会社の変更などでは、事業や設備を引き継ぐだけでなく、リース契約そのものの取扱いを確認する必要があります。
作成する際には、
- 対象となる原契約を正確に特定する
- 契約者変更日を明確にする
- リース会社の承諾を確認する
- 変更日前後の債務を区分する
- 未払リース料や保証金を整理する
- リース物件の状態を確認する
- 原契約や関連する保証・保険等を確認する
といった点が重要です。単に契約者名を書き換えるだけではなく、誰がどの時点からどの義務を負うのかまで明確にすることで、契約変更後のリース料請求、物件管理、返還、損害賠償などをめぐるトラブルを予防しやすくなります。なお、実際の契約者変更に必要な手続や条項は、原契約の内容、リース物件、保証関係、変更理由などによって異なります。リース契約者変更合意書を利用する際は原契約を十分に確認し、必要に応じて弁護士その他の専門家へ確認することを推奨します。