相談契約終了合意書(FP)とは?
相談契約終了合意書(FP)とは、ファイナンシャルプランナー(FP)と相談者との間で締結していた相談契約について、双方の合意によって終了させる際に、その条件や終了後の取扱いを明確にするための書面です。FPとの相談契約には、スポット相談だけでなく、継続相談、月額制の相談サービス、顧問契約、資産形成相談、家計改善相談、住宅購入相談、保険見直し相談など、さまざまな形態があります。こうした契約を途中で終了するとき、口頭やメールで単に「今月で終了します」と確認するだけでは、報酬の精算や未完了業務、預かっている資料、個人情報などについて認識の違いが生じる可能性があります。
そこで、相談契約終了合意書を作成し、
- どの相談契約を終了するのか
- いつ契約を終了するのか
- 終了時点で未完了の相談業務をどうするのか
- 未払報酬や前払報酬をどう精算するのか
- 預かった資料や個人情報をどう取り扱うのか
- 契約終了後も継続する義務は何か
- 契約終了後に追加請求を行うことがあるのか
といった事項を書面で整理しておくことが重要です。特に継続的なFP相談では、相談者の家計、資産、収入、保険、住宅ローン、家族構成などに関する情報を長期間取り扱うことがあります。そのため、契約そのものを終了するだけではなく、相談業務に伴って発生した権利義務をどのように処理するのかまで明確にしておく必要があります。
相談契約終了合意書(FP)が必要となるケース
相談契約終了合意書は、FPと相談者が話し合いによって契約を終了する場面で利用できます。
継続相談契約を途中で終了する場合
毎月又は一定期間ごとに相談を受ける継続相談契約では、相談者の事情やサービス利用状況の変化によって、契約期間の途中で相談を終了することがあります。この場合、終了日だけでなく、その日までに発生した相談料や未完了の相談業務について確認しておくことが重要です。
月額顧問契約を終了する場合
FPが個人や法人に対して月額制で相談サービスを提供している場合、契約終了のタイミングによって最終月の顧問料や追加費用の計算が問題となることがあります。終了合意書を作成することで、最終支払日や精算対象となる費用を明確にできます。
相談者の事情により契約を終了する場合
転居、家計状況の変化、相談目的の達成、別の専門家への依頼など、相談者側の事情によって相談を継続する必要がなくなる場合があります。双方が契約終了に同意しているのであれば、解除通知だけで処理するのではなく、終了条件について合意書を作成する方法が考えられます。
FP側の事情により相談を終了する場合
FP側の事業方針の変更、サービス終了、業務体制の変更などによって相談契約を継続できなくなるケースもあります。この場合も、終了日、未実施業務、既払金、資料等について整理しておくことで、相談者とのトラブルを防ぎやすくなります。
相談内容を別契約へ切り替える場合
現在の相談契約を終了し、新しい相談プランや顧問契約へ変更する場合にも利用できます。旧契約をいつ終了し、新契約をいつ開始するのかを明確にすることで、両方の契約が重複したり、反対に契約の空白期間が生じたりすることを防ぎやすくなります。
相談契約終了合意書(FP)に盛り込むべき主な条項
FP向けの相談契約終了合意書では、一般的に次の事項を整理します。
- 合意書の目的
- 終了対象となる相談契約
- 契約終了日
- 未完了の相談業務の取扱い
- 相談報酬及び費用の精算
- 前払報酬等の返還
- 資料等の返還又は廃棄
- 相談資料及び成果物の取扱い
- 相談結果等に関する確認
- 資格を必要とする専門業務の取扱い
- 秘密保持
- 個人情報の取扱い
- 契約終了後の連絡
- 追加請求等の取扱い
- 契約終了後も存続する権利義務
- 債権債務の清算確認
- 合意内容の変更
- 協議事項
- 準拠法及び合意管轄
単に「相談契約を終了する」とだけ記載するのではなく、契約関係をどのように清算するかまで定めることがポイントです。
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 対象となる相談契約
まず重要なのが、どの契約を終了するのかを特定することです。FPと相談者の間で複数の契約や申込みが存在する場合、単に「相談契約を終了する」と記載すると、どの契約まで終了したのかについて認識が分かれる可能性があります。そのため、「○年○月○日付で締結した○○相談契約」など、契約日や契約名称を記載して対象を特定します。また、元の相談契約と終了合意書の内容が異なる場合に備え、契約終了に関する事項については終了合意書を優先すると定めておく方法もあります。
2. 契約終了日
契約終了日は、終了合意書の中心となる項目です。例えば、8月中に終了について合意したとしても、「合意書を締結した日」で終了するのか「8月31日」で終了するのかによって、相談業務や月額報酬の取扱いが変わる可能性があります。「○年○月○日をもって終了する」と具体的に定めておくことで、いつまでFPに相談業務を提供する義務があるのかを明確にできます。
3. 未完了の相談業務
契約終了時点で、キャッシュフロー表の作成、ライフプランの分析、住宅購入資金の試算などが途中になっている場合があります。
このような業務については、
- 終了日をもって打ち切る
- 特定の業務だけ完成まで継続する
- 別途合意した日まで対応する
など、処理方法を明確にしておくことが重要です。未完了業務を曖昧にしたまま契約を終了すると、相談者は「資料まで完成させてもらえると思っていた」、FP側は「契約終了と同時に業務も終了した」と認識する可能性があります。
4. 相談報酬・費用の精算
終了日までに発生した相談料、月額顧問料、資料作成料などについて、支払いの有無を確認します。交通費、資料取得費などを相談者負担としている場合には、これらも精算対象となることがあります。
未払金が存在する場合には、
- 未払金額
- 支払期限
- 支払方法
- 振込手数料の負担者
などを可能な限り明確にしておくとよいでしょう。
5. 前払報酬等の取扱い
数か月分の相談料を一括で支払っている場合などには、未利用期間に対応する報酬を返金するのかが問題になります。返金の有無は、元の相談契約に定められた返金条件や、実際に提供された業務内容などによって異なります。終了合意書では、返還額がある場合には金額や返還期限を明確にすることが重要です。
6. 資料等の返還
FP相談では、源泉徴収票、家計資料、保険関係資料、住宅ローン資料、資産状況に関する書類などを相談者から預かることがあります。契約終了時には、返還すべき資料を整理しておく必要があります。一方、法令上の保存義務や業務記録として一定の情報を保存する必要がある場合も考えられるため、一律にすべて廃棄すると定めるのではなく、必要な範囲で保存できる内容としておくことも実務上重要です。
7. 相談資料・成果物の取扱い
FPが作成したライフプラン表、キャッシュフロー表、資金計画表、各種シミュレーションなどは、相談契約が終了した後も相談者の手元に残ることがあります。ここで注意したいのが、これらの資料が作成時点の条件を前提としていることです。税制、社会保障制度、金利、金融商品、市場環境、相談者の収入や家族構成などが変化すれば、過去の試算結果が現在の状況に適合しなくなる可能性があります。そのため、契約終了後にFPが資料を継続的に更新する義務を負うのかについて明確にしておくことが重要です。
8. 相談結果に関する非保証
FPによる相談や試算は、将来の経済状況や市場環境などを完全に予測するものではありません。特に資産形成、老後資金、住宅購入、保険などの相談では、将来の結果がさまざまな事情によって変動します。終了合意書でも、既に提供した相談内容や試算が特定の成果を保証するものではなく、最終的な意思決定は相談者自身が行うことを確認しておく方法があります。
9. 税務・法律等の専門業務
FP相談と、税理士、弁護士、司法書士、社会保険労務士などの資格を必要とする専門業務との区別も重要です。元の相談契約で、これらの資格を必要とする業務を対象外としていた場合には、契約終了によってその範囲が変わるものではないことを確認しておくことが考えられます。
10. 秘密保持・個人情報
相談契約そのものが終了しても、相談期間中に知り得た情報の秘密保持まで当然に終了させることが適切とは限りません。特にFP相談では、相談者本人だけでなく、配偶者や家族の収入、資産、保険、住宅、相続などに関する情報を取り扱うことがあります。そのため、原契約に秘密保持義務が定められている場合には、契約終了後も必要な範囲でその義務を存続させることが重要です。個人情報についても、個人情報保護法その他の関係法令や事業者の個人情報保護方針等に従って適切に取り扱う必要があります。
11. 契約終了後の連絡
契約終了後であっても、報酬の精算や資料返還などの事務連絡が必要になる場合があります。ただし、こうした事務連絡を行ったことで、FP相談そのものが再開したと受け取られないよう注意が必要です。新たな相談を開始する場合には、必要に応じて改めて相談契約を締結すると定めておくと、契約関係を整理しやすくなります。
12. 清算条項
契約終了時には、甲乙間に未処理の債権債務が残っていないか確認することも重要です。報酬や費用などの精算がすべて完了した後、終了後も存続する権利義務を除いて債権債務が存在しないことを相互に確認する条項を設けることで、後から予期しない金銭請求が発生するリスクを抑えやすくなります。ただし、実際に未払報酬や返還金などが残っている段階で「一切の債権債務がない」としてしまうと内容に矛盾が生じます。そのため、精算完了を条件として清算確認を行う構成が適しています。
相談契約の解除と合意終了の違い
相談契約を終わらせる方法には、契約上の解除条項などに基づいて一方当事者が終了させる方法と、FPと相談者が話し合って終了させる方法があります。相談契約終了合意書は、後者のように双方が契約終了について合意している場合に適した書面です。双方が合意している場合には、単に終了の意思を確認するだけでなく、終了日、報酬、未完了業務、資料、秘密保持などをまとめて整理できる点にメリットがあります。一方、一方当事者による解除について争いがある場合などは、合意終了とは前提が異なります。元の契約書に定められた解除条件や実際の経緯を確認した上で対応する必要があります。
相談契約終了合意書を作成する際の注意点
元の相談契約書を確認する
終了合意書だけを独立して作成するのではなく、必ず元の相談契約書を確認することが重要です。
特に、
- 契約期間
- 中途解約・解除条件
- 相談報酬
- キャンセル料
- 返金条件
- 秘密保持
- 成果物の利用
- 損害賠償
- 契約終了後の存続条項
について確認し、終了合意書との矛盾がないようにします。
終了日を曖昧にしない
「今月末」「次回相談をもって終了」などの表現だけでは、具体的な終了日について認識の違いが生じる可能性があります。原則として年月日を具体的に記載し、いつから相談業務が終了するのかを明確にしておくことが望まれます。
金銭関係は具体的に整理する
相談契約終了後にトラブルになりやすい事項の一つが金銭関係です。「必要な費用を精算する」とだけ定めるのではなく、実際に金銭債務が残っている場合には、金額、支払期限、返金期限などを具体化すると分かりやすくなります。
終了後も残すべき義務を確認する
相談契約を終了したからといって、すべての条項を同時に消滅させる必要があるとは限りません。秘密保持、個人情報、成果物の利用、知的財産権、未払報酬など、その性質上、契約終了後も効力を残すべき事項があります。元の契約書の存続条項と照らし合わせながら整理することが重要です。
電子契約の場合も内容を明確にする
相談契約終了合意書は、紙だけでなく、当事者が合意した方法によって電磁的に締結することも考えられます。電子契約を利用する場合にも、対象契約、終了日、精算条件などの重要事項を明確に記載し、締結後の電磁的記録を適切に保管することが重要です。
相談契約終了合意書を作成するメリット
相談契約終了合意書を作成する大きなメリットは、FPと相談者が「何をもって契約関係を終了したのか」を共通認識として残せることです。特に継続相談では、単に相談を受けなくなるだけでは、月額料金、作成途中の資料、過去の試算、預かり資料などが残ることがあります。終了合意書によってこれらをまとめて整理しておけば、契約終了後に「まだ相談してもらえると思っていた」「料金はすべて支払ったと思っていた」「資料を返してほしい」といった認識違いが生じる可能性を低減できます。また、FP側にとっては業務終了の範囲を明確にでき、相談者側にとっても未払金や返還金、資料等の取扱いを確認できるため、双方にとって契約関係を整理するための重要な書面となります。
まとめ
相談契約終了合意書(FP)は、ファイナンシャルプランナーと相談者が相談契約を双方の合意によって終了する際に、終了条件を明確にするための書面です。単に「契約を終了する」という合意だけではなく、契約終了日、未完了業務、相談報酬・費用、前払報酬、資料返還、成果物、秘密保持、個人情報、終了後の連絡、存続する権利義務、債権債務の清算などを整理しておくことが重要です。特に、継続相談や月額顧問契約のように一定期間にわたってサービスを提供している場合には、契約終了時点でさまざまな権利義務が残っている可能性があります。終了合意書を作成することで、それらを一つずつ確認し、契約終了後の認識違いやトラブルを予防しやすくなります。実際に利用する際には、元の相談契約書に定められた中途解約、報酬、返金、秘密保持、成果物、契約終了後の存続条項などとの整合性を確認することが必要です。個別の契約内容や事情によって適切な条項は異なるため、必要に応じて弁護士その他の専門家に確認することをおすすめします。