園児情報共有同意書とは?
園児情報共有同意書とは、保育園が園児の安全な保育、健康管理、発達支援などを行うため、園児や保護者に関する情報を園内の職員や必要な関係機関等と共有することについて、あらかじめ保護者の同意を確認するための書類です。保育園では、園児の氏名や生年月日といった基本情報だけでなく、健康状態、アレルギー、既往歴、生活習慣、発達状況、家庭から伝えられた配慮事項など、さまざまな情報を取り扱います。こうした情報は担任保育士だけが把握していればよいとは限りません。たとえば、食物アレルギーがある園児については、担任だけでなく、園長、看護師、栄養士、調理員などにも必要な情報を共有することが考えられます。
また、園児への継続的な支援が必要な場合には、状況に応じて、
- 医療機関
- 自治体や保健センター
- 児童相談所
- 療育機関や発達支援機関
- 小学校などの教育機関
と連携することもあります。そのため、園児情報共有同意書では、単に情報共有に同意することだけを記載するのではなく、何のために、どのような情報を、誰と、どの範囲まで共有するのかを整理しておくことが重要です。
園児情報共有同意書が必要となるケース
園児情報共有同意書は、園児に関する情報を複数の職員や外部関係者との間で共有する可能性がある場合に活用できます。
園内の職員間で園児情報を共有する場合
日常の保育では、担任保育士だけでなく、園長、看護師、栄養士、調理員、延長保育担当者など複数の職員が園児に関わることがあります。たとえば、園児に食物アレルギーがある場合には、誤食を防止するため、必要な職員が正確な情報を把握しておく必要があります。園児情報共有同意書によって、園内で共有する情報の目的や範囲をあらかじめ明確にしておくことで、必要な情報共有を行いやすくなります。
医療機関と連携する場合
園児の健康状態によっては、医師、歯科医師その他の医療関係者と連携することがあります。
特に、
- 持病がある
- 重度のアレルギーがある
- 継続的な服薬や健康管理が必要である
- 園生活において医療上の配慮が必要である
といった場合には、適切な保育を行うために必要な情報共有が重要になります。
自治体や支援機関と連携する場合
園児の発達や家庭環境等について継続的な支援が必要となる場合には、自治体、保健センター、児童相談所、療育機関、発達支援機関などと連携することがあります。このような場合にも、共有する情報を必要な範囲に限定し、情報共有の目的を明確にしておくことが重要です。
就学に向けて小学校等と連携する場合
卒園や小学校への就学に際して、園児が新しい環境でも適切な支援を受けられるよう、園での生活状況や必要な配慮事項等を関係機関と共有する場合があります。特に継続的な配慮や支援が必要な園児については、保育園から小学校等への適切な情報の引継ぎが重要になります。
業務委託先が園児情報を取り扱う場合
保育園では、給食、健康管理、システム運用、写真管理などの業務を外部事業者へ委託する場合があります。委託業務の内容によって園児情報を取り扱う必要がある場合には、園側で情報の提供範囲を整理するとともに、委託先に適切な情報管理を求めることが大切です。
園児情報共有同意書に盛り込むべき主な項目
園児情報共有同意書を作成するときは、保護者が情報共有の内容を具体的に理解できるようにすることが重要です。主な項目として、次のような内容が挙げられます。
- 情報共有の目的
- 共有する園児情報の種類
- 園内における情報共有の範囲
- 外部関係者・関係機関との情報共有
- 外部へ提供する情報の範囲
- 緊急時における情報共有
- 法令等に基づく情報提供
- 園児情報の安全管理
- 業務委託先における情報の取扱い
- 目的外利用の禁止
- 保護者による情報更新への協力
- 同意内容の変更・撤回
- 卒園・退園後の情報の取扱い
単に情報共有への包括的な同意だけを求めるのではなく、共有の目的、対象情報、共有先、管理方法などを整理しておくことがポイントです。
園児情報共有同意書の条項ごとの解説
1. 情報共有の目的
最初に明確にしておきたいのが、園児情報を共有する目的です。本ひな形では、安全かつ適切な保育、健康管理、生活支援、発達支援その他必要な支援を行うことを情報共有の目的としています。目的を明確にしておくことで、園児情報を必要以上に利用したり、当初想定していなかった用途へ転用したりすることを防ぎやすくなります。
2. 共有する情報の範囲
園児情報といっても、その内容は多岐にわたります。
本ひな形では、
- 氏名、生年月日、住所などの基本情報
- 保護者や緊急連絡先に関する情報
- 健康状態、既往歴、アレルギー、服薬に関する情報
- 発育、発達、生活習慣、行動に関する情報
- 食事、排泄、睡眠などの園生活に関する情報
- 送迎や緊急時対応に関する情報
- 個別の配慮や支援に関する情報
- 保育記録、健康記録、事故記録等
などを対象としています。園によって実際に取り扱う情報は異なるため、自園の運用に合わせて項目を確認する必要があります。
3. 園内における情報共有
保育園では、複数の職員が同じ園児に関わります。そのため、適切な保育を行うためには、必要な情報を職員間で共有することが重要です。一方で、すべての職員が園児に関するすべての情報を知る必要があるとは限りません。そこで、本ひな形では、園長、担任保育士、看護師、栄養士、調理員などのうち、職務上その情報を知る必要がある者に対し、必要な範囲で共有する構成としています。
4. 外部関係者との情報共有
園児への適切な支援のためには、園内だけではなく外部機関との連携が必要になる場合があります。本ひな形では、医療機関、自治体、保健センター、児童相談所、療育機関、発達支援機関、小学校などを共有先として想定しています。ただし、外部機関と連携する可能性があるからといって、園が保有する情報をすべて提供する必要があるわけではありません。実際の情報共有では、連携の目的に照らして必要な情報を判断することが重要です。
5. 健康・発達情報の取扱い
健康状態、既往歴、アレルギー、発達状況などの情報は、園児の安全や適切な支援に直結する重要な情報です。一方で、その性質上、慎重な取扱いも求められます。園児情報共有同意書では、こうした情報を共有する必要性を明確にするとともに、共有先や共有範囲を適切に管理できるようにしておくことが大切です。
6. 緊急時の情報共有
保育中に園児が急病となったり、事故によって負傷したりした場合には、通常の情報共有とは異なり、迅速な対応が必要になります。
たとえば救急搬送が必要になった場合、医療機関等へ、
- 園児の氏名
- 健康状態
- 既往歴
- アレルギー
- 服薬状況
- 緊急連絡先
などを伝える必要が生じることがあります。保護者への確認を待つことで園児の安全確保に支障が生じる状況も考えられるため、緊急時に必要な情報を共有する可能性について明記しておくことが重要です。
7. 法令等に基づく情報提供
情報提供について保護者の同意を確認する仕組みを設けていても、法令に基づく場合などには、別の根拠により情報提供が必要となることがあります。そのため、本ひな形では、法令に基づく照会や行政機関等からの適法な要請などがある場合には、法令等に従って必要な情報を提供する場合があることを明記しています。
8. 情報の安全管理
同意を取得するだけでは、園児情報の適切な管理が完了するわけではありません。園側では、情報の漏えい、紛失、改ざん、不正利用、権限のない者による閲覧などを防止するため、必要な管理を行うことが重要です。紙の書類で管理する場合と、保育ICTシステム等の電子データで管理する場合では、必要な対策も異なります。園児情報共有同意書だけでなく、園内の情報管理ルールや職員教育と組み合わせて運用することが重要です。
9. 業務委託先への情報提供
園が業務を外部事業者へ委託する場合、その業務内容によっては園児情報を取り扱わせる必要が生じます。その場合には、業務遂行に必要な範囲を超えて情報を提供しないことに加え、委託先に対して適切な情報管理を求めることが大切です。園児情報共有同意書とあわせて、園と委託事業者との契約においても、秘密保持や情報管理に関する事項を整理しておくとよいでしょう。
10. 目的外利用の禁止
園児情報を取得した目的と実際の利用方法が大きく異なると、保護者との認識のずれにつながります。そのため、園児情報共有同意書では、取得または共有した情報について、定められた目的その他保護者に示した利用目的を超えて利用しないことを明確にしておくことが重要です。別の目的で利用する必要が生じた場合には、法令上認められる場合を除き、必要に応じて改めて保護者への説明や同意取得を検討します。
11. 保護者による情報更新
園児情報は入園時に取得して終わりではありません。
特に、
- 新たなアレルギーが判明した
- 服薬内容が変更された
- 健康状態に変化があった
- 緊急連絡先が変更された
- 送迎者が変更された
などの場合、古い情報のままでは適切な対応ができない可能性があります。そのため、重要な変更があった場合には保護者から速やかに園へ申し出てもらい、園側も必要に応じて情報を更新する仕組みを設けておくことが大切です。
12. 同意の変更・撤回
一度同意した情報共有について、その後の事情によって保護者が内容の変更や撤回を希望する場合もあります。本ひな形では、法令上必要な場合や園児の安全確保上必要となる場合を除き、保護者が同意内容の変更または撤回を申し出ることができる構成としています。ただし、情報共有ができなくなることで園児の健康管理や安全確保に影響が生じる場合も考えられます。その場合には、単純に同意撤回を処理するだけではなく、園と保護者の間で影響や代替対応について確認することが重要です。
園児情報共有同意書を作成する際の注意点
情報共有の対象を広げすぎない
情報共有同意書を作成する際には、将来のあらゆる可能性を想定して共有先を広く設定したくなる場合があります。しかし、保護者にとって共有範囲が分かりにくくなるため、実際の園運営で必要となる共有先を整理することが重要です。園内共有、医療機関との連携、行政機関との連携など、目的別に整理すると分かりやすくなります。
共有する情報を必要な範囲に限定する
関係機関との連携が必要だからといって、園児に関するすべての情報を共有するとは限りません。たとえば健康管理を目的とする情報共有と、就学支援を目的とする情報共有では、必要となる情報が異なります。誰に、何の目的で、どの情報を共有する必要があるのかを個別に判断することが重要です。
園のプライバシーポリシー等と内容を合わせる
園児情報共有同意書だけを独立して作成すると、園の個人情報保護方針や入園時の説明書類などと内容が食い違う可能性があります。
そのため、
- プライバシーポリシー
- 重要事項説明書
- 入園時の個人情報取扱いに関する同意書
- 写真・動画掲載に関する同意書
- 医療機関等への情報提供同意書
など、園で使用している他の書類との整合性も確認することが大切です。
写真や動画の掲載同意とは分けて考える
園児情報共有同意書を取得しているからといって、園児の写真や動画をホームページ、SNS、園だより等へ自由に掲載できるとは限りません。
保育や支援のための情報共有と、不特定または多数の者が閲覧する可能性のある媒体への掲載では目的や性質が異なります。
写真・動画、園だより、ホームページ、卒園アルバム等への掲載については、それぞれの利用目的や公開範囲に応じた同意書を用意する方法が分かりやすいでしょう。
同意書を取得するだけで終わらせない
園児情報共有同意書は、情報管理体制そのものを代替する書類ではありません。
実務では、
- 園児情報を閲覧できる職員の範囲を決める
- 紙書類の保管場所を管理する
- 保育ICTシステムのアカウントを適切に管理する
- 退職者等のアクセス権限を速やかに削除する
- 職員に守秘義務や個人情報管理について周知する
- 外部委託先の情報管理方法を確認する
といった運用面の対策も重要になります。
園児情報共有同意書と個別の情報提供同意書の使い分け
園児情報共有同意書は、日常的な保育や支援に伴う情報共有について包括的に整理する書類として利用できます。一方、特定の医療機関、自治体、支援機関等へ具体的な情報を提供する場合には、個別の情報提供同意書を使用する方法もあります。
たとえば、
- 園児情報共有同意書:園内外における基本的な情報共有ルールを確認する
- 医療機関への情報提供同意書:医療機関へ提供する情報や目的を具体的に確認する
- 自治体への情報提供同意書:行政機関との情報連携について確認する
- 関係機関への情報提供同意書:療育機関や支援機関等への情報提供について確認する
といった使い分けが考えられます。情報の内容や共有目的に応じて書類を使い分けることで、保護者にとっても、どの情報が何のために共有されるのかを理解しやすくなります。
園児情報共有同意書を電子契約で取得するメリット
園児情報共有同意書は、入園時などに多数の保護者から取得する可能性がある書類です。そのため、紙だけで管理すると、配布、回収、保管、検索などの事務負担が大きくなる場合があります。
電子化することで、
- 保護者へオンラインで同意書を送付できる
- 未提出者を確認しやすくなる
- 同意取得日を記録しやすくなる
- 書類を検索・確認しやすくなる
- 紙書類の保管スペースを削減できる
といったメリットが考えられます。特に、園児ごとに複数の同意書を管理している保育園では、書類を電子化して整理することで、必要な同意内容を確認しやすくなります。
まとめ
園児情報共有同意書は、保育園が園児の安全な保育、健康管理、発達支援などを行うために必要な情報共有について、保護者との認識を明確にするための書類です。
作成する際には、単に情報共有への同意を求めるだけではなく、
- 情報共有の目的
- 共有する情報
- 園内で共有する職員の範囲
- 外部関係機関への情報提供
- 緊急時の取扱い
- 情報の安全管理
- 目的外利用の防止
- 同意内容の変更・撤回
などを具体的に整理することが重要です。また、園児情報共有同意書だけですべての情報利用を一括して処理するのではなく、医療機関への情報提供、自治体への情報提供、写真・動画の掲載など、目的が異なるものについては個別の同意書との使い分けも検討するとよいでしょう。園児に関する情報は、安全な保育を実現するために欠かせない一方、適切な管理が求められる重要な情報でもあります。保護者に情報共有の目的と範囲を分かりやすく説明し、園内の情報管理体制とあわせて運用することが、適切な情報共有につながります。