金融商品に関する意向確認書(FP)とは?
金融商品に関する意向確認書(FP)とは、ファイナンシャルプランナー(FP)が資産形成や資産運用などの相談を受ける際に、相談者が金融商品についてどのような目的や希望を持っているのかを確認し、その内容を記録するための書面です。金融商品について相談する場合、単に「できるだけ増やしたい」「安全に運用したい」という希望だけでは、相談者が実際にどの程度のリスクを許容できるのか、いつまで運用する予定なのか、どの程度の資金を投資に回せるのかなどが分かりません。
そこで、金融商品に関する意向確認書を利用して、
- 金融商品を利用する目的
- 関心のある金融商品の種類
- これまでの投資経験
- 希望する運用期間
- リスクに対する考え方
- 元本割れに対する認識
- 投資に充てることができる資金
- 安全性・収益性・流動性の優先順位
などを整理しておくことで、FPと相談者との間で相談の前提となる認識を共有しやすくなります。特に、金融商品は種類によって価格変動、元本割れ、為替変動、信用リスク、流動性などの性質が大きく異なります。そのため、相談者の意向を確認しないまま金融商品に関する情報提供を進めると、相談者が求めている内容とFPが説明する内容との間にずれが生じる可能性があります。金融商品に関する意向確認書は、このような認識のずれを防ぎ、相談内容を明確にするための基礎資料として活用できます。なお、本ひな形はmysignプロジェクトの方針に基づき、単なるチェック項目だけではなく、目的、確認事項、情報提供、非保証、自己判断、個人情報の取扱いなどを体系的に整理する構成としています。
金融商品に関する意向確認書が必要となるケース
金融商品に関する意向確認書は、特にFPが資産形成や金融商品に関連する相談を受ける場面で活用できます。
資産形成について相談を受ける場合
相談者から「将来のために資産形成を始めたい」という相談を受けた場合でも、資産形成の目的は人によって異なります。例えば、老後資金を20年以上かけて準備したい人と、数年後の住宅購入資金を準備したい人では、想定される運用期間や必要となる資金の流動性が異なります。そのため、相談開始時点で資産形成の目的や予定期間などを確認しておくことが重要です。
NISAやiDeCoなどについて相談を受ける場合
NISAやiDeCoなどの制度について相談を受ける場合にも、相談者の目的を整理しておくことが有効です。制度について一般的な説明を行う場合と、具体的な金融商品の選択に関する相談では、FPが提供する情報の性質も異なります。そのため、相談者が制度そのものについて知りたいのか、資産形成方法について検討したいのか、金融商品について情報を得たいのかなどを確認しておくと、相談内容を整理しやすくなります。
投資信託や株式などに関する相談を受ける場合
投資信託、株式、債券、ETFなどは、商品によって価格変動やリスクの程度が異なります。相談者が元本の安全性を重視しているにもかかわらず、価格変動の大きい金融商品を前提とした説明を行えば、相談者の意向との間にずれが生じる可能性があります。そのため、どの程度の価格変動を許容できるのか、どの程度の期間運用できるのかなどを事前に確認することが重要です。
投資経験が少ない相談者から相談を受ける場合
金融商品に関する知識や投資経験には大きな個人差があります。初めて投資を検討する相談者と、長期間にわたり株式や投資信託を保有してきた相談者では、理解している金融用語やリスクに対する認識が異なる場合があります。投資経験を確認しておけば、相談者の理解状況を踏まえて説明内容を整理しやすくなります。
継続的なFP相談を行う場合
相談者の金融商品に関する意向は、常に同じとは限りません。結婚、出産、住宅購入、転職、退職、相続などによって家計や保有資産の状況が変化すれば、許容できるリスクや必要となる資金も変わる可能性があります。継続相談では、最初に意向確認書を作成するだけでなく、重要なライフイベントや資産状況の変化があった際に内容を再確認する方法も考えられます。
金融商品に関する意向確認書に記載する主な項目
金融商品に関する意向確認書では、単に希望する商品名を記録するだけでなく、金融商品を検討する背景まで確認できる内容にすることがポイントです。主な確認事項としては、次のようなものがあります。
- 相談者の基本情報
- 金融商品を検討する目的
- 希望又は関心のある金融商品
- 投資経験
- 金融商品に関する知識・理解
- 希望する運用期間
- リスクに関する意向
- 元本割れに関する認識
- 投資可能資金
- 流動性に関する希望
- 収益性、安全性及び流動性の優先順位
- 手数料その他の費用に関する認識
- 将来の運用成果が保証されないことの確認
- 相談者自身による最終判断
これらを組み合わせることで、「どの商品に興味があるか」だけではなく、「なぜ金融商品を検討しているのか」「どこまでリスクを受け入れられるのか」という背景まで確認できます。
金融商品に関する意向確認書の項目ごとの解説
1. 金融商品を利用する目的
最初に確認したいのが、金融商品を利用する目的です。
例えば、
- 老後資金を準備したい
- 教育資金を準備したい
- 余裕資金を運用したい
- 住宅購入に備えたい
- 定期的な収益を得たい
- 現在の資産をできるだけ維持したい
といった目的が考えられます。目的が異なれば、必要となる資金の時期や運用期間も変わります。意向確認書では、「投資をしたい」という表面的な希望だけではなく、その資金を何のために使う予定なのかまで整理しておくことが重要です。
2. 希望する金融商品
相談者がどのような金融商品に関心を持っているのかも確認します。預貯金、債券、株式、投資信託、ETF、保険、外貨建て商品など、金融商品にはさまざまな種類があります。また、相談者自身が特定の商品を希望している場合でも、その商品が相談目的に合っているとは限りません。そのため、「希望商品=最終的に選択する商品」とするのではなく、相談開始時点における相談者の希望として記録することがポイントです。
3. 投資経験
金融商品に関する相談では、これまでの投資経験も重要な確認事項です。
具体的には、
- 投資経験の有無
- 経験した金融商品の種類
- 投資経験年数
- 現在保有している金融商品
- 過去に投資損失を経験したことがあるか
などを確認します。単に「投資経験あり」とするだけでなく、どのような商品をどの程度の期間利用してきたのかを確認すると、相談者の経験をより具体的に把握できます。
4. 運用期間
金融商品を検討する際には、いつまで資金を運用できるのかという時間軸も重要です。例えば、10年以上使用する予定のない余裕資金と、2年後に住宅購入で使用する予定の資金では、同じように扱うことはできません。
そのため、意向確認書では、
- 1年未満
- 1年以上3年未満
- 3年以上5年未満
- 5年以上10年未満
- 10年以上
など、一定の期間ごとに確認できるようにしておくと実務上使いやすくなります。
5. リスク許容度
金融商品に関する意向確認で特に重要となるのが、相談者がどの程度のリスクを許容できるかという点です。例えば、「多少価格が変動しても中長期的な収益を重視したい」という人と、「利益が少なくてもできるだけ元本割れを避けたい」という人では、金融商品に対する考え方が大きく異なります。意向確認書では、単純に「リスクを取れる・取れない」と二択にするのではなく、複数段階で確認できるようにすると相談者の考えを把握しやすくなります。
6. 元本割れに関する認識
金融商品によっては、市場環境などによって購入時の金額を下回る可能性があります。相談者が「投資だから多少減ることは理解している」と考えているのか、「元本は減らないものだと思っている」のかでは、相談の前提が大きく異なります。そのため、元本保証の有無や損失可能性について相談者がどのように認識しているのかを確認しておくことが重要です。
7. 投資可能資金
金融商品への投資を検討する場合には、投資額だけでなく、その資金がどのような性質の資金なのかも重要になります。生活費や近い将来必要になる資金まで投資に充ててしまえば、価格が下落している時期に資金が必要となる可能性があります。
そのため、
- 投資予定額
- 毎月の積立予定額
- 近い将来使用する予定があるか
- 使用予定がある場合の時期と目的
などを確認しておくことが考えられます。
8. 流動性に関する意向
金融商品は、必ずしも必要なときに希望する条件で現金化できるとは限りません。商品によっては売却や解約に条件が設けられていたり、売却時の市場価格によって損失が生じたり、解約に伴う費用が発生したりする可能性があります。そのため、相談者がいつ頃資金を必要とする可能性があるのかについても確認しておくことが重要です。
9. 安全性・収益性・流動性の優先順位
金融商品を検討するときには、安全性だけでなく、収益性や流動性とのバランスも考える必要があります。例えば、高い収益性を期待するほど価格変動などのリスクを伴う場合があります。一方、安全性を重視すれば、期待できる収益が限定されることもあります。そのため、相談者が何を最も重視するのかを確認しておくことで、相談の方向性を整理できます。
10. 手数料・費用
金融商品によっては、購入時だけでなく保有中や売却・解約時にも費用が発生する場合があります。意向確認書では、具体的な商品の費用を一律に記載するのではなく、金融商品には各種費用が生じる場合があり、実際の取引前には取扱事業者が提供する資料等を確認する必要があることを整理しておく方法があります。
FPが金融商品について説明するときの注意点
FP資格を有していることと、あらゆる金融関連業務を自由に行えることは同じではありません。そのため、金融商品に関する意向確認書を作成する際には、FPが実際に提供するサービスの範囲に合わせて内容を調整することが重要です。特に、具体的な金融商品の取扱いや勧誘、投資判断に関わる業務などについては、その事業者が行う業務内容や登録・資格等を踏まえた確認が必要です。意向確認書にも、FPが法令上必要となる登録、許可その他の資格を有しない業務については行わない旨を明記しておくことで、相談業務の範囲を整理しやすくなります。
意向確認書と金融商品の申込書は分けて考える
金融商品に関する意向確認書を作成する際には、金融商品の申込みそのものと混同しないことも重要です。意向確認書は、相談者がどのような目的や希望を持っているのかを確認するための書面です。したがって、意向確認書に署名したことだけをもって、特定の株式、投資信託、保険その他の金融商品の購入契約が成立するという構成にはしないことが適切です。実際に金融商品の取引を行う場合には、取扱事業者から提供される契約関係書類や商品説明資料等を確認し、それぞれ必要となる手続を行うことになります。
将来の運用成果を保証しないことを明確にする
資産形成相談では、シミュレーションを利用するケースがあります。例えば、「毎月3万円を20年間積み立てた場合」「一定の利回りで運用できた場合」といった条件を設定し、将来の資産額を試算することがあります。しかし、このような試算は一定の前提条件に基づくものであり、実際の運用結果を保証するものではありません。金融市場、金利、為替、企業業績その他の条件は将来変化する可能性があります。そのため、意向確認書では、過去の運用実績やシミュレーション、将来予測等が将来の収益や資産額を保証するものではないことを明確にしておくことが重要です。
相談者から正確な情報を提供してもらう
FP相談では、相談者から提供される情報が相談内容の基礎になります。例えば、相談者が実際には数年後に住宅購入を予定しているにもかかわらず、その情報をFPに伝えていなければ、資金を使用する時期を考慮した相談が難しくなります。
そのため、意向確認書では、
- 収入
- 支出
- 資産
- 負債
- 投資経験
- 資産形成の目的
- 資金を必要とする時期
などについて、相談に必要な範囲で正確な情報を提供してもらうことが重要です。また、提供された情報に誤りや不足がある場合には、試算結果や相談内容が実際の状況に適合しない可能性があることも明確にしておくとよいでしょう。
意向は定期的に確認することが重要
一度作成した意向確認書を永久にそのまま利用できるとは限りません。相談者の状況は時間とともに変化します。
例えば、
- 結婚した
- 子どもが生まれた
- 住宅を購入した
- 転職して収入が変わった
- 退職した
- 相続によって資産状況が変わった
- 大きな投資損失を経験してリスクに対する考え方が変わった
といった事情があれば、以前の意向確認内容が現在の状況と一致しなくなる可能性があります。継続的にFP相談を行う場合には、重要な事情の変更があったときに意向を再確認できる仕組みを設けておくことが実務上有効です。
金融商品に関する意向確認書を作成する際の注意点
相談業務の範囲を明確にする
FP業務としてどこまで対応するのかを明確にしておくことが重要です。一般的な家計相談や資産形成に関する情報提供と、具体的な金融商品に関係する業務とでは、確認すべき事項が異なる場合があります。実際の事業内容に合わせて書面を調整しましょう。
形式的な確認だけにしない
意向確認書を作成していても、相談者が内容を理解していなければ十分な確認にはつながりません。特に、リスク、元本割れ、費用、運用期間などの重要事項については、相談者の回答だけを記録するのではなく、必要に応じて内容を説明した上で確認することが大切です。
他の確認書類との内容を統一する
FP事業者によっては、
- 投資経験・リスク許容度確認書
- 適合性確認書
- 投資判断に関する確認書
- 元本保証なしに関する確認書
- 手数料・報酬に関する確認書
- 将来予測に関する免責確認書
などを別途使用する場合があります。複数の確認書を使用する場合には、書面ごとに説明内容や責任範囲が矛盾しないように整理することが重要です。
具体的な事業内容に合わせてカスタマイズする
独立系FP、保険代理店を兼ねるFP、金融商品仲介業に関係する事業者などでは、実際に提供しているサービスの内容が異なります。したがって、公開されているひな形をそのまま利用するのではなく、自社が実際に行う業務、報酬体系、金融商品との関係、必要な登録・資格などに合わせて修正する必要があります。
個人情報の管理にも注意する
金融商品に関する意向確認書には、氏名だけでなく、収入、資産、負債、家族構成、投資経験など、相談者にとって重要な情報が記録される場合があります。そのため、書面を作成するだけではなく、取得した情報をどのように保存・管理するのかについても適切な運用を行うことが重要です。
金融商品に関する意向確認書を電子契約・電子書面で管理するメリット
金融商品に関する意向確認書は、相談開始時だけでなく、継続相談において再確認する可能性があります。電子的に作成・管理しておけば、いつ、どのような内容について確認したのかを整理しやすくなります。また、相談者の意向が変化した場合にも、新しい確認書を作成して過去の記録と区別して管理することができます。特にオンラインFP相談では、相談者とFPが対面しないため、確認事項を書面として残しておくことは、双方の認識を整理するうえでも有効です。
まとめ
金融商品に関する意向確認書(FP)は、相談者が金融商品についてどのような目的や希望を持っているのかを整理し、FPとの認識を共有するための書面です。金融商品について相談を行う場合には、単に希望する商品を聞くだけではなく、投資目的、投資経験、運用期間、リスク許容度、投資可能資金、元本割れへの認識、安全性・収益性・流動性の優先順位などを総合的に確認することが重要です。また、相談者の状況や意向は、ライフイベントや資産状況の変化によって変わる可能性があります。そのため、一度確認して終わりにするのではなく、必要に応じて内容を見直せる運用にしておくとよいでしょう。金融商品に関する意向確認書を適切に整備することで、相談者の希望とFPが提供する相談内容とのずれを防ぎ、相談時に確認した事項を記録として残しやすくなります。