相談報酬に関する合意書(FP)とは?
相談報酬に関する合意書(FP)とは、ファイナンシャルプランナー(FP)が相談者に対して有料の相談サービスを提供する際に、相談報酬の金額、料金体系、支払方法、追加費用、キャンセル料、返金条件などを事前に確認するための書面です。FPの相談業務には、家計改善、資産形成、住宅購入、教育資金、老後資金、保険、相続・贈与など幅広い分野があります。また、料金体系についても、1回ごとの定額制、時間制、月額制、プラン単位の料金など、FPやサービスによってさまざまです。
そのため、相談開始前に報酬条件を書面で明確にしておかないと、
- 相談料金はいくらなのか
- どこまでが基本料金に含まれるのか
- 追加相談には別料金が発生するのか
- 交通費や資料取得費は誰が負担するのか
- キャンセルした場合に料金が発生するのか
- 相談途中で終了した場合に返金されるのか
といった点について、FPと相談者の認識が食い違う可能性があります。相談報酬に関する合意書を作成しておくことで、単に相談料金を知らせるだけではなく、FPが提供するサービスと相談者が負担する費用との対応関係を整理できます。
相談報酬に関する合意書が必要となるケース
FPが相談サービスを提供するすべての場面で必ず独立した合意書が必要になるわけではありません。しかし、特に有料相談や継続的なサービスでは、報酬条件を書面で確認しておくことが重要です。
有料のFP相談を行う場合
1回数千円、数万円などの相談料を設定してFP相談を行う場合には、相談開始前に料金を明確にしておくことが重要です。特に、相談時間によって料金が変わる場合には、1時間当たりの料金だけでなく、延長した場合の料金についても確認できるようにしておくと、相談終了後のトラブルを防ぎやすくなります。
継続相談を行う場合
毎月一定額を支払う顧問型サービスや、複数回の面談をセットにしたFPサービスでは、1回限りの相談よりも契約関係が複雑になります。月額料金、相談回数、契約期間、追加相談の料金などを明確にしておくことで、相談者もサービス内容と費用を把握しやすくなります。
ライフプラン表などの資料を作成する場合
FP相談では、面談だけでなく、ライフプラン表、キャッシュフロー表、資産形成シミュレーションなどの資料を作成することがあります。相談料に資料作成費が含まれているのか、それとも別料金なのかを事前に定めておくことが重要です。
追加相談や追加業務が発生する場合
当初は1回の相談のみを予定していても、その後、追加面談や再計算、資料の修正、個別調査などを依頼される場合があります。追加料金について何も決めていなければ、FP側は追加作業をしたにもかかわらず報酬を請求しにくくなったり、反対に相談者から想定外の請求だと受け取られたりする可能性があります。
相談報酬に関する合意書に盛り込むべき主な内容
相談報酬に関する合意書では、料金だけを記載するのではなく、報酬に関連する条件を一体として整理することがポイントです。主な項目としては、次のようなものがあります。
- 合意書の目的
- 対象となる相談業務
- 相談報酬の金額
- 報酬体系
- 支払方法及び支払期限
- 追加相談・追加業務の料金
- 交通費などの実費
- 相談日時の変更
- キャンセル料
- 返金条件
- 第三者から受領する報酬等
- 税金その他の公租公課
- 専門家へ依頼する場合の費用
- 相談結果の非保証
- 他の相談契約等との関係
- 合意内容の変更
- 協議事項
- 準拠法及び合意管轄
FPごとにサービス内容や料金体系が異なるため、実際の運用方法に合わせて調整することが重要です。
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 対象となる相談業務
まず明確にしておきたいのが、相談報酬が何に対して支払われるものなのかという点です。
例えば、FP相談といっても、
- 家計改善相談
- 資産形成相談
- 住宅購入相談
- 教育資金相談
- 老後資金相談
- 保険相談
- 相続・贈与に関する一般的な相談
- ライフプランやキャッシュフロー資料の作成
など、サービス内容は幅広く考えられます。相談業務の範囲を明確にしておけば、相談者から契約後に当初想定していなかった業務を求められた場合にも、基本報酬に含まれる業務なのか追加業務なのかを判断しやすくなります。
2. 相談報酬
相談報酬については、具体的な金額を確認できるようにします。
単に「相談料○円」とするだけでなく、
- 相談内容
- 相談日時
- 相談時間
- 相談回数
- 報酬金額
- 税込・税別の区別
などを記載できるようにしておくと実務上便利です。特に、相談時間や回数によって料金が変わるサービスでは、何に対する料金なのかを明確にしておくことが重要になります。
3. 報酬体系
FPサービスでは、さまざまな報酬体系が考えられます。
代表的なものとして、
- 1時間○円などの時間制
- 1回○円などの定額制
- 毎月○円などの月額制
- ライフプラン作成一式○円などのプラン制
があります。自社のサービスに合った報酬体系を明示し、複数の料金方式を採用している場合には、今回の相談にどの方式が適用されるのか分かるようにしておきます。
4. 支払方法と支払期限
報酬額を決めても、いつ、どのような方法で支払うのかが決まっていなければ、支払いをめぐる問題が発生する可能性があります。銀行振込、クレジットカード、現金その他の決済方法を定めるとともに、相談日前払いなのか相談後払いなのか、具体的な支払期限はいつなのかを明確にします。銀行振込の場合には、振込手数料をどちらが負担するのかについても記載しておくとよいでしょう。
5. 追加相談・追加業務
FP相談では、相談後に追加質問や再計算を依頼されることがあります。
例えば、当初の相談後に、
- 別条件によるキャッシュフローを作成してほしい
- 住宅ローンの別パターンも比較してほしい
- 追加で面談を実施してほしい
- 資料を大幅に修正してほしい
といった依頼が発生するケースです。こうした業務について追加料金を設定する場合には、「どこからが追加業務になるのか」をできる限り明確にしておく必要があります。また、追加業務を始めてから料金を知らせるのではなく、原則として作業開始前に追加料金を提示し、相談者の同意を得る仕組みにしておくことがトラブル防止につながります。
6. 実費の取扱い
対面相談のための交通費、遠方への出張に伴う宿泊費、資料取得費、郵送費などが発生する場合があります。これらを相談報酬に含めるのか、別途実費として請求するのかを明確にしておきます。特に高額な実費が発生する可能性がある場合には、事前に金額又は概算額を説明する運用が望ましいでしょう。
7. キャンセル料
予約制のFP相談では、直前キャンセルや無断キャンセルへの対応も重要です。
例えば、
- 一定日前までは無料
- 前日は相談報酬の50%
- 当日は相談報酬の100%
- 無断キャンセルは相談報酬の100%
など、事業者の運営方法に応じて条件を設定します。ただし、キャンセル料を設定する場合には、契約内容や相談者が消費者に該当するかなどを踏まえ、消費者契約法その他の関係法令にも注意して内容を設定する必要があります。
8. 返金条件
相談報酬の返金についても、あらかじめ考えておく必要があります。FPが予定していた相談業務を適切に提供したにもかかわらず、相談者が「期待していた結果ではなかった」という理由だけで当然に報酬を返金する仕組みにすると、相談業務の性質と合わない場合があります。一方、FP側の事情によって予定していた相談が実施されなかった場合には、未実施部分について返金や日程変更などの対応が必要になる場合があります。そのため、「どのような場合に返金するのか」と「どのような場合には原則として返金対象とならないのか」を整理しておくことが大切です。
9. 第三者から受領する報酬等
FPによっては、相談者から直接相談料を受け取るだけでなく、商品・サービスの紹介等に関連して第三者から紹介料、手数料その他の経済的利益を受ける場合があります。このような報酬等が存在すると、相談者から見れば「FPの提案が自分のためなのか、手数料のためなのか」が分かりにくくなる可能性があります。そのため、第三者から報酬等を受領するビジネスモデルでは、適用される法令等を確認した上で、必要な説明や利益相反への対応を行うことが重要です。
10. 専門家費用
FP相談では、税金、相続、法律、登記、社会保険などに関する問題が出てくることがあります。しかし、相談内容によっては、税理士、弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士その他の資格者による対応が必要になります。その場合、専門家への依頼費用までFPの相談報酬に含まれていると誤解されないよう、専門家に対する報酬・費用は原則として別途必要になることを明確にしておくとよいでしょう。
11. 相談結果の非保証
FPへの相談料は、一般に「利益が出ること」や「資産が増えること」そのものに対する対価ではなく、相談サービスを提供することに対する報酬として整理することが重要です。例えば、資産形成について相談したとしても、将来の市場環境や金利、物価、税制、相談者自身の収入・支出などによって結果は変わります。
そのため、
- 特定の投資成果
- 資産の増加
- 特定の節税効果
- 住宅ローン等の審査通過
- 保険金等の支払い
などを保証するものではないことを明確にしておくことが重要です。
相談報酬に関する合意書とFP相談契約書の違い
相談報酬に関する合意書は、主として「お金に関する条件」を確認する書面です。一方、FP相談契約書では、相談業務そのものについて、業務内容、契約期間、秘密保持、個人情報、禁止事項、責任範囲、契約解除などを幅広く定めることが一般的です。したがって、相談報酬に関する合意書は、FP相談契約書を完全に置き換えるものではなく、相談契約における報酬部分を補完する書面として利用できます。例えば、「FP相談契約書+相談報酬に関する合意書」という組み合わせにすることで、相談サービス全体のルールと個別の料金条件を分けて管理することもできます。料金プランが変更された場合にも、基本となる相談契約書を変更せず、報酬合意書だけを更新できるため、継続相談を行うFPにとって使いやすい運用方法の一つです。
相談報酬に関する合意書を作成する際の注意点
料金を曖昧にしない
「別途相談」「必要に応じて追加料金」といった表現だけでは、相談者が最終的にいくら支払うことになるのか判断できない可能性があります。可能な限り具体的な金額を記載し、事前に金額を確定できない場合には、少なくとも計算方法や追加料金が発生する条件を示しておくことが重要です。
税込・税別を明確にする
報酬額を記載するときは、税込なのか税別なのかを明確にします。ホームページ、料金表、申込画面、相談契約書、報酬合意書など複数の媒体で料金を表示している場合には、それぞれの記載内容に矛盾がないか確認しましょう。
無料相談との境界を明確にする
「初回相談無料」などのサービスを提供している場合には、無料相談の範囲と有料相談に切り替わる条件を明確にすることが重要です。無料相談後に有料サービスへ移行する場合には、相談者が料金を十分に確認できる状態で申込みを受ける運用にすると、料金トラブルを防ぎやすくなります。
キャンセル条件を申込み前に確認できるようにする
キャンセル料は、相談者にとって重要な契約条件です。合意書だけに記載するのではなく、必要に応じて予約ページや申込画面などでも確認できるようにし、相談者が申込み前に把握できる運用を検討するとよいでしょう。
相談契約書や利用規約との整合性を確認する
FP事業者が相談契約書、利用規約、キャンセルポリシーなどを別途設けている場合、それぞれの書類で異なる料金条件を定めると、どの条件が適用されるのか分からなくなる可能性があります。例えば、利用規約では「前日キャンセル50%」となっている一方、報酬合意書では「前日キャンセル100%」となっている状態は避けるべきです。関連書類をセットで確認し、料金、支払期限、キャンセル、返金等の条件を統一しておくことが重要です。
FPの業務範囲にも注意する
相談料を受け取っているからといって、FPがあらゆる金融・税務・法律関連業務を行えるわけではありません。実際に提供するサービスについては、金融商品取引法、保険業法、税理士法、弁護士法その他の関係法令や、保有する資格・登録等との関係を確認する必要があります。特に資産運用、金融商品、保険、税務、法律などを扱う場合には、「FP相談」という名称だけで判断せず、具体的にどのような助言・紹介・勧誘・手続を行うのかを確認することが重要です。
相談報酬に関する合意書を電子契約で締結する場合
オンラインFP相談では、面談そのものがZoom等のオンラインツールで行われることも多く、報酬に関する合意書についても電子的に締結する運用が考えられます。
電子契約を利用する場合には、
- 相談者が合意した文書を後から確認できるようにする
- 契約締結日時を記録する
- どの料金条件について合意したのか確認できるようにする
- 契約後に一方的に内容を書き換えないよう適切に管理する
- 相談契約書や利用規約との関係を整理する
といった点が重要です。特にオンラインで申込みから決済まで完結するFPサービスでは、相談報酬に関する条件を電子契約や申込記録として残すことで、「料金について説明した・されていない」といった問題を防ぎやすくなります。
相談報酬に関する合意書を活用するメリット
相談報酬に関する合意書を作成する最大のメリットは、FPと相談者の双方が「何に対して、いくら支払うのか」を事前に確認できることです。FP側にとっては、追加相談やキャンセルなどが発生した際の料金請求の根拠を整理できます。相談者側にとっても、契約前に必要な費用を確認できるため、安心して相談を申し込みやすくなります。
さらに、料金条件を書面化する過程で、
- 基本料金に含めるサービス
- 追加料金を設定するサービス
- 無料対応する範囲
- キャンセル時の取扱い
- 返金する場合の条件
を事業者自身が整理できるため、FPサービスの料金体系を明確にするという意味でも有効です。
まとめ
相談報酬に関する合意書(FP)は、ファイナンシャルプランナーと相談者との間で、相談料金や支払条件を明確にするための重要な書面です。特に有料相談では、単に「相談料○円」と記載するだけではなく、相談業務の範囲、料金体系、支払期限、追加相談、実費、キャンセル料、返金条件、第三者から受領する報酬等まで整理しておくことで、料金をめぐる認識の相違を防ぎやすくなります。また、FP相談では資産形成、保険、住宅、相続、税金など幅広いテーマを扱うため、相談報酬の合意と同時に、FPがどこまでの業務を提供するのかについても明確にしておくことが大切です。実務では、相談報酬に関する合意書だけで完結させるのではなく、FP相談契約書、申込書、利用規約、キャンセルポリシー、各種確認書などと内容を整合させながら利用すると、より明確な契約関係を構築できます。