ハラスメント研修契約書とは?
ハラスメント研修契約書とは、企業や団体が研修会社や講師へハラスメント防止研修を依頼する際に、研修内容や報酬、実施方法、責任範囲などを明確に定める契約書です。近年は、パワーハラスメント防止法(労働施策総合推進法)の施行や、企業のコンプライアンス意識の高まりにより、多くの企業でハラスメント研修が実施されています。しかし、契約内容が曖昧なまま研修を実施すると、研修内容に対する認識の違いや、キャンセル、教材の著作権、録画データの利用などを巡るトラブルが発生する可能性があります。ハラスメント研修契約書を締結しておくことで、双方の権利義務を明確にし、安心して研修を実施できる環境を整えることができます。
ハラスメント研修契約書が必要となるケース
次のような場面では、ハラスメント研修契約書を作成しておくことが望まれます。
- 外部講師へハラスメント研修を依頼する場合
- 研修会社へコンプライアンス研修を委託する場合
- 管理職向けハラスメント研修を実施する場合
- 新入社員研修の一環として実施する場合
- オンライン研修を開催する場合
- 全国の拠点で複数回研修を行う場合
- 録画配信やアーカイブ視聴を予定している場合
- 研修教材や動画を継続利用する場合
特にオンライン研修では、録画データや配布資料の利用範囲を契約で定めておくことが重要です。
ハラスメント研修契約書に盛り込むべき主な条項
一般的なハラスメント研修契約書には、次のような条項を盛り込みます。
- 契約の目的
- 研修内容
- 実施日時・場所・オンライン開催方法
- 受講対象者
- 講師の業務範囲
- 研修資料の作成・提供
- 報酬及び支払方法
- 交通費・宿泊費等の負担
- キャンセル及び日程変更
- 教材の著作権
- 録音・録画・配信の可否
- 秘密保持
- 個人情報の取扱い
- 契約解除
- 損害賠償
- 反社会的勢力の排除
- 準拠法及び合意管轄
これらを明文化することで、契約内容が明確になり、トラブル防止につながります。
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 研修内容に関する条項
契約書には、「どのような研修を実施するのか」を具体的に記載します。
例えば、
- パワーハラスメント
- セクシュアルハラスメント
- マタニティハラスメント
- カスタマーハラスメント
- SOGIハラスメント
- 相談窓口の運用方法
など、研修テーマを明確にしておくことで、期待していた内容と異なるというトラブルを防げます。
2. 実施日時・場所・オンライン開催条項
研修の開催日時や場所だけでなく、オンライン開催の場合には、
- 利用するシステム
- 接続方法
- 通信障害時の対応
- 録画の有無
なども定めておくことが重要です。ZoomやTeamsなどを利用する場合は、接続不良時の対応も決めておくと安心です。
3. 報酬及び費用負担条項
報酬については、
- 講師料
- 交通費
- 宿泊費
- 教材印刷費
- 会場費
- オンラインシステム利用料
など、どこまで報酬に含まれるのかを明確にします。追加研修や時間延長が発生した場合の料金も定めておくと実務上役立ちます。
4. 教材・著作権条項
研修資料やスライド、動画教材などは講師や研修会社の知的財産です。
そのため、
- 無断コピー禁止
- 社外配布禁止
- 改変禁止
- 録画データの二次利用禁止
などを契約書へ盛り込むことが一般的です。研修終了後も教材を利用したい場合には、利用範囲を別途定めることが望ましいでしょう。
5. 録音・録画条項
近年はオンライン研修の普及により録画ニーズが増えています。
契約書では、
- 録画の可否
- 録画データの保存期間
- 視聴対象者
- 社内利用のみ認めるか
などを定めておくことが重要です。録画データの無断公開やSNSへの投稿は禁止事項として規定することが望まれます。
6. キャンセル条項
研修では開催直前のキャンセルが問題となることがあります。
そのため、
- 30日前まで無料
- 14日前以降は50%
- 前日・当日は100%
など、キャンセル料を明確に定めるケースが多く見られます。自然災害や感染症など不可抗力の場合の取扱いについても規定しておくと安心です。
7. 秘密保持条項
研修中には、
- 社内規程
- 懲戒事例
- 相談事例
- 社内体制
などの機密情報が共有されることがあります。そのため、講師側・企業側双方に秘密保持義務を課すことが重要です。
8. 個人情報保護条項
受講者名簿やアンケート結果などには個人情報が含まれることがあります。
契約では、
- 取得目的
- 利用範囲
- 管理方法
- 契約終了後の廃棄
まで定めることで、個人情報保護法への対応がしやすくなります。
ハラスメント研修契約書を作成するメリット
契約書を作成することで、次のようなメリットがあります。
- 研修内容を明確にできる
- 追加費用の発生を防止できる
- キャンセル時のルールを明確にできる
- 教材の無断利用を防止できる
- 録画データの利用範囲を整理できる
- 秘密情報の漏えいリスクを軽減できる
- 契約トラブルを未然に防止できる
企業・講師双方にとって安心して研修を実施できる環境づくりにつながります。
ハラスメント研修契約書を作成する際の注意点
- 研修内容はできるだけ具体的に記載する
- 教材やスライドの著作権を明確にする
- 録画・録音・配信の可否を定める
- オンライン研修特有の通信障害への対応を規定する
- キャンセル料や延期条件を明文化する
- 秘密保持と個人情報保護を契約書へ盛り込む
- 報酬に含まれる費用を明確にする
- 法改正に応じて契約内容を定期的に見直す
近年はカスタマーハラスメント対策やフリーランス保護法など、企業を取り巻く法令や社会情勢も変化しているため、最新の内容へ更新していくことが重要です。
ハラスメント研修契約書と他の契約書との違い
| 契約書名 | 主な目的 | ハラスメント研修契約書との違い |
|---|---|---|
| ハラスメント研修契約書 | ハラスメント防止研修の実施条件を定める | 研修内容・教材・著作権・キャンセルなど研修実施に特化している |
| 企業研修契約書 | 幅広い社員研修を委託する | ハラスメント以外の研修も対象となる包括的な契約書 |
| 講師業務委託契約書 | 講師への業務委託条件を定める | 講師との継続取引全体を対象とし、個別研修の内容までは詳細に規定しない |
| 公開講座受講契約書 | 受講者との契約条件を定める | 企業と講師ではなく、主催者と受講者との契約である |
| セミナー利用規約 | セミナー参加者の利用条件を定める | 参加者向けのルールであり、研修委託契約ではない |
まとめ
ハラスメント研修契約書は、企業と講師・研修会社との間で研修内容や報酬、教材の著作権、録画・録音、秘密保持、キャンセル条件などを明確にし、円滑な研修運営を実現するための重要な契約書です。特に近年は、パワーハラスメントやカスタマーハラスメントへの社会的関心が高まり、多くの企業で継続的な研修が実施されています。契約書を整備することで、双方の責任範囲が明確になり、不要なトラブルを防止しながら、安心して質の高い研修を実施できるようになります。