相続財産情報提供同意書(FP)とは?
相続財産情報提供同意書(FP)とは、相続や資産承継についてファイナンシャルプランナー(FP)へ相談する際に、相談者が自身や関係者の相続財産に関する情報を提供し、FPが相談業務に必要な範囲でその情報を利用することについて確認・同意するための書面です。相続相談では、単に現在の預貯金額を確認するだけではなく、不動産、有価証券、生命保険、事業用資産、借入金など、多岐にわたる情報を取り扱うことがあります。
そのため、FPが相談者から相続財産情報の提供を受ける場合には、
- どのような情報を提供してもらうのか
- 提供された情報を何のために利用するのか
- 情報や資料をどのように管理するのか
- 専門家などの第三者へ提供する場合はどうするのか
- 相談者が同意を撤回した場合はどうするのか
といった事項をあらかじめ明確にしておくことが重要です。相続財産には、相談者本人だけでなく、配偶者や親族、推定相続人などに関係する情報が含まれる場合もあります。そのため、通常のFP相談以上に情報管理へ配慮する必要があります。相続財産情報提供同意書を作成しておけば、相談者とFPの双方が情報の利用目的や取扱範囲を確認したうえで相談を進めやすくなります。
相続財産情報提供同意書が必要となるケース
相続財産情報提供同意書は、FPが相続や資産承継に関する相談を受け、相談者から具体的な財産情報の提供を受ける場合に活用できます。代表的な利用ケースとして、次のようなものがあります。
- 相続発生前に保有財産を整理する場合
- 将来の相続に備えて資産承継方法を検討する場合
- 預貯金、不動産、有価証券などの資産状況を整理する場合
- 生命保険を活用した資産承継について検討する場合
- 借入金などの債務を含めて財産状況を把握する場合
- 事業承継を含む相続対策について相談する場合
- 相続について弁護士、税理士、司法書士などとの連携が必要となる場合
例えば、相談者が複数の金融機関に預貯金を保有し、自宅以外にも不動産や有価証券、生命保険などを所有している場合、FPはこれらの情報を整理しなければ相談者の財産状況を適切に把握できません。また、資産だけではなく住宅ローンや事業上の借入金、保証債務などが存在することもあります。こうした情報は非常に重要である一方、相談者にとっては第三者へ安易に提供したくない情報でもあります。そこで、情報提供の目的や利用範囲を書面で明確にすることに意味があります。
相続財産情報提供同意書に盛り込むべき主な内容
相続財産情報提供同意書を作成する場合には、単に「相続財産情報を提供することに同意します」と記載するだけではなく、具体的な取扱条件まで整理しておくことが重要です。主な項目としては、次のようなものがあります。
- 同意書の目的
- 提供する相続財産情報の範囲
- 情報の利用目的
- 第三者に関する情報の取扱い
- 提供情報の正確性
- 資料や電子データの取扱い
- 秘密保持
- 専門家等への情報提供
- FP業務の範囲
- 試算等に関する確認事項
- 相談者による意思決定
- 個人情報の管理
- 同意の撤回
- 免責事項
これらをあらかじめ整理することで、FP側の情報管理ルールだけでなく、相談者側が「何に同意しているのか」も明確にできます。
相続財産情報提供同意書の条項ごとの解説
1. 目的
最初に、なぜ相続財産情報の提供を受けるのかを明確にします。例えば、相続、資産承継、相続対策などの相談を行うために必要な範囲で情報提供を受け、その利用目的や取扱範囲を明確にすることを目的として定めます。目的を明記しておくことで、相談者から提供された情報が無制限に利用されるものではないことを示しやすくなります。
2. 提供する相続財産情報の範囲
相続財産と一口にいっても、その内容は相談者によって大きく異なります。同意書では、例えば次のような情報を対象として整理できます。
- 現金・預貯金
- 株式・投資信託・債券などの有価証券
- 土地・建物などの不動産
- 生命保険・損害保険などの保険契約
- 自動車・貴金属・美術品・会員権などの財産
- 事業用資産・株式・出資持分
- 貸付金などの債権
- 借入金・住宅ローン・保証債務などの債務
- 遺言書・遺産分割・贈与に関する情報
- 推定相続人や受遺者などに関する情報
重要なのは、プラスの財産だけを対象としないことです。相続に関する財産状況を把握する場合には、借入金などの債務についても確認が必要になることがあります。また、相談内容によっては通帳、残高証明書、固定資産税関係書類、登記事項証明書、保険証券などの資料を確認することも考えられます。そのため、どのような資料の提示・提出を求める可能性があるのかについても整理しておくとよいでしょう。
3. 情報の利用目的
相続財産情報を取得する場合には、その情報を何のために使用するのかを具体的に示すことが重要です。FP相談では、例えば財産状況や相続関係の整理、相続・資産承継上の課題把握、資産承継方法についての情報提供、ライフプランやキャッシュフローの検討、相談資料や試算資料の作成などが考えられます。相談者にとって、財産情報は特に慎重な取扱いを求めたい情報です。利用目的を明確にすることで、相談者が情報提供の必要性を理解しやすくなります。
4. 第三者に関する情報
相続相談の特徴の一つが、相談者本人だけで完結しないことです。相続関係を確認するためには、配偶者、子、親、兄弟姉妹、その他の親族などに関する情報が必要になる場合があります。相談者から第三者に関する情報を提供してもらう場合には、本相談に必要な範囲に限定するとともに、その情報の内容や提供方法に応じて、必要な対応を行うことが重要です。また、FP側についても、第三者に関する情報を相談目的以外に利用しないことを明確にしておくと、情報管理の範囲が分かりやすくなります。
5. 提供情報の正確性
FPが作成する資料や試算は、基本的に相談者から提供された情報を前提とします。例えば、実際には別の金融機関に預貯金が存在していたり、未申告の借入金が存在していたりすれば、FPが把握した財産状況と実際の状況に差が生じます。そこで、相談者には可能な範囲で正確かつ最新の情報を提供してもらい、情報に変更や誤りが判明した場合には伝えてもらう旨を定めます。同時に、FP側も提供された情報を前提として相談や試算を行うことを明確にしておくことが重要です。
6. 資料等の取扱い
相続相談では、相談者から紙の資料だけでなく、PDF、画像、表計算ファイルなどの電子データを受領する場合があります。そのため、資料を相談業務に必要な範囲で利用することや、必要に応じて複写・電子化・記録することについて定めておくと実務上分かりやすくなります。また、相談終了後に相談者から資料の返却やデータの削除を求められるケースも想定しておく必要があります。法令や業務上の保存義務などとの関係を考慮しつつ、返却・削除についての基本的な対応方針を定めておくことがポイントです。
7. 秘密保持
相続財産情報提供同意書では、秘密保持に関する規定も重要です。FPは相談を通じて、財産額だけでなく、家族構成、相続関係、借入状況などの非公知情報を知る場合があります。これらの情報について、正当な理由なく第三者へ開示・漏えいしないことを定めます。一方、相談者の同意を得た場合や、法令に基づく開示、公的機関から適法な開示を求められた場合など、例外となるケースも整理しておく必要があります。
8. 弁護士・税理士・司法書士等への情報提供
相続相談では、FPだけでは完結できない問題が発生することがあります。例えば、具体的な法律問題については弁護士、税務については税理士、不動産登記については司法書士など、それぞれの専門家による対応が必要となる場合があります。その際、相談者が改めてすべての情報を説明するのではなく、FPから専門家へ必要な情報を共有するケースも考えられます。ただし、相続財産情報を第三者へ提供することになるため、専門家への情報提供が必要となる場合の取扱いをあらかじめ明確にしておくことが大切です。
9. FP業務の範囲
FPによる相続相談では、「どこまでFPが対応するのか」を明確にすることも重要です。FPは、家計や資産状況の整理、ライフプランニング、資産承継に関する一般的な情報提供などを行うことができますが、相談内容によっては他の専門資格が必要となる業務があります。そのため、同意書では、FPが保有資格や法令上認められた業務範囲内で相談を行うことを確認しておくとよいでしょう。弁護士法、税理士法、司法書士法、金融商品取引法、保険業法など、業務内容に関係する法令との役割分担を意識することも重要です。
10. 試算やシミュレーションの取扱い
相続相談では、将来の資産額や必要資金などについて試算する場合があります。しかし、こうした試算は相談時点の情報や一定の前提条件に基づくものです。将来の法令・税制、財産価値、金融市場、家族構成などが変化すれば、実際の結果も変わります。そのため、試算は参考情報であり、将来の財産額や相続結果などを保証するものではないことを明確にしておく必要があります。
11. 最終的な意思決定
FPから提案を受けたからといって、相談者が必ずその方法を採用しなければならないわけではありません。相続対策、贈与、保険、不動産取引、資産運用などを実際に行う場合には、それぞれ異なるリスクや法的・税務上の問題が生じる可能性があります。FPから提供される情報や資料は意思決定を補助するものであり、具体的な行為を行うかどうかは相談者自身が必要に応じて専門家の助言も受けながら判断する、という関係を明確にしておくことが重要です。
12. 個人情報の管理
相続財産情報には、氏名や住所だけでなく、財産状況や家族に関する情報などが含まれることがあります。そのため、FP事業者は個人情報の保護に関する法律その他の関係法令、自社の個人情報保護方針などに従って適切に管理する必要があります。また、業務の一部を外部事業者へ委託する場合についても、個人情報を取り扱わせるのであれば、必要かつ適切な監督を行うことが重要になります。
13. 同意の撤回
相談開始時には情報提供へ同意していても、その後、相談者が情報の利用を望まなくなる場合があります。そこで、法令や別途締結した契約に反しない範囲で、相談者が同意を撤回できる旨を定めておく方法があります。ただし、相談に必要な情報まで利用できなくなれば、FPが適切な相談を継続できない可能性があります。そのため、同意撤回によって相談業務の全部又は一部を停止・終了する場合があることについても、あわせて定めておくと実務上の関係が明確になります。
相続財産情報提供同意書を作成する際の注意点
相続財産情報提供同意書は、ひな形をそのまま使用するのではなく、実際のFPサービスの内容に合わせて調整することが重要です。特に次の点を確認しましょう。
- 実際に取得する財産情報と同意書の記載内容を一致させる
- 情報の利用目的を必要以上に広く設定しない
- 第三者の情報を取得する場合の取扱いを整理する
- 弁護士・税理士・司法書士などとの連携方法を確認する
- 個人情報保護方針やFP相談契約書など他の書面との内容を整合させる
- FP自身の資格や登録状況に応じて業務範囲を明確にする
- 相談終了後の資料・電子データの保存や削除ルールを確認する
特に注意したいのが、相続相談だからといって、FPが相続に関するあらゆる業務を行えるわけではない点です。具体的な相談内容によっては、法律、税務、登記、金融商品、保険などに関する専門資格や登録が関係します。「相続相談」という大きな括りだけで考えるのではなく、実際に何を行うサービスなのかを整理したうえで、契約書や同意書を整備することが重要です。
相続財産情報提供同意書と他の書類との違い
相続財産情報提供同意書は、FPとの相談契約そのものを締結するための契約書とは目的が異なります。相談契約書では、業務内容、契約期間、報酬、解約、責任範囲など、FP相談サービス全体の契約条件を定めることが一般的です。これに対し、相続財産情報提供同意書は、相談者からFPへ提供される相続財産情報について、その提供、利用目的、管理、第三者提供などを確認することに重点があります。
そのため、実務では必要に応じて、
- FP相談契約書
- 相続財産情報提供同意書
- 個人情報の取扱いに関する同意書
- 専門家への情報提供同意書
などを組み合わせる方法も考えられます。
同じ内容を複数の書面に重複して記載する場合には、書面ごとに異なる条件が設定されないよう整合性を確認することが大切です。
電子契約で相続財産情報提供同意書を取得する場合のポイント
相続財産情報提供同意書は、紙だけでなく電子的な方法で取得することも考えられます。電子化する場合でも重要なのは、相談者が何について同意したのかを明確に確認できる状態にすることです。同意書の本文を確認できるようにし、同意日、相談者、FP事業者などを特定できる形にしておくことで、後から同意内容を確認しやすくなります。また、同意書だけ電子化しても、実際に受領する財産資料の管理が不十分では意味がありません。相続相談では通帳や保険証券、不動産関係資料など重要な情報を電子データとして受領する可能性があるため、同意取得から資料の受領、保管、利用、削除までを一連の情報管理として考えることが重要です。
まとめ
相続財産情報提供同意書(FP)は、相続や資産承継について相談する際に、相談者がFPへ提供する財産情報の範囲や利用目的、管理方法などを明確にするための書面です。相続相談では、預貯金、不動産、有価証券、生命保険などの資産だけでなく、借入金や保証債務、家族・推定相続人に関する情報など、幅広い情報を取り扱う可能性があります。こうした情報について、何のために提供を受け、どの範囲で利用し、どのように管理するのかを事前に整理しておくことは、相談者の安心だけでなく、FP事業者の適切な業務運営にもつながります。また、相続分野ではFPだけで対応できない問題もあります。必要に応じて弁護士、税理士、司法書士などの専門家と連携できるよう、第三者への情報提供やFP業務の範囲についても明確にしておくことが重要です。相続財産情報提供同意書を整備する際は、単独の書面として考えるのではなく、FP相談契約書、個人情報保護方針、専門家への情報提供に関する同意など、関連する書面との整合性も確認しましょう。