災害時電話受付契約書とは?
災害時電話受付契約書とは、地震、台風、豪雨、洪水、火災、大規模停電などの災害が発生した場合に、企業や事業者に寄せられる電話の受付業務を電話代行会社などの外部事業者へ委託するための契約書です。
通常時には社内の従業員が電話対応を行っている企業でも、大規模な災害が発生すると、従業員が出社できない、オフィスが利用できない、電話が集中するなどの理由から、通常どおりの電話受付が難しくなることがあります。
そこで、あらかじめ電話代行事業者と災害時電話受付契約を締結し、
- 顧客からの問い合わせ
- 取引先からの連絡
- 従業員からの安否連絡
- 施設や設備の被害報告
- 緊急性の高い連絡
などを外部で受け付けられる体制を整えておく方法があります。災害時の電話受付では、単に電話に出るだけではなく、どの連絡を優先するのか、誰へ報告するのか、通信障害が発生した場合にどうするのかなど、通常の電話代行とは異なるルールが必要です。そのため、電話受付の範囲、緊急連絡方法、受付時間、通信障害時の対応、個人情報の取扱い、免責事項などを契約書によって明確にしておくことが重要です。
災害時電話受付契約書が必要となるケース
災害時電話受付契約書は、災害発生時にも顧客や取引先などからの連絡を受け付ける必要がある企業で利用できます。代表的な利用ケースとして、次のようなものがあります。
- BCP対策として外部の電話受付窓口を確保する場合
- 地震や台風発生時のみ電話代行サービスを利用する場合
- 本社や事業所が利用できない場合の代替電話窓口を用意する場合
- 災害時の顧客問い合わせ窓口を外部へ委託する場合
- 取引先や従業員からの緊急連絡を受け付ける場合
- 24時間の災害時電話受付体制を構築する場合
特に、災害時には短時間で大量の電話が集中する可能性があります。通常の電話代行契約だけでは、災害時にどこまで対応してもらえるのか、受付件数が急増した場合でも通常どおり対応するのか、追加料金が発生するのかといった点が明確になっていない場合があります。そのため、災害対応を想定する場合には、通常の電話代行業務とは区別して条件を整理しておくことが重要です。
BCP対策としての災害時電話受付
BCPとは、災害や事故などによって通常の事業活動が困難になった場合でも、重要な業務を継続し、または早期に復旧するための計画を指します。電話は、災害発生時にも顧客、取引先、従業員などとの連絡手段として利用されるため、電話受付体制を確保することも事業継続を考えるうえで重要な要素となります。例えば、本社が被災して従業員が出社できなくなった場合でも、電話代行事業者が別の拠点で電話を受け付けることができれば、顧客からの問い合わせや取引先からの重要な連絡を記録し、担当者へ伝えることができます。ただし、電話代行サービスを導入しているだけで、すべての災害に対応できるとは限りません。災害時には電話回線やインターネット回線そのものに障害が発生する可能性もあるため、契約書ではこうした状況も想定しておく必要があります。
災害時電話受付契約書に盛り込むべき主な条項
災害時電話受付契約書では、一般的な電話代行契約の内容に加えて、災害時特有の条件を定めます。主な条項としては、次のようなものがあります。
- 契約の目的
- 対象となる災害の範囲
- 電話受付業務の内容
- 業務開始条件
- 受付時間・受付対象
- 受付内容
- 電話代行事業者の対応範囲
- 緊急連絡方法
- 受付の優先順位
- 警察・消防などへの緊急連絡の取扱い
- 委託者からの情報提供
- 通信障害時の対応
- 受付件数が急増した場合の対応
- 受付結果の報告方法
- 再委託
- 個人情報の取扱い
- 秘密保持
- 通話録音
- 委託料・追加料金
- 業務継続
- 免責事項
- 損害賠償
- 契約期間・解除
これらを事前に整理しておくことで、実際に災害が発生した際に、委託者と電話代行事業者の役割分担を明確にできます。
条項ごとの解説と実務ポイント
1. 対象となる災害を定める
最初に明確にしておきたいのが、どのような状況を災害時電話受付の対象とするのかという点です。
対象としては、
- 地震
- 津波
- 台風
- 豪雨
- 洪水
- 大雪
- 火災
- 大規模停電
- 通信障害
などが考えられます。対象となる事象を定めておけば、通常の電話代行業務と災害時対応を区別しやすくなります。また、想定していない重大な事象にも対応できるよう、甲乙が災害時対応を必要と判断した事象を含める方法もあります。
2. 電話受付業務の範囲を明確にする
災害時電話受付では、電話代行事業者が何を行うのかを具体的に定めることが重要です。
例えば、
- 発信者の氏名を確認する
- 会社名や所属部署を確認する
- 電話番号を確認する
- 問い合わせ内容を聞き取る
- 被害状況を記録する
- 折り返しの必要性を確認する
- 担当者へ受付内容を報告する
といった業務が考えられます。一方、電話受付担当者が独自に契約上の判断や損害賠償への回答などを行うと、委託者が意図しない約束が成立するリスクがあります。そのため、電話代行事業者は基本的に受付・記録・報告を担当し、重要な判断は委託者側が行うという役割分担を明確にしておくことが重要です。
3. 業務開始条件を決めておく
災害時電話受付では、いつから災害対応へ切り替えるのかを決める必要があります。
例えば、
- 委託者から開始要請を受けた場合
- 一定規模以上の地震が発生した場合
- 特定の警報等が発表された場合
- 事業所が利用できなくなった場合
などを開始条件として設定する方法があります。
自動的に災害時対応へ切り替える場合には、対象地域や条件をできるだけ具体的に決めておくことが重要です。
4. 緊急連絡先と連絡順位を設定する
災害時には、通常の問い合わせと緊急性の高い連絡を区別する必要があります。例えば、施設の重大な被害や人命に関係する情報が入った場合には、通常の報告を待たず、緊急連絡先へ速やかに伝える仕組みを設けることが考えられます。
そのため、契約書や運用マニュアルでは、
- 第1連絡先
- 第2連絡先
- 第3連絡先
のように複数の連絡先を設定しておくと、担当者につながらない場合にも次の担当者へ連絡できます。電話番号だけではなく、メール、チャットツールなど複数の連絡手段を運用上用意しておくことも検討できます。
5. 受付の優先順位を決める
大規模災害では、一度に多数の電話がかかってくる可能性があります。すべての電話へ同じ優先度で対応すると、本当に重要な連絡への対応が遅れる可能性があります。
そこで、
- 人命・身体の安全に関する連絡
- 火災や重大事故に関する連絡
- 重大な事業停止に関する連絡
- 施設や設備の重大な被害報告
- 従業員の安否連絡
- 一般的な問い合わせ
など、受付内容に応じた優先順位をあらかじめ設定しておくことが考えられます。
6. 警察・消防等への連絡範囲を明確にする
電話受付中に、火災や負傷者など緊急性の高い情報が伝えられる可能性もあります。
この場合、電話代行事業者が警察、消防、救急などへの通報まで行うのか、それとも発信者本人から直接通報してもらうのかを事前に決めておく必要があります。
通常の電話受付業務と緊急通報の代行は性質が異なるため、契約上の対応範囲を曖昧にしないことが重要です。
7. 通信障害について定める
災害時電話受付契約で特に重要になるのが通信障害への対応です。
大規模災害では、
- 電話回線の障害
- 携帯電話網の混雑
- インターネット回線の停止
- 停電
- 通信事業者の設備障害
などが発生する可能性があります。電話代行事業者が十分な受付体制を整えていても、通信インフラ自体が停止すれば電話を受けられない場合があります。そのため、乙の合理的な管理を超える通信障害などによって業務を実施できない場合の取扱いを契約書で定めておくことが重要です。
8. 電話が集中した場合の対応を定める
災害発生直後には、通常時を大幅に上回る電話が集中する可能性があります。例えば、通常は1時間に数件程度しか電話がない企業でも、災害発生後には顧客、従業員、取引先などから同時に多数の電話が入ることがあります。電話回線やオペレーターの人数には限界があるため、すべての着信に即時対応できるとは限りません。契約書では、通常想定される件数を著しく超える着信が発生した場合の取扱いを定め、必要に応じて追加人員や追加料金についても整理しておくことが重要です。
9. 個人情報の取扱いを定める
災害時電話受付では、氏名、電話番号、勤務先などの個人情報を取り扱う場合があります。さらに、従業員の安否情報や負傷に関する連絡など、慎重な取扱いが求められる情報を受け付ける可能性もあります。そのため、取得した情報を本業務に必要な範囲でのみ利用し、適切な安全管理措置を講じることを契約上明確にしておくことが重要です。また、契約終了後のデータの返還、消去又は廃棄についても定めておくと、情報管理の範囲を明確にできます。
10. 通話録音について定める
災害時には、受付内容を後から正確に確認する必要が生じる場合があります。そのため、電話代行サービスでは品質管理や受付内容の確認を目的として通話を録音するケースがあります。
録音を行う場合には、
- 録音の目的
- 保存期間
- 利用範囲
- 管理方法
などを整理しておくことが重要です。特に災害時には重要な情報が含まれる可能性があるため、通常の電話受付以上に録音データの管理方法を確認しておく必要があります。
11. 災害時の追加料金を確認する
災害時には通常より多くのオペレーターを配置したり、受付時間を延長したりする可能性があります。
そのため、通常の月額料金とは別に、
- 受付件数による従量料金
- 時間外対応料金
- 24時間対応料金
- オペレーター追加料金
- 緊急対応料金
などが発生する可能性があります。料金条件が不明確なまま災害対応を開始すると、後から費用をめぐってトラブルになる可能性があります。通常料金に含まれる範囲と追加料金が発生する条件を事前に明確にしておくことが重要です。
12. 電話代行事業者自身が被災した場合も想定する
災害時電話受付を外部へ委託していても、電話代行事業者自身が災害の影響を受ける可能性があります。例えば、電話代行事業者の拠点が停電したり、従業員が出勤できなくなったりするケースです。そのため、契約書では合理的な範囲で業務継続に努めることを定める一方、従業員の安全確保が必要な場合には、業務を縮小、中断又は停止できるようにしておくことが考えられます。災害対応サービスだからといって、あらゆる状況で無制限にサービスを継続できるわけではない点を双方で確認しておくことが重要です。
災害時電話受付契約書を作成する際の注意点
災害時電話受付契約書を作成する場合には、契約書だけではなく実際の運用方法まで確認しておく必要があります。
- 緊急連絡先を定期的に更新する
担当者の異動や退職によって連絡先が古くなると、災害時に重要な情報を伝えられない可能性があります。 - 電話対応マニュアルを準備する
どのような質問にどこまで回答してよいのかを事前に整理し、電話代行事業者へ共有しておくことが重要です。 - 災害時専用の案内内容を準備する
営業状況、店舗・施設の休業情報、復旧状況などについて、どの内容を案内するのか決めておきます。 - 通常時と災害時の対応範囲を区別する
災害発生時だけ24時間対応へ切り替えるなど、通常時との違いを明確にします。 - 通信障害を想定する
電話だけに依存せず、メールやその他の連絡手段を含めた連絡体制を検討しておくことが重要です。 - 定期的に運用内容を見直す
組織変更、拠点変更、電話番号変更などがあった場合には、契約内容や対応マニュアルも更新します。
通常の電話代行契約との違い
通常の電話代行契約では、営業時間中の代表電話受付、担当者への取り次ぎ、問い合わせ内容の記録などが中心となります。
一方、災害時電話受付では、通常の電話受付に加えて、
- 緊急連絡の判別
- 連絡の優先順位
- 大量着信への対応
- 通信障害への対応
- 24時間受付への切替え
- 災害時の追加料金
- 電話代行事業者自身が被災した場合の対応
などを検討する必要があります。そのため、通常の電話代行契約をそのまま災害対応へ流用するのではなく、災害時特有の条件を追加した契約内容にすることが重要です。
災害時電話受付契約書と運用マニュアルをセットで整備する
災害時電話受付では、契約書だけですべての対応方法を細かく定めると、担当者や連絡先が変更されるたびに契約内容を変更しなければならなくなる可能性があります。そのため、基本的な権利義務は契約書で定め、具体的な運用については別途マニュアルや連絡先一覧として管理する方法があります。
例えば、
- 緊急連絡先一覧
- 連絡順位
- 問い合わせ別の回答例
- 受付時の確認事項
- 災害別の対応方法
- 担当部署への報告方法
- 営業時間外の対応方法
などを運用資料として整備します。契約書と実際の運用ルールを組み合わせることで、災害発生時にも担当者が対応方法を判断しやすくなります。
災害時電話受付契約書を電子契約で締結するメリット
災害時電話受付契約書は、書面だけでなく電子契約によって締結する方法も考えられます。電話代行サービスでは、受付時間、連絡先、料金体系、対応範囲などの見直しに伴い、契約内容を変更する場合があります。電子契約を利用すれば、契約書の印刷、郵送、押印、返送といった作業を減らし、契約締結や更新に関する事務作業を効率化できます。また、契約書を電子データとして管理することで、災害対策やBCPの関連資料とあわせて契約内容を確認しやすくなります。ただし、電子契約を利用する場合でも、実際の受付条件、緊急連絡先、対応マニュアルなどを最新の状態に維持することが重要です。
まとめ
災害時電話受付契約書は、地震、台風、豪雨などの災害発生時に、企業への電話受付を電話代行事業者へ委託する際の条件を明確にするための契約書です。災害時には、通常時とは異なり、電話の集中、通信障害、緊急性の高い連絡、担当者との連絡不能など、さまざまな問題が発生する可能性があります。
そのため、
- どの災害を対象とするのか
- いつ受付を開始するのか
- どこまで電話代行事業者が対応するのか
- 緊急連絡を誰へ伝えるのか
- 電話が集中した場合にどうするのか
- 通信障害時の責任をどう整理するのか
- 個人情報や録音データをどう管理するのか
- 追加料金が発生する条件は何か
などを契約時に整理しておくことが重要です。また、契約書を作成するだけでなく、緊急連絡先一覧や電話対応マニュアルを整備し、定期的に内容を更新することで、実際の災害発生時にも運用しやすい電話受付体制につながります。