契約書を締結した後に、会社名の誤字、日付の間違い、金額の記載ミスなどが見つかることがあります。
このような場合でも、締結済みの契約書を一方の判断だけで書き換えることは避け、契約相手と訂正内容を確認したうえで対応することが重要です。
また、「もともと合意していた内容の記載ミスを直す場合」と「締結後に契約条件そのものを変更する場合」では、適した対応方法が異なります。
締結後に間違いが見つかった場合の基本的な流れ
- どこが間違っているのか確認する
- 元の契約書はそのまま保存する
- 契約相手へ間違いを伝える
- 単純な訂正か契約内容の変更かを判断する
- 訂正文書・変更契約書・修正版などを作成する
- 双方で内容を確認して締結する
- 元の契約書と訂正・変更後の書類を一緒に保管する
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締結済みの契約書は勝手に書き換えない
契約書に間違いを見つけても、自分が保管している契約書だけを書き換えたり、電子契約で締結したPDFを編集したりすることは避けましょう。
民法第521条では、契約当事者は法令の制限内で契約内容を自由に決定できることが定められています。また、第522条では、契約内容を示した申込みに対して相手方が承諾したときに契約が成立することを基本としています。
締結済みの契約書は、双方が合意した内容を確認するための記録です。そのため、締結後に訂正するときも、何をどのように直したのかについて双方の認識を合わせ、その記録を残しておくことが大切です。
もともと合意していた内容を正しく記録し直すだけなのか、それとも金額・期間・業務内容などの合意自体を変更するのかによって、適した手続きが変わります。
まず「訂正」なのか「契約変更」なのか確認する
締結後に間違いが見つかった場合は、最初に間違いの内容と、それによって契約内容へどの程度影響するのかを確認します。
| 見つかった内容 | 確認すること | 主な対応例 |
|---|---|---|
| 単純な誤字・脱字 | 契約内容の意味が変わらないか | 訂正内容を双方で確認し、訂正文書などを残す |
| 会社名・氏名の誤記 | 契約当事者を正しく特定できるか | 訂正文書または修正版を作成する |
| 日付の間違い | 締結日・開始日・終了日など、影響する範囲 | 訂正文書や変更契約書などで明確にする |
| 金額・支払条件の間違い | 実際に双方が合意した金額・条件 | 変更契約書・覚書などを作成する |
| 契約期間・業務内容の変更 | 元の契約から何を変更するのか | 変更契約書・覚書などを締結する |
| 多数の記載ミス | 部分訂正で内容が分かりにくくならないか | 修正版を作成し、改めて締結することを検討する |
例えば、単なる漢字の誤字であれば契約内容に影響しない場合があります。一方で、数字が「100万円」ではなく「10万円」になっているなど、金額や期間に関する間違いは契約上の意味が大きく変わります。
見た目では小さな間違いでも、契約当事者、金額、契約期間、業務範囲などに関係する場合は、軽微な誤記として処理せず、契約相手と対応方法を確認しましょう。
契約書の誤字・脱字などを訂正する方法
双方が実際に合意していた内容は変わらず、契約書への記載だけが間違っていた場合には、訂正した事実が後から分かる方法で対応します。
代表的な方法としては、次のようなものがあります。
方法1.紙の契約書を双方で訂正する
紙の契約書で訂正箇所が少ない場合には、誤った部分と正しい内容が分かるように訂正し、双方が訂正内容を確認したことを残す方法があります。
ただし、契約の種類や当事者間のルール、社内規程などによって適切な方法は異なります。
一方が保管している契約書だけを直すのではなく、双方が保有する契約書について同じ訂正内容を確認できる状態にしておくことが重要です。
方法2.訂正内容を記載した覚書・確認書を作成する
すでに契約書を双方へ交付している場合は、元の契約書そのものを書き換えず、訂正内容を記載した覚書や確認書などを別に作成する方法があります。
訂正文書には、例えば次のような情報を記載します。
- 訂正対象となる元の契約書の名称
- 元の契約書を締結した日
- 訂正する条項・箇所
- 誤って記載されていた内容
- 正しい内容
- 訂正内容を適用する日
- それ以外の契約内容に変更がないこと
訂正文書だけを見ても、どの契約書のどの部分を訂正したのか分かる状態にしておくことが大切です。
方法3.修正版の契約書を作成して締結し直す
訂正箇所が多い場合や、契約当事者、金額、契約期間など重要な項目に間違いがある場合は、正しい内容の契約書を作成し、双方で確認したうえで改めて締結する方法もあります。
この場合は、元の契約書と新しい契約書の関係が分からなくならないようにします。
例えば、新しい契約書や別途作成する書面で、どの契約書を訂正または差し替えるためのものなのか、旧契約書をどのように扱うのか、いつから新しい内容を適用するのかを明確にしておくと管理しやすくなります。
契約内容そのものを変更する場合は変更契約書・覚書などを作成する
契約締結後に「報酬を変更したい」「契約期間を延長したい」「業務内容を追加したい」といった事情が生じた場合は、単なる誤記の訂正ではなく、契約内容そのものの変更になります。
この場合は、変更する内容について契約相手と合意し、変更契約書や覚書などを作成して記録する方法が一般的です。
変更契約書などに記載しておきたい内容
- 変更対象となる元の契約書
- 元の契約書の締結日
- 変更する条項
- 変更前の内容
- 変更後の内容
- 変更内容が適用される日
- 変更しない条項は引き続き有効とする旨
例えば、契約期間だけを変更するのであれば、元の契約書をすべて作り直さず、契約期間に関する条項だけを変更する覚書を作成する方法も考えられます。
一方で、多数の条項を変更する場合は、変更契約書を何枚も積み重ねるより、契約内容全体を整理した新しい契約書を作成した方が分かりやすい場合があります。
契約書の間違いに気づいたときの進め方
実際に締結済みの契約書で間違いを発見した場合は、次の順番で対応すると整理しやすくなります。
1.元の契約書を変更せず保存する
まず、締結済みの契約書はそのまま保存します。
特に電子契約の場合は、締結済みPDFなどのデータを直接編集して修正版へ置き換えるのではなく、元のデータを残しておきます。
2.間違っている箇所を特定する
次に、どの条項・記載が間違っているのかを確認します。
その際は、単なる誤記なのか、実際の合意内容と異なるのかについても確認します。
3.契約相手へ連絡する
間違いを確認したら、契約相手へ連絡し、問題となっている箇所と正しい内容を共有します。
自社側だけで修正方法を決めず、どのように訂正・変更するかについて双方で認識を合わせます。
4.適切な方法で訂正・変更する
内容に応じて、紙の契約書の訂正、訂正確認書、覚書、変更契約書、修正版の再締結などから適した方法を選びます。
5.双方で訂正後の内容を確認する
訂正文書や変更契約書を作成した場合は、契約相手にも内容を確認してもらい、必要な署名・押印や電子的な締結手続きを行います。
6.元の契約書と一緒に保管する
訂正・変更後の書類だけを保管するのではなく、元の契約書と関連付けて管理します。
後から契約内容を確認するときに、元の契約から何が変わったのかを追える状態にしておくことが重要です。
金額や契約期間を間違えた場合は特に注意する
契約金額、支払条件、契約期間、解約条件、業務範囲などは、契約上の重要な条件です。
例えば契約書に記載された金額が、双方が交渉していた金額と異なっていた場合には、単に数字を書き直せばよいとは限りません。
まず、契約締結時に双方が実際にどのような内容を合意していたのかを確認する必要があります。
当事者間で認識が一致しない場合や、契約の有効性・錯誤など法的な判断が問題になる場合は、契約書だけを訂正して解決しようとせず、弁護士などの専門家へ確認することも検討してください。
変更契約書・覚書には印紙税がかかることがある
紙で変更契約書や覚書を作成する場合は、印紙税にも注意が必要です。
文書の名称が「覚書」「変更契約書」「確認書」などであっても、印紙税の対象になるかどうかは名称だけではなく、その文書に記載された内容によって判断されます。
元の契約書が印紙税法上の課税文書に該当し、変更契約書などによって重要な事項を変更する場合には、その変更文書自体が課税文書に該当することがあります。
紙で契約変更に関する文書を作成する場合は、文書の具体的な内容を確認したうえで、国税庁の案内などから印紙税の取扱いを確認してください。
電子契約を締結した後に間違いが見つかった場合
電子契約の場合も、基本的な考え方は紙の契約書と同じです。
締結済みの契約書へ直接修正を加えるのではなく、元の契約データを残したうえで、訂正文書や変更契約書を新たに締結するなどの方法を検討します。
電子署名された電子文書では、署名後に文書へ変更が加えられていないかを確認できる仕組みが利用される場合があります。
そのため、締結後に元のPDFそのものを書き換えて修正版として扱うのではなく、元の契約と訂正・変更後の契約の履歴を追える形で管理することが重要です。
締結後の訂正・変更で確認したいチェックリスト
- 間違っている箇所を特定した
- 元の契約書をそのまま保存している
- 実際に双方が合意していた内容を確認した
- 単純な誤記なのか契約内容の変更なのかを整理した
- 契約相手へ訂正・変更内容を伝えた
- 双方で訂正・変更方法について確認した
- 必要に応じて訂正文書・覚書・変更契約書などを作成した
- 変更内容を適用する日を明確にした
- 紙の変更契約書などでは印紙税の対象になるか確認した
- 元の契約書と訂正・変更後の書類を一緒に管理している
よくある質問
契約書の誤字を見つけたら必ず再契約が必要ですか?
すべての場合に契約書全体を作り直して再締結する必要があるとは限りません。
単純な誤字などであれば、双方で訂正内容を確認し、訂正文書などを残す方法も考えられます。
ただし、誤記によって契約当事者、金額、期間、業務範囲などの意味が変わる場合は、より明確な方法で訂正することが重要です。
自分の会社が保管している契約書だけ訂正してもよいですか?
自社側の契約書だけを一方的に書き換えることは避けましょう。
契約相手が保管している契約書と内容が異なる状態になると、後からどちらが正しい契約内容なのか分かりにくくなります。
訂正内容を契約相手と共有し、双方が同じ内容を確認できるようにします。
契約日を間違えていた場合はどうしますか?
まず、何の日付を間違えたのかを確認します。
契約書を締結した日、契約の効力が始まる日、サービスの開始日などは、それぞれ異なる場合があります。
実際の合意内容を確認したうえで、訂正文書や変更契約書などにより正しい日付を明確にする方法を検討します。
契約金額を間違えた場合は訂正印だけでよいですか?
契約金額は重要な契約条件の一つです。
単純に訂正するのではなく、契約締結時に双方が実際に合意していた金額を確認し、必要に応じて覚書や変更契約書、修正版の契約書などを作成して明確にする方が分かりやすくなります。
変更契約書と覚書はどちらを使えばよいですか?
文書の名称だけで法的な取扱いが決まるわけではありません。
「変更契約書」「覚書」など、名称にかかわらず、元の契約書と変更内容の関係が明確に分かることが重要です。
社内ルールや既存の契約書で変更方法が定められている場合は、その内容も確認してください。
契約書を締結後に訂正するときのポイント
契約書を締結した後に間違いを見つけた場合は、間違った箇所だけをその場で書き換えるのではなく、元の契約書を残したうえで、契約相手と正しい内容を確認し、訂正・変更した記録を残すことが重要です。
- 元の契約書を保存する
- 間違っている箇所を確認する
- 契約相手へ連絡する
- 訂正か契約変更かを判断する
- 訂正文書・変更契約書・修正版などを作成する
- 双方で内容を確認して締結する
- 元の契約書と一緒に保管する
特に、契約当事者、金額、支払条件、契約期間、業務内容などの重要事項に間違いがある場合は、後から解釈に食い違いが生じないよう、訂正内容を明確な文書として残しておきましょう。
契約書の訂正・変更も履歴が分かる形で管理する
契約書を訂正・変更した場合は、最新の契約書だけではなく、元の契約書と訂正・変更に関する書類を関連付けて管理することが大切です。
マイサイン(mysign)では、PDFの契約書をアップロードし、契約相手へオンラインで署名を依頼できます。契約相手はマイサインへの会員登録やログインをせず、案内から契約内容を確認して署名・同意できます。
契約内容を変更するために新しい契約書や覚書を締結する場合も、どの契約に関係する書類なのかが後から分かるように整理しておくと、契約内容を確認しやすくなります。
紙・電子のどちらで契約する場合でも、元の契約内容と変更後の内容を追える状態で管理することが重要です。
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