契約書を作成するときに、「1部だけ作ればよいのか」「相手方の分も含めて2部作る必要があるのか」と迷うことがあります。
一般的な契約では、法令に特別の定めがある場合を除き、契約を成立させるために契約書を必ず2部作成しなければならないというルールがあるわけではありません。
ただし、紙の契約書では、同じ内容の契約書を2通作成し、双方が署名・押印等をしたものを1通ずつ保管する方法が分かりやすく、実務でもよく利用されています。
契約書の部数を決めるときの基本的な考え方
- 契約書を双方で保管する必要があるか確認する
- 2通の原本を作るか、原本1通と写しにするか決める
- 2通作る場合は内容が同じことを確認する
- 必要な署名・押印等を行う
- 紙の課税文書ではそれぞれの印紙税を確認する
- 双方が決めた契約書を1通ずつ保管する
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契約書は必ず2部作る必要がある?
一般的な契約について、契約書を必ず2通作成することが契約成立の条件となっているわけではありません。
民法第522条では、法令に特別の定めがある場合を除き、契約の成立には書面の作成その他の方式を必要としないことが原則とされています。
そのため、契約書を作成する場合でも、1通にするか2通にするかは、契約内容や当事者間の取り決めなどに応じて決めることになります。
ただし、契約書には双方が合意した内容を後から確認する役割があります。そのため、紙で契約する場合は、同じ内容の契約書を2通作成して双方が1通ずつ保管する方法が分かりやすいでしょう。
双方が署名・押印等を行った契約書を各1通保管すれば、どちらの当事者も手元で契約内容を確認できます。
契約書を2通作成して双方が1通ずつ保管する方法
紙の契約書で分かりやすいのは、同じ内容の契約書を2通用意し、双方が締結手続きをした後、それぞれ1通ずつ保管する方法です。
例えば、甲と乙が契約する場合は、次のように進めます。
- 同じ内容の契約書を2通用意する
- 2通とも最終版であることを確認する
- 契約内容や社内ルールに応じて双方が署名・押印等を行う
- 必要な契約書について印紙税を確認する
- 甲が1通、乙が1通を保管する
2通の契約書は、本文、別紙、仕様書なども含めて同じ内容になっていることを確認します。
片方だけ古い契約書だったり、別紙が不足していたりすると、双方が保管する契約内容に違いが生じるため注意してください。
契約書を1通だけ作る方法もある
当事者間で合意しているのであれば、紙の契約書を1通だけ作成し、一方が原本を保管する方法も考えられます。
この場合、もう一方は契約書のコピーなどを保管する運用になります。
| 方法 | 保管方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 契約書を2通作る | 双方が締結済みの契約書を1通ずつ保管 | 双方が手元で同じ契約内容を確認しやすい |
| 契約書を1通作る | 一方が原本、もう一方が写しなどを保管 | 誰が原本を保管するか事前に決めておく必要がある |
1通だけ作成する場合は、契約書の末尾などで「本契約書を1通作成し、甲がこれを保管する」といった形で、誰が原本を保管するのか明確にしておく方法もあります。
もう一方の当事者にも、締結済み契約書の内容を確認できるコピーやPDFなどを渡しておくと、後から契約条件を確認しやすくなります。
1部と2部はどちらを選べばよい?
紙の契約書で特別な事情がなければ、双方が締結済みの契約書を保管できるよう、2通作成して1通ずつ保管する方法が分かりやすいでしょう。
一方、契約書の種類、社内ルール、印紙税の負担、契約書の管理方法などによっては、原本を1通だけ作成する運用を選ぶ場合もあります。
2通作成が向いている場合
- 双方が契約書の原本を保管したい
- 重要な取引で双方が同じ契約書を手元に残したい
- 長期間継続する契約である
- 契約内容を双方が頻繁に確認する可能性がある
1通作成を検討する場合
- 双方が原本1通で管理することに合意している
- 原本を保管する当事者が明確になっている
- もう一方が写し等を保管できる
- 契約書や社内規程で保管方法に問題がない
契約や取引の種類によって特別なルールがある場合は、そのルールを優先して確認してください。
2通作る場合は2通とも署名・押印する?
紙の契約書を2通とも契約成立を証明する契約書として作成し、双方が1通ずつ保管するのであれば、通常は2通とも同じ締結手続きを行います。
例えば署名・押印によって契約書を締結する場合は、双方が保管する2通について必要な署名・押印等を行います。
一方が保管する契約書だけに署名・押印があり、もう一方には単なるコピーしかない状態とは区別して考えます。
署名や押印が契約成立の必須要件になるかどうかは契約の種類によって異なりますが、双方が同じ契約書を保管するのであれば、どちらの書面についても締結済みであることが分かる状態にしておくと確認しやすくなります。
2通作成する場合は印紙税にも注意する
紙の契約書を2通作成するときは、印紙税の対象となる契約書かどうかを確認します。
国税庁では、一つの契約について2通以上の文書を作成した場合でも、それぞれが契約の成立を証明する目的で作成された課税文書であれば、それぞれ印紙税の課税対象になるとしています。
そのため、課税文書に該当する紙の契約書を2通作成し、双方がそれぞれ契約成立を証明する文書として保管する場合は、原則として2通それぞれについて印紙税を確認する必要があります。
契約当事者双方の署名・押印があるなど、契約成立を証明する目的で作成された文書であれば、「写し」「副本」などの表示があっても課税文書となる場合があります。
一方、契約書の正本を複写機などでコピーしただけで、署名・押印や正本と相違ない旨の証明などがない単なる写しについて、国税庁は印紙税の課税対象とはならないとしています。
実際に印紙税が必要かどうかは、契約書の名称だけではなく記載内容によって判断されます。対象となる契約書について国税庁の案内などを確認してください。
印紙税はどちらが負担する?
契約書を2通作成する場合、「自社分の契約書に貼る印紙は自社が負担する」といった方法が実務では分かりやすいでしょう。
一方で、当事者間で別の負担方法を決めることも考えられます。
誰がどの契約書の印紙税を負担するかについて認識が分かれないよう、契約書を作成する段階で確認しておくとスムーズです。
契約書を郵送で2通取り交わす場合の流れ
相手方と直接会わず、郵送で紙の契約書を締結する場合は、2通を往復させて取り交わす方法があります。
例えば、自社から契約書を送る場合は次のように進めます。
- 契約内容を最終確認する
- 同じ契約書を2通用意する
- 自社で必要な署名・押印等を行う
- 契約書2通を相手方へ送付する
- 相手方が内容を確認して2通とも締結手続きを行う
- 相手方が1通を保管する
- もう1通を自社へ返送してもらう
- 返送された契約書を自社で保管する
郵送するときは、「2通とも手続きした後、1通をご返送ください」と案内しておくと、返送漏れを防ぎやすくなります。
双方が保管する契約書は同じ内容か確認する
契約書を2通作成する場合に特に注意したいのが、2通の内容が完全に同じかどうかです。
契約書を何度も修正した場合、古い版を誤って1通混ぜてしまうことがあります。
締結前に確認する項目
- 契約当事者の名称
- 契約金額
- 契約期間
- 支払条件
- 業務内容・取引内容
- 条項の内容
- ページ数
- 別紙・仕様書
- 契約締結日
印刷後に片方だけ修正するのではなく、最終版を確定してから同じデータを2通印刷すると、内容の違いを防ぎやすくなります。
契約書を受け取った後の保管方法
契約締結が完了したら、それぞれが自社分の契約書を保管します。
紙の契約書では、契約相手、契約書名、締結日などから探せるように整理しておくと、後から必要になったときに確認しやすくなります。
契約書に別紙や仕様書がある場合は、それらも契約書と一緒に管理します。
締結後に変更契約書や覚書を作成した場合も、元の契約書との関係が分かるように保管してください。
電子契約では「2部作る」という考え方が異なる
電子契約では、紙の契約書のように同じ契約書を2通印刷して、それぞれ1通ずつ保管する必要はありません。
双方が合意した電子データについて締結手続きを行い、締結済みの契約データを双方が確認・保存できる状態にします。
そのため、「甲用」「乙用」と同じ内容のPDFを2つ作ることよりも、双方が締結済みの同じ電子契約データを確認でき、必要な期間保存できる状態にしておくことが重要です。
所得税法・法人税法上の保存義務者が電子取引によって契約書などの取引情報を授受した場合には、電子帳簿保存法に基づく電子取引データの保存についても確認してください。
契約書の部数を決めるチェックリスト
- 紙・電子のどちらで契約するか決めた
- 契約書を1通・2通のどちらにするか確認した
- 1通の場合は誰が原本を保管するか決めた
- もう一方が契約内容を確認できる方法を決めた
- 2通の場合は内容が完全に同じか確認した
- 双方が保管する契約書に必要な締結手続きを行った
- 紙の契約書が印紙税の課税文書に該当するか確認した
- 2通とも課税対象となる場合の印紙税を確認した
- 双方が1通ずつ受け取ったことを確認した
- 別紙・仕様書を含めて保管した
よくある質問
契約書は必ず甲乙で2通必要ですか?
一般的な契約について、必ず2通作成しなければ契約が成立しないというわけではありません。
ただし、紙で契約する場合は、双方が契約内容を確認できるよう同じ契約書を2通作成し、それぞれ1通ずつ保管する方法が分かりやすいでしょう。
契約書1通を相手が保管し、自社はコピーだけでもよいですか?
当事者間でその方法に合意している場合には、原本を1通だけ作成し、一方が原本、もう一方がコピーなどを保管する運用も考えられます。
その場合は、誰が原本を保管するのかを明確にし、もう一方も締結済みの契約内容を確認できる状態にしておきましょう。
契約書を2通作ったら印紙も2枚必要ですか?
その契約書が印紙税の課税文書に該当し、2通とも契約成立を証明する目的で作成された文書であれば、それぞれが印紙税の課税対象となります。
一方、単なるコピーについては取扱いが異なります。契約書の具体的な内容や作成方法を確認してください。
「写し」と書いた契約書なら印紙は不要ですか?
「写し」と表示するだけで印紙税が不要になるわけではありません。
契約当事者双方の署名・押印があるなど、契約成立を証明する目的で作成された文書であれば、「写し」「副本」などの表示があっても課税文書となる場合があります。
電子契約でも2部作成しますか?
電子契約では、紙の契約書のように同じ書面を2通用意する必要はありません。
双方が締結済みの電子データを確認でき、それぞれ必要な期間保存できる状態にしておくことが重要です。
契約書の部数をまとめると
契約書を何部作るかについては、「必ず1部」「必ず2部」と考えるのではなく、双方が締結後の契約内容をどのように確認・保管するのかを基準に決めることが重要です。
- 紙・電子のどちらで契約するか決める
- 双方が原本を必要とするか確認する
- 紙で双方が原本を持つ場合は2通作成する
- 2通とも同じ最終版であることを確認する
- 必要な署名・押印等を行う
- 紙の契約書では印紙税を確認する
- 双方が契約書を保管する
特に紙の契約書を2通作成する場合は、2通の内容を揃えることと、課税文書に該当する場合の印紙税を忘れずに確認しましょう。
紙の契約書を2通作らずオンラインで締結する方法
紙の契約書では、同じ契約書を2通印刷し、双方で署名・押印等を行い、それぞれ1通ずつ保管する方法があります。
マイサイン(mysign)では、PDFの契約書をアップロードし、契約相手へオンラインで署名を依頼できます。契約相手はマイサインへの会員登録やログインをする必要がなく、受け取った案内からスマートフォンやパソコンで契約内容を確認し、署名・同意できます。
電子契約では、紙の契約書を2通印刷して郵送・返送する代わりに、締結済みの電子データを双方で確認できるようにします。
紙の契約書を何部作るか迷っている場合は、契約書の保管方法と合わせて、紙で締結するか電子契約を利用するかを検討するとよいでしょう。
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